看護師として働いている人、または看護師を目指している人の多くは、看護師の年収が実際どのくらいなのか気になるのではないでしょうか?看護師の年収は夜勤の有無や病院の規模、経験年数などによって左右されるため、人によって大きな差があります。
本記事では看護師の年収について内訳や影響要素などを徹底解説しています。記事を読めば、看護師の年収の仕組みを理解したうえで、年収アップのための具体的な方法が分かります。
私の実際の年収も公開しています。看護師の年収が気になっている人は、ぜひ本記事を参考にしてくださいね。
看護師の平均年収
令和5年度の看護師の平均年収は約508万円です。以下の表に保有資格ごとの平均年収をまとめています。
保有資格 | 平均年収 |
---|---|
看護師 | 508.1万円 |
准看護師 | 407.1万円 |
助産師 | 567万円 |
保健師 | 407.1万円 |
看護系資格のなかでは助産師が567万円と最も高く、准看護師が407万円と最も低いです。資格によって160万円以上の差があることがわかります。これは資格ごとの専門性や役割、責任の重さによる差が給与に反映されやすいためです。
看護師は一般的に高年収といわれることが多いですが、年収額は様々な要因に左右されます。あくまで平均であることを念頭に置いておきましょう。
私の看護師としての初年度年収は420万円でした。半年間は夜勤もなかったので、あまり高くはありませんね。
看護師の年収の内訳
看護師の年収の内訳は、以下の4つで構成されていることが多いです。
- 基本給
- 夜勤手当
- 残業手当
- 賞与(ボーナス)
それぞれ詳しく解説します。
基本給
基本給とは手当などを含まない、給料の大部分を占める部分です。固定で支給される給与であり、残業代やその他手当、ボーナスなどは基本給をもとに計算されます。
退職金も基本給をベースに計算されるケースがほとんどです。
2023年病院看護実態調査報告書によると、新卒看護師の基本給は3年制の専門学校卒業で平均20.5万円、看護大学卒業の場合は21.1万円です。昇給の相場は1年に4,000円〜5,000円程度であり、勤続10年目の看護師の平均給与額は24.8万円です。収入のベースとなる基本給は、病院の規模や経験年数によって変動するため、就職する際に必ず確認しましょう。
夜勤手当
看護師の夜勤手当の平均額は以下のとおりです。
夜勤形態 | 1回あたり平均手当額 |
---|---|
3交代制(準夜勤) | 4,234円 |
3交代制(深夜勤) | 5,199円 |
2交代制 | 11,368円 |
2交代制の平均夜勤回数4回であるため、夜勤手当はひと月当たり平均45,472円です。
3交代制の平均夜勤回数は8回(準夜4回、深夜4回)であり、ひと月あたりの夜勤手当は平均37,732円です。
私の勤務先では、感染症の流行などで一時的に人手不足になった際、夜勤手当だけで10万円を超えたこともありました。2交代制で8回の夜勤をこなしていました。
2交代制は拘束時間が長く仮眠が取りづらい環境ですが、夜勤手当は高めに設定されています。夜勤は体力的にも精神的にも辛い反面、年収アップのために夜勤は欠かせない要素です。
残業手当
残業手当は法定労働時間(週40時間、1日8時間)を超えた労働時間に対して、1時間あたりの賃金に25%割り増しされた手当が支払われます。
2023年病院看護実態調査報告書によると看護師の平均残業時間は5.2時間/月であり、金額にすると1万円〜1.2万円ほどです。年間12万円程度にしかならないため、賞与や夜勤手当と比較するとあまり大きな額ではありません。
近年では働き方改革などの影響から、残業を制限する職場も多いです。残業代で収入を上げたいと考えるのは現実的ではありません。
ただし、残業時間は病院や配属先によっても異なるため、残業時間が多い人は年収アップに繋がるでしょう。
賞与(ボーナス)
厚生労働省による調査では、看護師の平均賞与額は以下のとおりです。
保有資格 | 令和5年度平均賞与 |
---|---|
看護師 | 85.7万円 |
助産師 | 92万円 |
保健師 | 75.6万円 |
准看護師 | 63万円 |
賞与の金額は保有資格による違いだけではなく、病院や施設の規模によって大きな差があります。大規模な病院や公的な病院は賞与額が高い傾向です。企業が運営する病院であれば、業績によって毎年変動したり、個人の能力や遅刻欠勤などの勤務態度が影響したりすることもあります。
求人では「基本給の○ヶ月分」といった内容で記載されることが多いため、必ず確認しましょう。
看護師の年収を左右する要素
看護師の年収は以下の要素によって左右されます。
- 年齢・経験年数
- 施設規模・種類
- 施設の所在地
- 性別・学歴
それぞれ詳しく解説します。
年齢・経験年数
看護師の基本給は、経験年数や年齢によって異なります。経験年数に応じて昇給していくシステムを採用する病院が多く、経験年数が長いほど基本給は高くなります。昇給額は1年で平均4,000円〜5,000程度であり、10年経験を積んだ場合は4万円〜5万円の基本給アップが見込めます。賞与の金額は基本給をもとに計算されることが多いため、経験年数が長い人は年収が高い傾向です。
ただし、パートやアルバイト、派遣社員などの勤務形態の場合は、毎年昇給があるとは限りません。
施設や病院によって昇給の有無や金額が異なるので、就職する際は確認するようにしましょう。
施設規模・種類
看護師の年収は施設規模や種類によっても大きく左右されます。施設規模別の看護師の年収は以下のとおりです。
10〜99人 | 100〜999人 | 1000人以上 | |
---|---|---|---|
月収 | 321,100円 | 342,300円 | 376,500円 |
賞与 | 673,700円 | 756,400円 | 1,053,200円 |
年収 | 4,526,900円 | 4,864,000円 | 5,571,200円 |
病院の規模が大きければ大きいほど、看護師の年収は上がります。例えばクリニックと大病院を比較した場合、夜勤の有無や基本給の違いが影響するため、年収100万円ほどの差があります。年収アップを狙う際は、大規模病院に就職するのがおすすめです。
施設の所在地
施設の所在地によって看護師の給与は異なります。都道府県別の看護師の平均年収は以下のとおりです。
都道府県 | 看護師の平均年収 |
---|---|
北海道 | 478.9万円 |
青森 | 435.2万円 |
東京 | 507.4万円 |
愛知 | 502.2万円 |
京都 | 532.1万円 |
大阪 | 568.1万円 |
熊本 | 418.5万円 |
宮崎 | 416.3万円 |
沖縄 | 471.1万円 |
都市部と地方では給与水準に差があり、都市部の方が高い傾向があります。都市部では物価や家賃も高いため、病院や施設によっては「地域手当」が支給されることがあります。
一方で、都市部で働く場合は生活費が高くなる点も考慮が必要です。年収だけで判断せず、総合的な視点で検討することが大切です。
生活コストが高いあまりに、都市部のほうが金銭的に余裕がなくなりやすいです。
性別・学歴
男女別の看護師の平均年収は以下の表のとおりです。
男女別の看護師の平均年収 | |
男性 | 525.7 万円 |
女性 | 506.1万円 |
看護師は女性が圧倒的に多い職種ですが、平均年収では男性の方が高い傾向にあります。女性は結婚や育児などのライフスタイルの変化によって夜勤回数や資格の取得、職場、昇進などに制限がかかるケースが多いからです。
学歴別の新卒看護師の初任給は以下のとおりです。
学歴 | 平均初任給 |
---|---|
高卒+3年課程新卒 | 204,950円 |
大卒 | 210,963円 |
看護大学と専門学校卒業では、初任給に1万円ほどの差があります。基本給は賞与に影響するため、年収では約20万円の差が出ることがあると考えられます。昇進や給料アップのスピードも、大卒の方が有利です。生涯年収はさらに大きな差が生まれる可能性が高いでしょう。
通信制の大学で単位を取得すれば、専門卒の看護師でも学士を取得できます。大卒の資格を得ることで年収アップは可能です。
看護師が年収を上げる方法
看護師は努力次第で年収アップが見込める職業です。看護師が年収を上げる具体的な方法は以下のとおりです。
- 夜勤の回数を増やす
- 資格を取得して専門性を高める
- 管理職への昇進を目指す
- 高収入が望める職場に転職する
夜勤の回数を増やす
看護師の給料のなかで最も大きな割合を占めているのが、夜勤手当です。夜勤回数が増えれば年収アップが見込めるでしょう。より多く年収を上げたい場合は、夜勤専従看護師として働くのがおすすめです。日勤と夜勤の繰り返しによる生活リズムの変動がつらい人にとっても、夜勤専従の方が生活リズムを整えやすいです。ある程度体力に自信がある人は、夜勤の回数を増やせないか上司と相談してみましょう。
病院によっては夜勤回数の上限が決められていることもあります。体力的に夜勤がキツいという人には向いていない方法なので、注意しましょう。
資格を取得して専門性を高める
多くの病院や施設では、資格を取得すると資格手当が別途支給されます。資格の取得はキャリアアップにも繋がるため、結果的に年収アップも見込めます。能力を認められると昇進がしやすかったり、専門性の高い資格を取得をしていることで、高年収の病院への転職にも有利です。
専門性の高い資格で代表的なものが、「認定看護師」や「専門看護師」、「診療看護師」です。なかでも診療看護師は、医師の働き方改革にも寄与する存在であり、需要も高まりつつあります。難易度は高いものの、向上心がある人は挑戦してみる価値があるでしょう。
管理職への昇進を目指す
管理職へ昇進することで管理職手当がつくため、年収アップに繋がります。日本看護協会のデータによると、資格ごとの看護管理者の給料は以下のとおりです。
資格 | 平均月収 | 割合 |
---|---|---|
資格なし | 40万〜50万円 | 49.2% |
50万〜60万円 | 21.5% | |
専門看護師 | 40万〜50万円 | 47.7% |
50万〜60万円 | 23.3% | |
認定看護師 | 40万〜50万円 | 49.6% |
50万〜60万円 | 20.9% |
看護師で管理職に昇進したとしても、夜勤回数が減ったり無くなったりすることによって年収が下がることもあります。看護副部長や看護部長になれば年収は大きく上がります。部長クラスを目指すのであれば、看護認定管理者の資格を取得するなど、経験を積み上げていく地道な努力が必要です。
ただし看護部長は院内に1人であるため、大規模な病院になるほど昇進する際の競争率が高くなります。
高収入が望める職場に転職する
看護師は職場によって収入に差があるため、高収入が望める職場に転職するのも有効です。キャリアアップや資格の取得とは違い、早期の年収アップにつながる方法といえます。高収入が見込める職場として、待遇が手厚い大規模病院やインセンティブで稼げる美容クリニックなどが挙げられます。看護師として興味のある仕事や、年収・休日など希望する勤務条件などを整理しましょう。
自分で転職先を探すことに不安がある人は、看護師専門の転職エージェントを活用するのもおすすめです。
高年収を目指す看護師におすすめの職場
看護師が高年収を目指せるおすすめの職場を紹介します。
- 大規模病院
- 美容クリニック
- 経験加算を行う職場
- 夜勤手当が高い施設
今より年収を上げたいと考えている人はぜひ参考にしてください。
大規模病院
大病院とは一般的に500床以上の病院を指し、幅広い診療と重症患者の救急対応などを行います。大規模病院は高度な医療を提供しており、看護師の役割も高い専門性が求められるため、給与が高く設定されています。看護師が転職する場合は豊富な知識と技術が必要となるため、採用のハードルは比較的高めです。
大規模病院は福利厚生や教育体制も整っているため、人気が高い転職先のひとつです。
美容クリニック
美容クリニックは自由診療が中心であり、利益率が高いため、看護師にも給与面での還元が期待できる職場です。インセンティブ制度が導入されている場合も多く、個々の売上実績によって収入が増える可能性があります。一般的な病院勤務と比較しても、高年収を得やすいでしょう。
一方で、美容クリニック特有の業務に対応するための知識やスキルが求められます。例えば、美容薬品や医療機器の使用方法、患者のアフターケアなど、新たな知識を学ぶ必要があります。職場によっては売上目標やノルマが設定されることがあり、精神的な負担になる場合もあります。
美容クリニックは高収入を目指せる魅力的な職場ですが、スキル習得やプレッシャーへの対応力が重要な要素となります。
接遇やカウンセリング技術、美容の知識を習得できるため、美容が好きな人にはおすすめの職場です。
経験加算を行う職場
経験加算とは、これまでの実務経験を考慮して転職時の基本給や待遇に反映する仕組みのことです。看護師としての臨床経験年数が基本給に加算される職場であれば、経験年数に応じて年収アップが見込めます。ほとんどの場合、正社員としての経験や同じ診療科での勤務実績が考慮されます。加算額は経験年数1年あたり3,000円から1万円と、施設によって大きく差があるため、しっかり確認することが重要です。
ただし、クリニックや非常勤での勤務実績は、臨床経験としてカウントされない職場もあるため、注意が必要です。
クリニックや非常勤で勤務していた場合は、加算されたとしても半分以下の年数となることがほとんどです。
夜勤手当が高い施設
夜勤手当は地域や施設、病院によって金額は大きな差が出るポイントです。夜勤手当が高い施設に就職すれば、同じ夜勤回数でも大幅な年収アップになります。実際に、2交代制の夜勤手当が2万円の施設もあり、平均の夜勤手当11,000円と比べると9,000円高いです。
月に5回夜勤をした場合の差額は45,000円になるため、何もしなくても年収50万円以上の収入アップも可能ですね。
年収アップを目的に転職する際は、基本給と合わせて夜勤手当も確認しましょう。
看護師の年収に関するよくある質問
看護師の年収に関するよくある質問をまとめています。
- 看護師の年収は他の職種と比べて高い?
- 初任給が低いときはどうすればいい?
看護師の年収は他の職種と比べて高い?
職種ごとの平均年収と看護師の平均年収を以下の表にまとめています。
職種 | 平均年収 | 特徴 |
---|---|---|
看護師 | 508.1万円 | 日本全体の平均年収より高い水準。医療従事者の中では中位。 |
医師 | 1,436万円 | 医療従事者の中で最も高収入。 |
薬剤師 | 577.9万円 | 看護師よりやや高い水準。 |
助産師 | 567万円 | 看護師より高収入だが、役割や専門性が異なる。 |
診療放射線技師 | 537万円 | 看護師よりやや高い水準。 |
臨床検査技師 | 508.5万円 | 看護師とほぼ同水準。 |
日本の平均年収 | 460万円 | 全職種の平均値であり、看護師の年収はこれを大きく上回る。 |
日本の男性の平均年収 | 569万円 | 看護師より高いが、男性が多い職種の影響が大きいと考えられる。 |
日本の女性の平均年収 | 316万円 | 看護師は女性の平均年収を大幅に上回る。 |
日本全体で見れば、看護師の年収は高水準です。医療従事者の中で比較した場合は、看護師の年収は低い水準であると言えるでしょう。
全職種のなかでも看護師の年収は高水準ですが、多くの看護師は夜勤をしています。夜勤手当も含まれていることを考えると、決して高給取りとは言えません。
初任給が低いときはどうすればいい?
看護師の平均の初任給は3年制の専門学校卒業で平均20.5万円、看護大学卒業の場合は21.1万円です。基本給が低い場合でも、夜勤手当や資格手当などで年収を上げられます。新卒の場合は、夜勤を任せられるようになるまでに一定の経験を積む必要があります。夜勤勤務の人員として働けるように、日々の業務を丁寧にこなしていきましょう。
経験年数に応じた昇給制度も重要です。職場の昇給率や昇給額を調べてみましょう。初任給が低いからと安易に転職すると、生涯年収が下がる可能性があります。長期的な視点から、自身の年収がどの程度まで上がるのかを計算しながら判断しましょう。
将来的な年収アップを目指すなら、国公立病院のように公務員として働ける職場がおすすめです。
まとめ
看護師の平均年収は508万円であり、全職種の平均年収460万円と比較すると高い傾向にあります。年収は夜勤の有無や経験年数、病院の規模に大きく左右されます。資格の取得や夜勤回数を増やすなど、努力しだいで年収アップも可能です。高年収を得られる職場に転職したり、昇進を目指して年収アップを狙うのも良いでしょう。
看護師が年収アップをするためにキャリアアップは欠かせません。
ぜひ本記事を参考にして、自分に合った年収アップの方法を検討してみましょう。
コメント