専門看護師は高度な知識と技術を持ち、特定分野において患者や家族、医療チームを支援する役割を担います。
本記事では、資格取得の流れや必要な実務経験、大学院進学、認定審査など、具体的なステップを詳しく解説します。記事を読めば、専門看護師のメリットやキャリアの可能性について理解できるでしょう。

専門看護師は、看護系資格のなかでも最高レベルの専門性を持ちます。キャリアの幅も格段に広がるので、気になる方はぜひ最後まで読んでください。
専門看護師になるにはどうすればいいか解説


専門看護師になるための具体的なステップは以下のとおりです。
- 看護師免許を取得する
- 実務経験を5年以上積む
- 看護系大学院修士課程を修了する
- 所定の単位を取得する
- 認定審査に合格する
看護師免許を取得する
専門看護師になる第一歩は、看護師免許の取得です。看護師国家試験に合格し、看護師として登録されることが必要です。免許を取得するには、看護専門学校、短期大学、または看護系大学を卒業する必要があります。



近年では学士の取得を推奨する流れも強まっています。看護師も学歴を求められるようになりました。
看護師免許はすべての専門看護師に共通の基礎資格であり、最初のステップとして確実にクリアすることが重要です。学びながら将来目指したい専門分野について考え始めるのも良いでしょう。
実務経験を5年以上積む
看護師免許を取得した後、専門看護師としての認定を受けるには、5年以上の実務経験が求められます。そのうち3年以上は、希望する専門分野での経験が必須です。この期間は知識やスキルを実践で磨くと同時に、進むべき分野を明確にするための大切な時期です。
働きながら大学院進学の準備を進める人も多いです。病院によっては資格取得を支援する制度を提供しているところもあるため、活用できる環境を探すと良いでしょう。



特定分野のエキスパートとして活躍するためには、最低限の看護実践経験が必要です。
看護系大学院修士課程を修了する
専門看護師になるには、看護系大学院の修士課程を修了する必要があります。大学院では、選択した専門分野に関連する高度な知識や技術を学びます。課程修了までに2~3年かかるのが一般的で、その間に研究や実習を通じて専門性を深めます。
働きながら通う人も多く、夜間や土日開講のプログラムを提供している大学院も増えています。学費の負担を軽減する奨学金制度や病院の支援制度を利用するのも有効です。



専門看護師は、学術的な研究や高度な専門知識の習得を目的とした資格です。高度な実践能力を必要とする認定看護師とは異なる部分ですね。
参考:日本看護協会「2024年度専門看護師教育機関・過程一覧」
所定の単位を取得する
大学院修士課程では、専門看護師認定に必要な単位を修得することが条件となります。単位には、専門的な看護実践に関するものや、研究に関する内容が含まれます。特に、実習や臨床研究の科目は重要で、実際の患者ケアに直結するスキルが問われます。効率よく学ぶために、計画的なスケジュール管理が必要です。



授業の内容は難易度が高いですが、この過程で得られる知識が専門看護師としての基盤を築きます。
認定審査に合格する
専門看護師(CNS)として活動するためには、日本看護協会が実施する専門看護師認定審査に合格する必要があります。この審査では、大学院で学んだ知識や臨床経験が総合的に評価され、高度な看護実践能力を持つことが求められます。
審査は主に書類審査と筆記試験で構成され、分野によっては口頭試問や実技試験が含まれます。書類審査では、これまでの職務経験や研究業績を証明する書類を提出し、臨床での実践力や専門性が評価されます。筆記試験では、専門領域の看護理論、倫理、臨床判断、研究手法などが問われ、ケーススタディ形式の問題が出題されることもあります。



試験対策として、過去の試験傾向を分析し、参考資料や事例を活用して学習を進めることが重要です。
専門看護師になるには支援制度の活用がおすすめ


専門看護師を目指すには、学費や時間の負担が大きいため、支援制度の活用が不可欠です。支援制度に関して、以下について解説します。
- 専門看護師になるための学費の目安
- 奨学金制度の利用方法
- 病院の資格取得支援制度
専門看護師になるための学費の目安
専門看護師になるためには、看護系大学院の修士課程を修了する必要があり、その学費は大きな出費となります。学費は大学によって異なりますが、2年間でおおよそ150万円から300万円程度が目安です。教材費や交通費、場合によっては実習費が別途かかることもあります。私立大学の場合はさらに高額になる場合が多いため、事前にしっかりと費用を確認することが重要です。



そのほか、認定審査の受験料が約10万円、5年ごとの更新手数料5万円が必要です。
奨学金制度の利用方法
専門看護師を目指す人が学費の負担を軽減するためには、奨学金制度の活用は重要な選択肢です。看護職に特化した奨学金には、日本看護協会が提供する「看護職員修学資金」や、地方自治体が設けている奨学金制度があります。自治体の奨学金は、修了後に一定期間、指定の医療機関で勤務することを条件に返済が免除されるケースが多く、経済的負担を大幅に軽減できます。
一般的な奨学金として、日本学生支援機構の貸与型奨学金も利用可能です。日本学生支援機構の奨学金には、無利子(第一種)と有利子(第二種)の2種類があり、希望する金額や条件に応じて選択できます。ただし、貸与型は卒業後に返済が必要なため、将来的な収入と返済計画を考慮して申請することが大切です。
奨学金を申し込む際には、募集時期や必要書類を事前に確認し、計画的に準備を進めることが重要です。自治体や医療機関が独自に提供する奨学金情報は、公式サイトや職場の教育担当者に問い合わせると詳細を得られます。返済免除の条件や支給額を比較し、自分に最適な制度を選びましょう。
病院の資格取得支援制度
多くの医療機関では、看護師のキャリアアップを支援するための資格取得支援制度を設けています。学費の一部または全額を補助する制度や、勤務時間内に大学院で学べる研修制度などが含まれます。専門看護師を目指す看護師にとっては、学業と仕事を両立するための貴重な支援です。



制度の有無や内容は医療機関によって異なります。必ず確認しておきましょう。
一部の病院では「奨学金制度付きの進学支援」を提供しており、一定期間その病院に勤務することを条件に、学費を全額負担してもらえる場合があります。制度を利用することで、自己負担を抑えながら専門知識を深めることが可能です。ただし、指定された勤務期間内に退職すると、学費の返還義務が発生する場合もあるため、事前に契約内容を確認しましょう。
病院によっては、大学院進学のための特別休暇制度を設けている場合があります。勤務しながら大学院に通うことができ、経済的負担だけでなく時間的な負担も軽減できます。支援制度を利用するためには、病院の推薦が必要なケースもあるため、教育担当者や上司と相談しながら計画を立てるとスムーズに進められるでしょう。
専門看護師資格を取得するメリット


専門看護師になることにより、以下のメリットが得られます。
- 給与や待遇が向上する
- キャリアの幅が広がる
- 高度な専門知識の証明になる
給与や待遇が向上する
専門看護師資格になると、給与や待遇の向上が期待できます。一部の医療機関では、専門看護師として働く人材に対して資格手当を支給しており、月に5千円〜1万円の資格手当が追加されるケースが一般的です。
専門性の高い看護師は病院にとって貴重な人材であるため、昇進や昇給の対象にもなりやすく、長期的に見ても収入の安定につながります。専門看護師は病院や施設での責任ある役割を担うことが多いため、主任や管理職などのポジションに就くチャンスも多いです。その結果、基本給が上がるだけでなく、ボーナスの増額や勤務時間の調整など、待遇面でも優遇されることが少なくありません。



金銭的なメリットだけでなく、ワークライフバランスの向上にもつながるのが大きな魅力です。
キャリアの幅が広がる
専門看護師資格を取得すると、従来の臨床業務にとどまらず、さまざまな分野で活躍できるチャンスが広がります。
大学や看護学校の教員として教育に携わることで、次世代の看護師を育成する立場になることも可能です。大学院などでさらに研究を重ね、看護の発展に貢献する研究職としての道を歩むこともできます。医療現場においても、専門看護師は医療チームの中核として、医師や他の看護師と密接に連携しながら働くことが求められます。



がんや精神看護などの分野では、患者だけでなく家族のサポートも重要な役割です。カウンセリングスキルを活かして患者の心理的ケアを行うこともできます。
病院以外のフィールドでも専門性を活かす機会は増えています。訪問看護や地域医療の現場でも高度な知識を持つ専門看護師が求められており、在宅医療の発展に貢献する働き方も選択肢の一つです。
高度な専門知識の証明になる
専門看護師資格は、その分野における高度な知識と実践力を備えていることを証明する資格です。資格取得のためには、大学院での学習や臨床経験を積む必要があり、すべてクリアすることで専門分野のエキスパートとして認められます。患者や家族だけでなく、医師や他の医療スタッフからも高い信頼を得ることができ、重要な判断が求められる場面でリーダーシップを発揮することが可能です。
がん看護や精神看護、小児看護などの専門性が求められる領域では、専門看護師の知識と経験が不可欠です。がん看護専門看護師の場合、がん患者の痛みのコントロールや緩和ケアの方針を医師とともに決定することができ、患者にとって最適な治療環境を提供できます。精神看護専門看護師は、患者の心理的ケアだけでなく、家族へのサポートや地域医療との連携にも関わることが多いため、より広い視野で看護を実践する力が求められます。



専門看護師資格は、看護師としての価値を高めるだけでなく、自身のキャリアにおいても大きな強みとなる資格です。
専門看護師の職場とキャリアパス


専門看護師は、高度な専門知識とスキルを活かしてさまざまな医療現場で活躍しています。専門看護師が活躍する場と将来的なキャリアパスについて、以下の手順で解説します。
- 専門看護師が活躍する職場
- 専門看護師としてのキャリアパス
専門看護師が活躍する職場
専門看護師(CNS)は、医療機関だけでなく、在宅医療や国際医療の分野など、幅広いフィールドで活躍が期待できます。専攻分野によって適正は異なりますが、以下の職場では専門看護師が多く活躍しています。
- がん専門病院
- 精神科病院
- 集中治療室(ICU)・救命救急センター
- 産科病院・総合病院の産科
- 訪問看護ステーション
- 地域包括支援センター
- 自治体の保健センター
- 災害医療チーム(DMAT)
- 国際医療支援機関(JICA、NGO、国境なき医師団 など)
- 看護大学・専門学校の教員
専門看護師の資格を取得することで、より高度な医療を提供しながら、自分の興味や適性に合った職場を選ぶことができます。より専門性を活かせる職場を選択することで、キャリアの可能性が大きく広がるでしょう。
専門看護師としてのキャリアパス
専門看護師(CNS)としてのキャリアパスは多岐にわたります。現場のリーダーだけでなく、教育、研究、管理など幅広い分野でキャリアアップが可能です。
病院では、特定の専門領域において患者のケアや医療チームの指導を担い、治療方針の立案や後輩の育成に貢献します。大学や専門学校の教員として次世代の看護師を育てる道もあります。研究職としては、看護の質向上を目的とした臨床研究や医療技術の開発に携わることが可能です。病院の看護管理者として組織運営や政策立案に関与したり、訪問看護や地域医療の分野で専門知識を活かしたケアを提供することもできます。



専門看護師は、看護師としてのキャリアの幅が広がります。自分の目指す分野で専門性を高めながら働ける点は大きな魅力です。
専門看護師を目指すときの注意点


専門看護師になるには、高い知識やスキルを求められるだけでなく、資格取得までの道のりでさまざまな課題に直面します。以下の注意すべきポイントを押さえておくことが大切です。
- 仕事と学業を両立できるようにする
- 継続的に学び続ける必要がある
仕事と学業を両立できるようにする
専門看護師を目指す際、多くの人が看護師として働きながら大学院に通います。そのため、仕事と学業を両立できるよう計画を立てることが重要です。
勤務先の病院に資格取得支援制度がある場合は、積極的に活用しましょう。制度によっては、学費補助や勤務時間の調整が可能な場合があります。大学院選びの際は夜間授業やオンライン授業を提供しているプログラムを検討すると良いでしょう。学業が忙しい時期には家族や同僚の協力を得ることも大切です。無理のないスケジュールを組むことで、長期間にわたる両立を実現できます。



特に、家庭がある人は家族の理解が必要不可欠です。事前にしっかり話し合い、バックアップしてもらえる体制を作っておきましょう。
継続的に学び続ける必要がある
専門看護師は資格取得後も、専門分野における知識や技術を常にアップデートし続ける必要があります。5年ごとに更新が必要であり、研修・学会への参加や研究活動の実績の提示が更新の条件です。条件をクリアしたうえで審査を通過しなければ、資格の更新ができません。
医療の現場では新しい治療法やケアの方法が次々と導入されるため、最新の情報をキャッチアップすることが求められます。学会やセミナーに積極的に参加し、学びの機会を確保しましょう。関連する専門書や研究論文を読む習慣をつけることも重要です。



継続的に学び続ける姿勢を持つことで、患者や医療チームに信頼される専門看護師として成長できます。
専門看護師に関するよくある質問


専門看護師を目指す際には、資格や取得過程に関する疑問を抱く人が多いです。よくある質問として、以下の疑問について解説します。
- 専門看護師と認定看護師の違いは?
- 専門看護師と認定看護師の資格は併用できる?
- 専門看護師資格の取得難易度はどれくらい?
専門看護師と認定看護師の違いは?
専門看護師と認定看護師はどちらも看護分野のスペシャリストですが、その役割や対象分野に違いがあります。
専門看護師は、特定の看護分野で高度な知識と判断力を持ち、患者だけでなく家族や医療チーム全体への支援を行います。認定看護師は、特定の看護技術やケアの専門家として、現場で直接的なケアを提供する役割に特化しています。
資格取得の過程にも違いがあり、専門看護師は看護系大学院の修士課程修了が必須ですが、認定看護師は所定の教育課程(約6か月間)を修了することで資格が取得できます。
≫認定看護師と専門看護師の違いを徹底比較!役割や働き方、給与を解説



どちらを目指すかは、自身の状況やキャリアビジョンに合わせて検討しましょう。
専門看護師と認定看護師の資格は併用できる?
専門看護師と認定看護師の資格は併用可能です。実際に、両方の資格を取得している看護師も少なくありません。それぞれの資格には異なる役割があるため、併用することで患者や医療チームに対して幅広い支援を提供できます。ただし、両方の資格を維持するためには、それぞれの更新要件(講習会の受講や実務経験など)を満たす必要があります。
自分のキャリアや目指す看護の形に合わせて資格を活用することで、より多くの患者に貢献できるでしょう。



それぞれ更新の要件は異なります。取得後は計画的にスケジュールを組むことが重要です。
専門看護師資格の取得難易度はどれくらい?
専門看護師資格の取得は比較的難易度が高く、多くの努力を要します。まずは看護系大学院での修士課程を修了しなければならず、入学試験や学費の準備が必要です。修士課程では専門分野に関する高度な学習と研究が求められるため、日々の勉強に加え、論文執筆や実習をこなすことが大切です。認定審査では、筆記試験や実績の評価が行われます。具体的な難易度は明示されていませんが、審査の合格率は約80%程度とされています。



看護師系資格のなかでも難易度は高いですが、計画的に準備し、支援制度を活用すれば十分に達成可能です。
まとめ


専門看護師資格は、看護の専門性を深め、キャリアアップを実現するための重要なステップです。取得には、日本看護協会が定める教育課程を修了し、5年以上の実務経験が必要です。その後、認定試験に合格することで資格が得られます。
専門看護師を取得することで、臨床現場で高度な専門知識を活かしたケアができるだけでなく、教育や研究、病院の運営など多方面で活躍できるようになります。多くの医療機関では資格手当が支給されるため、待遇の向上も期待できます。
資格取得には時間と努力が必要ですが、奨学金制度や勤務先の支援制度を活用することで、働きながら目指すことも可能です。専門看護師は、患者や医療チームからの信頼を得るとともに、より充実したキャリアを築くための大きな武器になります。計画的に学び、着実に目標達成を目指しましょう。
コメント