看護師資格は就職にも有利であり、社会的信用の高さや収入の安定性から人気の高い国家資格です。社会人経験者が取得を目指すことも多い看護師資格ですが、資格取得方法や難易度が気になる人もいるのではないでしょうか。
本記事では看護師資格の取得方法や国家試験の難易度、キャリアアップに役立つ資格を徹底解説します。この記事を読めば看護系資格の特徴を理解でき、自分に合った資格取得の方法が分かります。
看護師関連の資格を取得してキャリアアップを目指したい方はぜひ参考にしてください。
看護師資格の種類
看護師に関する資格には4つの種類があり、看護師として働く場合はいずれかの資格が必要です。
- 正看護師
- 准看護師
- 助産師
- 保健師
それぞれの特徴を詳しく解説します。
正看護師
正看護師は、厚生労働大臣から免許交付がされる国家資格です。正看護師の主な役割は以下のとおりです。
正看護師の役割 |
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療養上の世話と診療の補助 |
正看護師は病院やクリニック、訪問看護や施設など様々な場所で活躍できる資格です。助産師や保健師、認定・専門看護師といった資格を取得するには、正看護師の免許を取得していることが条件になります。
一般的に「看護師」といえば、正看護師を指すことがほとんどです。
准看護師
准看護師は、都道府県知事により免許交付がされる公的資格です。准看護師の役割は以下のとおりです。
准看護師の役割 |
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医師や看護師の指示のもと療養上の世話や診療の補助を行う |
准看護師は正看護師と業務の内容自体は変わりませんが、独自の判断で看護ケアや診療の補助はできません。働きながらでも取得しやすいですが、勤務先やキャリアアップに制限があり、比較的給料水準が低い傾向にあります。
准看護師が保健師や助産師、認定・専門看護師を取得するためには、正看護師の取得が必要です。
助産師
助産師資格は、厚生労働大臣から免許交付がされる国家資格です。助産師の役割は以下のとおりです。
助産師の役割 |
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正常分娩時の助産介助 妊産婦への保健指導 新生児、乳児の育児指導やケア |
助産師は妊娠出産から育児まで母子の健康を守るスペシャリストであり、産婦人科や助産院、保健センターなどで活躍しています。正常分娩時の助産介助ができるのは、看護師の中でも助産師だけです。助産師は正看護師資格取得後、1年又は2年間助産師養成学校で教育を受ける必要があります。
給料水準も看護師と比べて高いことも特徴です。
保健師
保健師資格は、厚生労働大臣から免許が交付される国家資格です。保健所役割は以下のとおりです。
保健師の役割 |
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地域で暮らす人や会社で働く人の健康を守る保健指導、疾病予防 |
保健師を取得すれば保健センターや企業、学校など病院以外でも活躍できます。保健師は看護師の中でも「疾病の予防」に重きを置いており、公衆衛生のスペシャリストです。
保健師は正看護師資格取得後、1年又は2年間保健師養成学校で教育を受ける必要があります。
看護師資格を取得する方法
看護師資格取得には、以下の4つのルートがあります。
- 看護大学
- 看護短期大学
- 看護専門学校
- 准看護師養成所
学校によって取得できる資格や学費、就学年数が異なるため、自分に合った取得方法を選択ましょう。それぞれ詳しく解説します。
看護大学
看護大学は大卒資格と学士(看護学)を取得できます。在学期間が長いため、看護学をじっくり学べるメリットがあり、近年人気が高まっています。
就学期間 | 4年 |
学費 | 国公立:250万円前後 私立:500万円〜700万円 |
取得可能な資格 | 看護師国家資格 (大学によっては助産師又は保健師) |
大学によっては保健師や助産師の資格も取得可能です。
看護大学卒業のほうが専門学校卒業よりも高く設定されている病院もあります。看護師も学歴が大事になっているんですね。
ただし、専門学校と比較すると看護大学は偏差値や学費が高く、社会人で看護大学に入学する場合はハードルが高いです。ゆっくり資格取得したい、大学卒業資格も取得したい、看護師としてキャリアアップを目指したいと考えている人には看護大学がおすすめです。
看護短期大学
看護短期大学は、看護師国家資格と準学士(看護学)の称号を得られます。就学期間は3年間であり、看護大学と比較すると短期間で資格取得が可能です。
就学期間 | 3年 |
学費 | 400万円前後 |
取得可能な資格 | 看護師国家資格 |
看護短期大学は年々4年制大学化が進んでいるため、全国的に減少傾向です。専門学校に比べると学費が高く、全国的に学校数が少ないというデメリットがあります。
看護短期大学は一年でも早く資格取得したい人におすすめです。
看護専門学校
看護師のなかでも最も多いのが看護専門学校の卒業生です。短期間で取得できるほか、学費も看護大学に比べると安く、社会人でも取得しやすいメリットがあります。
就学期間 | 3年または4年 |
学費 | 100万円〜400万円 |
取得可能な資格 | 看護師国家資格 (4年制の場合は学校によって保健師・助産師) |
3年間で看護師に必要な知識と技術を身につけるため、実習や課題に追われるなど忙しい点がデメリットです。4年制専門学校の場合は「高度専門士」の称号を得られるほか、学校によっては保健師や助産師の資格取得も可能です。
准看護師養成所
准看護師養成所とは准看護師資格取得のための養成所です。
就学期間 | 2年または3年 |
学費 | 100万円~ |
取得可能な資格 | 准看護師資格 |
最短で看護資格を取得でき、全日制の他に定時制もあるため、働きながらでも取得しやすいメリットがあります。准看護師が正看護師になるためには、さらに2年間または3年間追加で教育を受ける必要があります。
最短で看護師として働きたい人、働きながら資格取得したい人には、准看護師がおすすめです。
私が看護師免許を取得した際も、准看護師から取得しました。養成所では、半数以上が社会人経験者でした。
看護師国家試験の概要
看護師国家試験を受ける際は、以下の3つの概要を理解する必要があります。
- 試験科目
- 合格基準
- 合格率
看護師国家試験の概要を詳しく解説します。
試験科目
看護師国家試験の試験科目は以下の10科目です。
看護師国家試験科目 | 人体の構造と機能 疾病の成り立ちと回復の促進 健康支援と社会保障制度 基礎看護学 地域在宅看護論 成人看護学 老年看護学 小児看護学 母性看護学 精神看護学及び看護の統合と実践 |
看護師国家試験は2月の中旬頃に行われます。午前と午後それぞれ2時間40分の試験で、240問出題されます。回答は4択または5択から、1つあるいは2つの選択をするマークシートでの選択方式です。
合格基準
看護師国家試験の試験問題は合計240問で必修科目、一般問題、状況設定問題に区分され、配点やボーダーラインがそれぞれ設定されています。
配点 | 合格ライン | |
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必修問題 | 1点(50問) | 80点以上 |
一般問題 | 1点(130問) | 平均点によりボーダーラインが変動 |
状況設定問題 | 2点(60問) |
必修問題はボーダーラインが80点以上と決められており、クリアできなければ合格できません。
いくら他の問題で点数が取れても、必修問題で正答率8割を下回った時点で不合格です。
一般問題、状況設定問題は平均点をもとに合格ボーダーラインが決められますが、80点以上を目標に学習しておくと良いでしょう。
合格率
過去3年間の看護師国家試験の合格率は以下のとおりです。
看護師国家試験合格率 | 全体(新卒者) |
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第113回(令和6年) | 87.8%(93.2%) |
第112回(令和5年) | 90.8%(95.5%) |
第111回(令和4年) | 91.3%(96.5%) |
看護師国家試験の合格率は90%前後であり、新卒者の場合は90%を超えています。過去問と類似した問題が多く応用問題は比較的少ない傾向です。過去問をもとに対策をしておけば、難易度はそこまで高くないでしょう。
既卒者の合格率は40%まで低下するため、一発合格を目指して学習環境を整えましょう。
看護師のキャリアアップに役立つ資格
看護師免許を取得後にキャリアアップしたい時に有効な手段は、関連する資格の取得です。看護師のキャリアアップに役立つ資格は以下の4つです。
- 認定看護師
- 専門看護師
- 認定看護師
- 特定行為研修制度
認定看護師
認定看護師とは特定の領域で質の高い看護の実践、相談、指導を行える知識を身につけた看護師です。認定看護師の領域は21の分野(または19の分野)に区分されています。
条件 | 看護師臨床経験が5年 (うち取得したい分野の実務経験3年以上) |
期間 | 半年〜1年 |
費用 | 入学金、受講料など100万円以上 |
認定看護師教育機関 | 認定看護師教育機関検索 |
認定看護師の取得をすることで、質の高い看護実践が可能となり、より専門的な看護を提供できます。院内でのコンサルテーションや看護師への専門的かつ実践的な教育が行えるため、キャリアアップに繋がる資格です。
専門看護師
専門看護師は13の専門分野に区分され、質の高い看護の実践、相談、倫理教育、地域での調整や研究を行うために必要な知識を持つ看護師です。
専門看護師の13分野 |
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がん看護、精神看護、急性・重症患者看護、小児看護、慢性疾患看護、老人看護、地域看護、母性看護、感染症看護、家族支援、災害看護、遺伝看護、放射線看護 |
専門看護師は看護師のなかでも専門分野におけるスペシャリストであり、コンサルテーションや倫理検討など院内でも相談役として幅広く活躍できます。
条件 | 看護師臨床経験が5年 (うち取得したい分野の実務経験3年以上) |
期間 | 最低2年(大学院の修士課程修了) |
費用 | 入学金、学費、受験料など200万円以上 |
専門看護師教育機関 | 認定看護師教育機関検索 |
専門看護師は大学院で2年間学ぶ必要があるため、在学中は休職するのが一般的です。働きながら専門看護師を取得したい場合は、「長期履修学生制度」がある教育機関を検討してみると良いでしょう。
認定看護管理者
認定看護管理者は看護管理者のマネジメントや看護の維持向上を目的とした管理者向けの資格です。
条件 | 看護師としての臨床経験が5年 (うち師長以上の管理者としての実務経験が3年以上) |
期間 | ファーストレベル:105時間 セカンドレベル:180時間 サードレベル:180時間 |
費用 | 入学金、受講料など100万円以上 |
認定看護師教育機関 | 認定看護師教育機関検索 |
認定看護管理者の資格は、組織的に質の高い看護を提供することを目的としています。管理者としてキャリアアップしたい人は必須で取得しておくべきでしょう。
特定行為研修制度
特定行為研修とは、本来医師が行う処置を手順書に基づき看護師が実践できる制度です。医師がすぐに対応できない場合でも、特定行為研修を受けた看護師が必要な処置をタイムリーに行えます。
特定行為は21区分38行為に分類されます。特定区分単位で研修を受けるか、パッケージ化されている特定行為の研修を修了し試験に合格すると修了証が交付されます。領域別のパッケージは以下のとおりです。
領域別パッケージ | ||
在宅・慢性期領域 | 外科術後病棟管理領域 | 術中麻酔管理領域 |
救急領域 | 外科系基本領域 | 集中治療領域 |
特定行為研修はeラーニングでの個別受講と集合研修が主で、必要な実習は勤務する施設でも可能であり、働きながらでも取得しやすいのが特徴です。
条件 | 看護師としての臨床経験3年 〜5年が望ましい |
期間 | 1年間 |
費用 | 入学金、受講料、受験料など30万円〜250万円(区分やパッケージにより異なる) |
特定行為研修教育機関 | 看護師の特定行為研修制度ポータルサイト |
特定行為研修は高度な知識とアセスメント能力、技術を身につけられるので確実にキャリアアップできます。
看護師資格を活かせる職場
看護師資格を活かせる職場は以下のとおりです。
- 病院やクリニック
- 訪問看護や在宅医療
- 介護施設や福祉施設
- 教育機関や研究機関
職場によって夜勤の有無や業務内容、対象者が異なります。特徴を理解して多くの選択肢を持つことで、キャリアアップやワークライフバランスを考慮した働き方が選択できます。
病院やクリニック
看護師資格を活かせる職場として代表的なものが、病院やクリニックです。病院では2交代または3交代での夜勤があり、有床の場合は診療所やクリニックでも夜勤が発生します。看護師の業務は療養上の世話と診療の補助がメインであり、配属先によってケアの内容は異なります。教育体制が整っており、様々な疾患や治療について学べるため、取得後は病院に勤務することが一般的です。
クリニックでは診療の補助がメインであり、クリニック内の掃除や器具の洗浄なども看護師の仕事です。
訪問看護や在宅医療
訪問看護や在宅医療は需要が高い分野であることから求人数が多く、給与水準も高い傾向です。在宅で暮らす医療介入が必要な人を対象に、診療の補助や家族への指導、家族ケア、日常生活の援助を行います。夜間はオンコール対応が多いですが、施設内訪問看護のように夜勤があるケースもあります。研修期間が終わればすぐに1人で訪問するため、新卒の看護師がすぐに訪問看護を行うのはハードルが高いです。未経験の人や新卒の場合は、教育体制が整っている訪問看護ステーションを選びましょう。
病院とは違い、訪問中は患者と個別に関わることができます。その人らしく自宅で生活することを支えられる、やりがいのある職場です。
介護施設や福祉施設
介護施設や福祉施設では、入所している方の内服薬の管理や健康管理が看護師の主な仕事です。夜間はオンコール対応であることが多いですが、施設の形態によっては医療処置が必要な人が入所している場合もあり、看護師が夜間も常駐することもあります。
看護師の人数が少ない施設も多く、手厚い指導は期待できないことは念頭に置く必要があります。
残業が少なめで、夜勤がない施設もあることからライフワークバランスを重視する人、ゆっくり働きたい人におすすめです。
教育機関や研究機関
看護資格は教育機関や研究機関でも活かせる資格です。看護師の資格を活かせる機関は以下のとおりです。
教育機関 | 研究機関 |
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看護学校の教員 | 治験施設支援機関(SMO) 治験コーディネーター 医薬品開発業務受託機関 臨床開発モニター |
基本的に夜勤がなく、病院や施設とは業務内容が異なります。比較的求人数は少ないものの、研究や教育を通して医療に貢献できる仕事です。
研究機関では薬剤や薬機法などの専門知識を要するため、さらに幅広い学習が必要です。
病院や施設で働くなかで、看護師の仕事が向いていないと感じた際は、看護師の資格を活かせる教育機関や研究機関を検討してみるのもおすすめです。
まとめ
看護師の資格には正看護師、准看護師、保健師、助産師の4種類があり、それぞれ教育機関や役割が異なります。看護師の資格取得には専門学校や4年制大学が一般的ですが、定時制の准看護師養成所や看護短期大学などもあるため、自分の状況に応じた取得方法を選択しましょう。
働きながら看護師資格を取得したい人は、准看護師養成所からのスタートがおすすめです。
さらに専門性を高めたい分野がある人は、認定看護師や専門看護師、特定行為研修を取得してキャリアアップを目指すのもおすすめです。看護師資格は病院以外の職場でも活かせるため、自分のキャリアプランや看護観に合わせて転職することもできます。
看護師を目指している人はぜひ本記事を参考にしていただき、自分に合った取得方法や勤務先を検討してください。
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