「主任になったら年収はいくら上がる?」その疑問に、一般職から主任へ昇進して年収アップした筆者がお答えします。結論、年収増は主に役職手当によるものですが、夜勤回数の減少で手取りは思ったほど増えない実態もあります。
私が勤務する施設ではいわゆる「看護師長」は存在せず、看護主任が看護師のトップになります。

看護職員20名ほどの大きめな施設なので、キャリアアップを目指す人にとっても参考になるのではないでしょうか。
ここでは、「主任」という役職における給与面の特徴やメリット・デメリットを、実体験をもとに解説します。記事を読めば、主任の平均年収や給与の内訳、残業代などの注意点から、転職でさらに年収を上げる方法まで、リアルな実態がすべてわかります。
»【看護師長になると年収が下がる?】原因や収入アップのポイントを解説
主任看護師の年収相場と給与の内訳


看護師としてキャリアを重ね、次に目指すポジションの一つが「主任」です。現場のリーダーとして責任が増す一方で、気になるのが年収の変化ではないでしょうか。主任看護師になると、一般の看護師と比べて給与はどのくらい上がるのか、具体的な相場と給与の内訳を詳しく解説します。
- 【2025年最新】看護主任の平均的な年収
- 病院と介護施設の主任看護師の年収比較
【2025年最新】看護主任の平均的な年収
主任看護師の平均年収は、勤務先の規模や地域によって変動しますが、おおよそ550万円〜650万円が相場とされています。厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、看護師全体の平均年収は約508万円です。このデータと比較すると、主任看護師は一般の看護師よりも年間で50万円〜150万円ほど高い給与を得ていることがわかります。
»【2025年最新】看護師の給料は上がる?昇給時期・金額を徹底解説!
この年収アップの大きな要因は、基本給の昇給に加えて「役職手当(主任手当)」が支給される点にあります。役職手当は施設によって異なりますが、月額1万円〜5万円程度が一般的です。



この手当が毎月の給与とボーナス(賞与)に上乗せされることで、年収が大きく引き上げられます。
主任看護師の給与構成の一般的なイメージを以下にまとめました。
項目 | 金額の目安 | 備考 |
平均年収 | 約550万円~650万円 | 施設規模や経験年数により変動 |
月収(総支給額) | 約35万円~45万円 | 基本給+各種手当(役職・夜勤・残業など) |
役職手当(月額) | 約1万円~5万円 | 給与アップの主要因。施設による差が大きい。 |
ボーナス(賞与) | 年間80万円~130万円 | 基本給の3~4.5ヶ月分が目安 |
主任になると、リーダーシップやマネジメント能力が求められる分、給与という形で評価されるのが一般的です。ただし、夜勤回数の調整や残業代の扱いは施設によって異なるため、手取り額が思ったより増えないケースもあります。
病院と介護施設の主任看護師の年収比較
主任看護師の年収は、働く施設形態によっても大きく異なります。一般的に急性期医療を担い、夜勤が多い病院の方が介護施設よりも年収は高くなる傾向にあります。特に、大学病院や国立病院機構などの大規模な医療機関は、給与テーブルが明確で福利厚生も手厚いため、安定して高い収入が期待できます。
一方で、介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設では、病院に比べて年収がやや低めになることがあります。これは、夜勤手当の単価や回数の違い、基本給の設定などが影響しています。



施設によっては管理職としての役割を重視し、病院と同等かそれ以上の役職手当を設定しているケースもあります。
以下に、施設形態別の主任看護師の年収相場をまとめました。転職やキャリアプランを考える際の参考にしてください。
施設形態 | 年収相場 | 特徴 |
大学病院・国立病院 | 600万円~750万円 | 給与水準が高く、福利厚生も充実。昇給制度が明確で、キャリアアップに応じて着実に年収が上がる。 |
一般病院(民間) | 550万円~650万円 | 最も一般的な勤務先。病院の規模や地域、経営母体によって年収に幅がある。 |
クリニック・診療所 | 500万円~600万円 | 夜勤がない場合が多く、その分年収は抑えめ。ただし、管理業務全般を任されるため役職手当は高めの傾向。 |
介護老人保健施設(老健) | 520万円~620万円 | 医療と介護の中間施設。病院に近い業務内容だが、給与水準は病院よりやや低い傾向。 |
特別養護老人ホーム(特養) | 500万円~600万円 | 看護師の配置が少なく、医療的な判断を任される場面が多い。オンコール対応が中心の施設も多い。 |
同じ主任看護師という役職でも、働く場所によって年収には100万円以上の差が生まれる可能性があります。自身のキャリアプランや働き方の希望に合わせて、どの施設で主任を目指すかを検討することが重要です。
【体験談】主任看護師となった私の給与事情


ここでは、私が実際に介護老人保健施設(老健)で主任看護師に昇格した際の、リアルな給与事情についてお話しします。「主任になると年収はいくら上がるの?」という疑問に対し、私の給与明細をもとに具体的な金額や内訳を公開します。病院か施設か、また法人の方針によっても給与体系は異なりますが、一つの実例として参考にしていただければ幸いです。
- 主任昇格前後での年収の変化
- 主任手当(役職手当)の具体的な支給額
- 夜勤回数が減り実質年収は20万円アップに留まる
主任昇格前後での年収の変化
結論から言うと、私の年収は主任への昇格によって約20万円アップし、600万円から620万円になりました。以下に、昇格前後の給与内訳を比較した表をまとめました。
項目 | 昇格前(一般看護師) | 昇格後(主任看護師) | 増減 |
基本給(月額) | 300,000円 | 300,000円 | ±0円 |
役職手当(月額) | 0円 | 17,000円 | +17,000円 |
夜勤手当(月平均) | 60,000円(月4回) | 30,000円(月2回) | -30,000円 |
その他手当(月額) | 40,000円 | 40,000円 | ±0円 |
月収(額面) | 400,000円 | 387,000円 | -13,000円 |
賞与(年間) | 1,200,000円(基本給×4ヶ月) | 1,268,000円((基本給+役職手当)×4ヶ月) | +68,000円 |
年収(額面) | 6,000,000円 | 6,212,000円 | +212,000円 |



表を見ていただくと分かる通り、私の職場では昇格しても基本給そのものは上がりませんでした。
給与が増えた主な要因は、新たに支給されるようになった「役職手当」です。多くの病院や施設では、役職と給与テーブルが完全に連動しているわけではなく、基本給は勤続年数や個人の評価で決まり、役職に応じて別途手当が加算されるという給与体系を採用しています。これは、将来的に役職から外れた場合などに給与調整がしやすいという、法人側の都合も関係していると考えられます。
主任手当(役職手当)の具体的な支給額
私の職場では、主任看護師の役職手当は月額17,000円でした。年間で計算すると、17,000円×12ヶ月=204,000円となり、これが年収アップの大部分を占めています。
ここで重要なのが、賞与(ボーナス)の算定基礎に役職手当が含まれるかどうかという点です。幸い、私の職場では「基本給+役職手当」を算定基礎として賞与が計算されていました。これにより、賞与だけでも大きく年収がアップしています。
具体的な計算は以下の通りです。
- 賞与算定基礎の増加額:17,000円(役職手当)
- 年間賞与支給月数:4.0ヶ月
- 賞与の増加額:17,000円 × 4.0ヶ月 = 68,000円



もし賞与の算定基礎が基本給のみであった場合、この68,000円分の昇給はなかったことになります。
役職手当が賞与に反映されるかどうかは、法人によって規定が異なります。昇格の話が出た際には、事前に就業規則や給与規定を確認するか、上司や人事に確認しておくことが非常に重要です。
夜勤回数が減るため実質年収は20万円アップに留まる
役職手当が年間20万円以上プラスになったにもかかわらず、最終的な年収アップが約20万円に留まったのには理由があります。それは、夜勤の回数が減ったことによる「夜勤手当」の減少です。
主任になると、日中のリーダー業務やスタッフの指導、委員会活動、他部署との調整といった管理業務が増加します。そのため、現場のシフトに入る機会、特に夜勤に入る回数が自然と減少しました。
»看護師が夜勤をやめてよかった5つの理由|10年以上夜勤を続けた私の体験談
- 昇格前:月平均4回(夜勤手当 約60,000円)
- 昇格後:月平均1~2回(夜勤手当 約30,000円)
私の場合、夜勤が月に2回減ったことで、夜勤手当が約30,000円減少しました。これは年間に換算すると36万円もの減収となり、役職手当による昇給分を大きく相殺する形となりました。
この結果、月々の給与の手取り額は、昇格前よりも少なくなるという現象が起きました。役職手当(+17,000円)よりも夜勤手当の減少額(-30,000円)の方が大きかったためです。給与明細を見て「役職について責任は重くなったのに、手取りが減った…」と、最初は少し複雑な気持ちになったのを覚えています。
しかし、年2回の賞与で役職手当分が上乗せされるため、年間の総支給額(年収)ではプラスになる、という給与構造です。



体力的に負担の大きい夜勤が減ることをメリットと捉えるか、手取りの減少をデメリットと捉えるかは、個人の価値観によるかもしれません。
主任看護師の役職手当と退職金の関係


主任看護師になると、毎月の給与に加えて「役職手当」が支給されることが一般的です。この役職手当は、目先の年収アップだけでなく、将来受け取る退職金にも影響を与える可能性があります。ここでは、主任の役職手当が退職金にどのように関係するのか、その仕組みを詳しく解説します。
ただし、退職金の計算方法は勤務先の就業規則や退職金規程によって大きく異なるため、本記事の内容はあくまで一般的なケースとして捉え、必ずご自身の職場の規定を確認するようにしてください。
- 将来的な退職金における役職手当の影響
- 役職手当が退職金に反映される仕組み
将来的な退職金における役職手当の影響
結論から言うと、主任の役職手当が退職金の算定基礎額に含まれる規定になっている場合、将来の退職金は増額します。役職に就かずに同じ期間勤続した場合と比べて、より多くの退職金を受け取れる可能性が高まるのです。
特に、勤続年数が長くなればなるほど、その差は顕著になります。例えば、退職金の算定基礎となる給与に役職手当が含まれる場合、主任として10年間勤務するだけでも、生涯賃金に大きな違いが生まれるでしょう。以下は、あくまで一例ですが、役職が退職金に与える影響のシミュレーションです。
役職 | 退職金算定基礎額(月額) | 支給率(勤続30年) | 功績倍率 | 退職金額(概算) |
一般看護師 | 350,000円(退職時基本給) | 25.0 | 1.0 | 875万円 |
主任看護師 | 350,000円(退職時基本給) | 25.0 | 1.2(役職による加算) | 1,050万円 |
このように、功績倍率に役職が反映されるだけでも、最終的な退職金額には100万円以上の差が生まれる可能性があります。主任への昇進を打診された際は、目先の給与だけでなく、長期的な視点も持って判断することが重要です。
役職手当が退職金に反映される仕組み
退職金の計算方法は、勤務先の病院や施設によって様々です。退職金の主な算定方式には、以下のようなものがあります。
- 基本給連動型:退職時の基本給をベースに計算する方法
- ポイント制:勤続年数や役職、貢献度などをポイント化し、その累計で計算する方法
- 確定拠出年金(DC)制度:毎月積み立てた掛金を自身で運用し、その運用実績によって将来の受取額が変わる制度
基本給連動型の場合、計算式は一般的に「退職金 = 退職時の基本給 × 勤続年数に応じた支給率 × 功績倍率」となります。この方式では、「役職手当」が「基本給」に直接含まれるケースは稀です。しかし、先ほどのシミュレーションのように、主任という役職に対して「功績倍率」が上乗せされる規定を設けている職場は少なくありません。



役職者は責任が重い分、功績も大きいと評価されるためです。
ポイント制の場合は、役職が退職金に与える影響がより明確です。この制度では、「勤続ポイント」に加えて「役職ポイント」が設定されていることが多く、主任に昇進すると、在任期間に応じて高いポイントが付与されます。ポイントの累計数がそのまま退職金額に直結するため、役職に就くことで退職金が増額する仕組みが分かりやすいのが特徴です。
ご自身の職場がどの制度を採用しているか、そして役職がどのように評価されるかを知るためには、「就業規則」や「退職金規程」を必ず確認しましょう。



これらの書類は、職場の総務課や人事課で閲覧できるのが一般的です。
なお、厚生労働省が公表している「令和5年就労条件総合調査」によると、医療・福祉分野で退職給付制度がある企業のうち、退職一時金制度のみの企業は77.1%、退職年金制度のみは7.9%、両制度併用は15.0%となっています。このように、制度自体も多様化しているのが現状です。
主任看護師が知っておくべき役職手当の注意点


主任看護師への昇進で支給される「役職手当」。給与アップに直結する嬉しい手当ですが、その内容については事前にしっかりと確認しておくべき注意点が存在します。特に「残業代」との関係は、年収や働き方に大きく影響するため、正しく理解しておくことが重要です。ここでは、私の体験談も交えながら、役職手当に潜む注意点を詳しく解説します。
- 役職手当には残業代が含まれる?
- 管理職手当の注意事項と実態
役職手当には残業代が含まれる?
「役職手当がつく代わりに残業代が出なくなる」という話を耳にしたことはありませんか?これは、役職手当の性質によって「正しい場合」と「誤っている場合」があります。結論から言うと、私の職場のように、役職手当に一定時間分の残業代が含まれているケース(固定残業代制度)は珍しくありません。
私の介護施設では、主任手当17,000円の中に「月10時間分の固定残業代」が含まれている、と雇用契約書に明記されています。これは「みなし残業」とも呼ばれ、実際の残業時間が10時間に満たない月でも、10時間分の残業代が役職手当の一部として支払われる仕組みです。
ただし、この制度には重要なルールがあります。それは、あらかじめ定められた固定残業時間を超えて残業した場合は、その超過分の残業代を別途請求できるという点です。例えば、私の職場で月に15時間残業した場合、超過した5時間分の残業代は、役職手当とは別に支払われなければなりません。



これは労働基準法で定められたルールです。
自身の役職手当が固定残業代を含むかどうかは、給与明細や就業規則、雇用契約書で確認できます。もし不明な場合は、必ず人事や総務部門に確認しましょう。
確認書類 | チェックすべき項目 |
雇用契約書・労働条件通知書 | 「役職手当(固定残業〇時間分を含む)」といった記載がないか。 基本給と固定残業代部分が明確に区分されているか。 |
給与明細 | 「役職手当」「固定残業手当」などの項目があるか。 手当の内訳が記載されているか。 |
就業規則 | 賃金規程の中に、役職手当や固定残業代に関する定めがあるか。 |
もし「役職手当を払っているから、いくら残業しても残業代は出ない」と説明された場合は、違法の可能性があります。まずは自身の労働契約の内容を正確に把握することが、不利益を被らないための第一歩です。
管理職手当の注意事項と実態
役職手当と関連して、もう一つ知っておくべきなのが「管理監督者」という立場です。労働基準法では、「管理監督者」にあたる労働者には、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されません。そのため、管理監督者には時間外労働や休日労働に対する割増賃金(いわゆる残業代や休日手当)を支払う必要がないとされています。
しかし、ここで最も注意すべきなのは、「役職者=管理監督者」ではないという点です。管理監督者と認められるためには、以下の要件を実態として満たしている必要があります。
- 経営者との一体性
- 経営方針の決定に関与するなど、経営者と一体的な立場にあること
- 労働時間の裁量
- 出退勤や勤務時間について、自らの裁量で決定できること。タイムカードで厳格に管理されている場合は該当しにくいです。
- 地位にふさわしい処遇
- 役職手当などが、その地位にふさわしい金額で支払われており、一般の職員と比較して賃金面で優遇されていること。
一般的に、病院や施設における「看護師主任」の立場は、上記の要件をすべて満たすことは少なく、労働基準法上の管理監督者には該当しない「名ばかり管理職」であるケースがほとんどです。



師長クラスであっても管理監督者とは認められない可能性が高いです。
万が一、自身が管理監督者として扱われる場合でも、知っておくべきことがあります。それは、深夜労働(22時~翌5時)に対する割増賃金は、管理監督者であっても支払われる義務があるという点です。夜勤がある職場で働く主任看護師の方は、特に覚えておきましょう。
自身の立場が管理監督者に該当するかどうか、またその待遇が適正であるか不安な場合は、厚生労働省が公表している以下の資料を参考にしたり、労働基準監督署に相談したりすることをおすすめします。
※参考:労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために(厚生労働省)
項目 | 管理監督者 | 一般労働者(主任含む) |
時間外労働の割増賃金(残業代) | 支払い義務なし | 支払い義務あり |
休日労働の割増賃金(休日手当) | 支払い義務なし | 支払い義務あり |
深夜労働の割増賃金(深夜手当) | 支払い義務あり | 支払い義務あり |
労働時間の裁量 | あり | なし(就業規則等で定められる) |
主任への昇進はキャリアアップの証ですが、同時に労働条件が変化する重要なタイミングでもあります。役職手当の内容や自身の立場を正しく理解し、納得した上で働くことが、長期的なキャリアを築く上で非常に大切です。
主任看護師になって感じたメリット・デメリット


主任への昇進は、年収アップという経済的な魅力がある一方で、責任の重さや業務内容の変化といった不安も伴います。私自身、主任になる前は期待と不安が入り混じっていました。ここでは、私が実際に主任看護師になってみて感じたリアルなメリットとデメリットを、具体的なエピソードを交えてご紹介します。
看護主任のメリット
主任になって最も分かりやすい変化は、やはり給与面と職場での立場です。しかし、それ以外にも日々の業務の中で感じるやりがいなど、多くのメリットがありました。
具体的に感じたメリットは以下の通りです。
- 経済的な安定感の向上
- 毎月17,000円の役職手当は、年間にすると204,000円の増収です。さらに私の職場ではボーナスの算定基礎にも含まれるため、年収全体が底上げされました。この手当があることで、将来に向けた貯蓄や自己投資に回せるお金が増え、精神的な余裕にも繋がっています。
- キャリアアップへの実感と自信
- 主任という役職を経験することで、マネジメント能力やリーダーシップが身につき、看護師としての市場価値が高まったと実感しています。将来的に看護師長や認定看護管理者を目指す上でも、この経験は大きな強みになると感じています。
- 裁量権の拡大とやりがい
- 現場のリーダーとして、業務改善や看護ケアの質向上に関する提案が通りやすくなりました。自分の意見やアイデアがチームや施設全体の方針に反映され、より良い看護を提供できていると感じる瞬間は、大きなやりがいにつながります。
- 視座が高まり、情報が集まる
- 師長や他部署の責任者、医師との会議に出席する機会が増え、施設運営に関する重要な情報に触れられるようになりました。これまで見えていなかった組織全体の動きを把握できるため、より大局的な視点で物事を考えられるようになります。
看護主任のデメリット
メリットがある一方で、もちろんデメリットや大変なこともあります。特に「中間管理職」としての立場は、想像以上の精神的な負担を伴うことも。良い面だけでなく、厳しい面も正直にお伝えします。
- サービス残業の発生リスク
- 私の職場では、主任の役職手当に一定時間分の残業代が含まれる「みなし残業(固定残業代)」の形式をとっています。そのため、業務量が増えても残業代が別途支給されず、時給換算すると一般スタッフ時代より低くなってしまう「名ばかり管理職」状態に陥るリスクがあります。労働基準法における「管理監督者」は、経営者と一体的な立場にあるなど厳格な要件があり、すべての主任が当てはまるわけではありません。この点は昇進前に必ず確認すべき重要なポイントです。
- 中間管理職としての板挟み
- 上司である施設長の方針と、現場スタッフの意見が対立することは日常茶飯事です。双方の言い分を聞き、調整役として立ち回るのは非常にストレスがかかります。「上からはもっとやれと言われ、下からは無理だと言われる」という状況で、孤独を感じることも少なくありません。
- 責任の重圧とインシデント対応
- チーム内で起こったインシデントやアクシデントの第一報告先は主任です。患者さんやご家族への説明、再発防止策の策定など、責任者として矢面に立つ場面が増え、精神的なプレッシャーは格段に大きくなります。
- 部下の労務管理と人間関係の調整
- スタッフの勤務希望の調整や、モチベーション管理、時にはスタッフ間のトラブルの仲裁に入ることも主任の仕事です。自分の看護業務に加え、他人の感情やキャリアにまで気を配る必要があり、業務時間外も頭を悩ませることが増えました。
主任になることは、キャリアと年収を向上させる大きなチャンスですが、同時に新たな責任と困難も伴います。



これらのメリット・デメリットを天秤にかけ、自分がどのような看護師になりたいのか、どのような働き方を望むのかをじっくり考えることが大切です。
主任看護師として年収をさらにアップさせるには?


主任に昇進し、役職手当がつくことで年収はアップしたものの、「増えた責任や業務量に見合っていないのでは?」と感じる方も少なくないでしょう。また、将来のライフプランを考えると、さらに収入を増やしたいと考えるのは自然なことです。
ここでは、主任看護師が年収をさらに引き上げるための具体的な方法を、それぞれの選択肢に分けて詳しく解説します。
- 昇進後も年収を上げるためのポイント
- 他施設や病院への転職で年収アップを狙う方法
昇進後も年収を上げるためのポイント
まずは、現在の職場に留まりながら収入を増やす方法です。慣れ親しんだ環境で、これまでの経験や人間関係を活かしながら年収アップを目指せるのが大きなメリットです。
看護師長や副看護部長へのさらなる昇進を目指す
主任の次のキャリアパスとして、看護師長(係長・課長クラス)や副看護部長といった、より上位の管理職を目指すのが最も直接的な年収アップの方法です。役職が上がるにつれて役職手当の額も大きくなり、基本給の見直しが行われる場合もあります。例えば、看護師長に昇進すると、役職手当だけで月額5万円~10万円程度になる施設も珍しくありません。当然、責任はさらに重くなりますが、組織運営や経営にも関わるやりがいのあるポジションです。



私の職場は一般企業の体質があるので、係長・課長・部長といった役職へのキャリアアップとなります。
昇進を目指すには、日々の業務でリーダーシップを発揮するだけでなく、院内の委員会活動や研修企画、業務改善プロジェクトなどで積極的に実績を積み、上司や経営層にマネジメント能力をアピールすることが重要です。
専門・認定看護師などの資格を取得する
専門性を高めることで、年収アップにつなげる方法もあります。専門看護師や認定看護師、特定の医療分野に特化した資格などを取得すると、多くの病院で「資格手当」が支給されます。資格手当の相場は月額3,000円~20,000円程度で、年収に換算すると3,6万円~24万円のプラスになります。主任としてのマネジメント業務と並行して、専門分野のスペシャリストとして現場の看護の質を向上させる役割も担うことで、組織にとって不可欠な人材となり、さらなる評価と待遇アップが期待できます。
»認定看護師と専門看護師の違いを徹底比較!役割や働き方、給与を解説
病院によっては資格取得のための学費支援や研修中の出張扱いなどのサポート制度を設けている場合もあるため、一度ご自身の職場の制度を確認してみましょう。
»【ジャンル別】看護師のキャリアアップに有利な資格20選!取得のポイントも解説
副業(ダブルワーク)で収入源を増やす
もし現在の職場の就業規則で許可されているのであれば、副業(ダブルワーク)も有効な選択肢です。看護師の資格や経験を活かせる副業は数多く存在します。
- 夜勤のないクリニックでのパート
- 健診センターでの単発アルバイト
- 訪問看護ステーションでのオンコール対応
- オンラインでの健康相談サービス
- 医療系記事のライティングや監修
ただし、本業に支障が出ないよう、体力面やスケジュール管理には十分な注意が必要です。必ず就業規則を確認し、ルールを守った上で行うようにしてください。
»【副業禁止でも大丈夫】本業に影響ない収入の得方とバレるのを防ぐ方法を紹介!
方法 | 年収アップの目安 | 具体的なアクション |
時さらなる昇進 | 年間50万円~150万円以上 | 委員会活動、業務改善提案、後輩指導などで実績を積む。マネジメント研修に参加する。 |
資格取得 | 年間6万円~24万円程度 | 専門看護師・認定看護師などの資格を取得する。職場の資格取得支援制度を活用する。 |
副業 | 収入は働き方次第 | 就業規則を確認の上、健診センターや訪問看護、オンライン相談などで働く。 |
他施設や病院への転職で年収アップを狙う方法
現在の職場でこれ以上の大幅な年収アップが見込めない場合、より良い条件を求めて転職するのも有力な選択肢です。主任としてのマネジメント経験は、転職市場において大きなアピールポイントとなります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」によると、看護師の平均年収は約508.1万円とされていますが、これは施設の種類や規模、地域によって大きく異なります。例えば、都市部の大学病院や大規模な民間病院、あるいは自由診療が中心の美容クリニックなどは、地方の中小病院や介護施設に比べて給与水準が高い傾向にあります。



主任としての経験を武器に給与水準の高い施設へ転職することで、大幅な年収アップを実現できる可能性があります。
客観的なデータとして、厚生労働省 job tag(看護師)の情報を参考に、ご自身の給与水準が相場と比べてどうなのかを一度確認してみることをお勧めします。
年収アップが見込める転職先の種類
主任経験を活かして年収アップを狙うなら、以下のような転職先が考えられます。
- 大学病院や国公立病院
- 基本給や各種手当が手厚く、福利厚生も充実していることが多いです。
- 都市部の大規模民間病院
- 経営状態が良く、優秀な人材を確保するために高い給与水準を設定している場合があります。
- 美容クリニック
- 自由診療がメインのため利益率が高く、看護師の給与も高水準な傾向にあります。インセンティブ制度を導入しているクリニックもあります。
- 企業(産業看護師)
- 夜勤がなくカレンダー通りの休日が多いため、ワークライフバランスを整えながら安定した収入を得られる可能性があります。
- 他の施設の管理職候補
- 現在の経験を活かし、別の病院や介護施設の主任・師長候補として採用されるケースです。即戦力として期待されるため、好条件での交渉がしやすくなります。
»【厳選】看護師の給料が高い職場5選!職場の特徴や平均年収を徹底比較
転職を成功させるための具体的なステップ
年収アップを目的とした転職を成功させるためには、計画的な行動が不可欠です。やみくもに活動するのではなく、以下のステップを踏むことで、希望の条件に合った転職を実現しやすくなります。
- 1. 自己分析と希望条件の整理
- 主任としてどのような実績を上げてきたか(業務改善、後輩育成など)を具体的に棚卸しする。希望年収、勤務形態、キャリアプランなどを明確にする。
- 2. 情報収集
- 求人サイトだけでなく、看護師専門の転職エージェントを活用する。非公開求人や施設の内部情報(給与体系、人間関係など)を得ることができる。
- 3. 応募・面接
- 履歴書や職務経歴書では、マネジメント経験や実績を具体的な数字を交えてアピールする。面接では、年収などの条件交渉も臆せず行う。エージェントに交渉を代行してもらうのも有効。
給与などの条件交渉は個人では難しい場合も多いため、転職エージェントのサポートを受けるのがおすすめです。一人ひとりの市場価値を客観的に判断したうえで施設側と交渉してくれるため、個人で活動するよりも高い年収を引き出せる可能性が高まります。
»【看護師転職エージェントおすすめ7選】年収150万円アップ&働きやすさを実現した私の成功体験も紹介!
【実体験】ナース専科 転職を利用して年収150万円アップを実現


私は転職によって年収450万円から600万円へ、150万円アップを実現しました。さらに主任に昇格し、役職手当がついて年収は20万円アップの620万円になりました。
様々な転職サービスを比較検討した結果、看護師専門の転職エージェントである「ナース専科 転職(当時はナース人材バンク)」に登録しました。ここでは、私が実際にナース専科 転職を利用して、どのように年収アップを実現したのか、そのリアルな体験談をお話しします。


ナース専科 転職の特徴と利用した理由





数ある看護師向け転職サイトの中から、私が「ナース専科 転職」を選んだのには、明確な理由があります。
まず、ナース専科 転職は、看護師・准看護師・保健師・助産師といった看護職に特化した転職支援サービスである点が大きな魅力でした。運営しているのは、医療・介護分野で多くの情報サービスを展開する株式会社エス・エム・エスであり、その信頼性の高さも決め手の一つです。専門性が高いからこそ、キャリアアドバイザーは看護師の仕事内容やキャリアパス、特有の悩みについて深く理解しており、話がスムーズに進みました。
私がナース専科 転職の利用を決めた具体的な理由は以下の3つです。
- 管理職・高待遇の非公開求人が豊富
- 一般には公開されていない、役職者向けの好条件な求人を多数保有していると聞き、主任としてのキャリアを活かせる転職先が見つかる可能性が高いと感じました。
- 手厚いサポート体制
- 働きながらの転職活動は時間的に制約が多いため、求人探しから面接日程の調整、条件交渉まで一貫してサポートしてくれるエージェントの存在は不可欠でした。特に、履歴書や職務経歴書の添削、面接対策が充実している点に惹かれました。
- 給与交渉力への期待
- 自分では直接言い出しにくい給与や待遇面の交渉を、プロの視点から代行してくれる点に大きな期待を寄せました。結果的に、この交渉力が年収150万円アップという最高の結果に繋がりました。
転職活動から入職までのリアルな流れ
私の場合、登録してから1年ほど何もしない期間がありました。それは、すぐに転職するつもりはなかったが、情報収集だけはしておきたかったのが理由です。そのため、登録してから入職までは期間がかかっていますが、転職を決めてからの流れは驚くほどスムーズでした。
ここでは、一般的に登録してから新しい職場に入職するまでの流れについて解説します。



キャリアアドバイザーのサポートがいかに心強かったか、具体的な流れに沿ってご紹介します。
Step 1:登録・キャリア面談
公式サイトから登録後、キャリアアドバイザーと電話やWebで面談。これまでの経歴やスキル、希望条件(年収、勤務地、役職など)を伝える。
登録は5分もかからず完了。面談では、これまでの業務内容や実績、年収への考え方などを正直に話しました。アドバイザーの方は親身に耳を傾けてくれ、「そのご経験なら年収アップも十分狙えますよ」と力強い言葉をいただき、モチベーションが上がりました。
Step 2:求人紹介
面談内容に基づき、キャリアアドバイザーが最適な求人を複数提案。非公開求人や、求人票だけではわからない内部情報(職場の雰囲気、人間関係、残業の実態など)も提供される。
私の希望に沿った求人を5件ほど紹介してもらいました。そのうち3件が非公開求人で、訪問看護ステーションの管理者候補や、新設老人ホームといった、自分では見つけられなかったであろう魅力的なポジションでした。職場の内部的な情報を教えてもらえたので、ミスマッチの不安も少なかったです。
Step 3:応募・選考対策
応募したい求人が決まったら、キャリアアドバイザーが応募手続きを代行。履歴書・職務経歴書の添削や、各施設に合わせた面接対策も受けられる。
職務経歴書では、現場経験や看護研究の実績を、具体的な数値を用いてアピールする方法を指導してもらいました。面接対策では、想定される質問についてアドバイスをしてもらい、自信を持って本番に臨めました。
Step 4:面接・条件交渉
面接日程の調整はすべてアドバイザーが代行。面接後、給与や休日、勤務時間といった待遇面の交渉も任せることができる。
面接前に、アドバイザーの方が私の強みや熱意を採用担当者に追加でプッシュしてくれていました。希望年収550万円を伝えていたところ、アドバイザーの交渉のおかげで最終的に基本給の増額を勝ち取ってくれ、年収600万円という条件を提示してもらえました。
Step 5:内定・入職
内定が出たら、入職の意思決定をサポート。現在の職場への円満な退職交渉に関するアドバイスや、入職手続きのフォローも受けられる。
内定承諾後、上司への退職の切り出し方やタイミングについて具体的なアドバイスをもらえたので、トラブルなく円満に退職することができました。



入職後もこまめに連絡をくださり、安心して新しいスタートを切ることができました。
転職エージェントを利用するメリット
今回の転職活動を通じて、キャリアアップやさらに年収を上げたいと考えたとき、転職エージェントの利用がいかに有効であるかを実感しました。私が感じた主なメリットは以下の通りです。
- 自分の市場価値を客観的に把握できる
- 「主任としての経験が、他の施設でどれくらい評価されるのか」を客観的な視点で教えてもらえます。自分では気づかなかった強みを発見し、自信を持って転職活動に臨むことができます。
- 好条件の非公開求人に出会える
- 好条件の求人は一般に公開せず、信頼できるエージェント経由で募集されるケースが少なくありません。エージェントを利用することで、こうした好条件の求人に出会うチャンスが格段に広がります。
- 年収交渉を有利に進められる
- 年収アップを目的とする転職において、条件交渉は最も重要なプロセスです。個人の力では難しい交渉も、地域の給与相場や求職者のスキルを熟知したプロが代行してくれるため、希望以上の条件を引き出せる可能性が高まります。私の年収150万円アップは、まさにエージェントの交渉力のおかげです。
- 時間と精神的な負担を大幅に軽減できる
- 多忙な業務と並行して求人を探し、書類を作成し、面接日程を調整するのは非常に困難です。これらの煩雑な作業をすべて任せられるため、目の前の仕事に集中しながら、効率的に転職活動を進めることができました。
もし自分が今の給与や待遇に少しでも疑問を感じているなら、一度キャリアのプロに相談してみることを強くおすすめします。自分の可能性を広げ、正当な評価と待遇を得るための、最も確実な一歩となるはずです。
»看護師転職エージェント「登録だけ」でもすべき5つの理由|転職成功者が教える活用術
まとめ


本記事では、主任看護師の年収の実態を解説しました。主任への昇格で役職手当がつき年収は上がりますが、夜勤回数の減少により、筆者の昇給幅は20万円に留まりました。
また、役職手当に残業代が含まれる場合があるため注意が必要です。現職での昇給に限界を感じるなら、より待遇の良い職場への転職も有効な選択肢です。実際に転職エージェントを利用し、大幅な年収アップを実現したケースもあります。



転職エージェントは無料で利用できるので、まずは私のように「登録だけ」しておくのも有効な使い方です。
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