「夜勤は体に悪い」という情報を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。実際のところ「夜勤=体に悪い」は単純な思い込みかもしれません。適切な対策をすれば、夜勤でも健康を維持することは十分可能です。
本記事では、厚生労働省の最新データや睡眠専門医の見解をもとに、夜勤の健康被害についての真偽を徹底検証します。記事を読めば、夜勤が体内リズムに与える影響のメカニズムや体質・勤務形態別の対策法、最新の健康管理ツールまで網羅的に理解できます。

実際に10年以上夜勤をこなしている私の経験から得た対処法も紹介!夜勤で悩むすべての方に役立つ知識をお届けします。
夜勤は本当に体に悪いのか?噂と真実


看護師をはじめ、24時間体制の現場で働く方々にとって、夜勤は避けて通れない勤務形態です。夜勤と健康の関係について、一般的に言われている「噂」と科学的な「真実」を区別し、正確な情報をお伝えします。
- 夜勤に関する一般的な認識
- 「夜勤が体に悪い」という情報の出どころ
夜勤に関する一般的な認識
夜勤に対して、以下のような不安や懸念が広く知られています。
- 生活リズムが崩れて健康を害する
- 寿命が縮む
- がんのリスクが高まる
- 太りやすくなる
- 精神疾患になりやすい
実際に夜勤従事者の間では、こうした健康不安の声が多く聞かれます。厚生労働省の調査によると、深夜業務に従事する労働者の中で、深夜業務につく前と比較して体調の変化があったとする労働者の割合は36.1%であるというデータもあります。



確かに、私も夜勤を頻繁にこなしていた時は頭痛やだるさ、食欲低下をよく実感していました。
「夜勤が体に悪い」という情報の出どころ
「夜勤が体に悪い」という情報の主な出どころは、以下の研究や報告に基づいています。
発表元/研究機関 | 主な指摘内容 | 発表年 |
---|---|---|
世界保健機関(WHO)国際がん研究機関 | 交代制勤務を「おそらく発がん性がある」と分類 | 2007年 |
日本産業衛生学会 | 夜勤を含む交代制勤務と循環器疾患の関連を指摘 | 2018年 |
日本睡眠学会 | 不規則な勤務と睡眠障害の関連性を報告 | 2020年 |
特に注目すべきは、2007年に世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関(IARC)が、夜勤を含む交代制勤務を「グループ2A(おそらく発がん性がある)」と分類したことです。これにより、夜勤の健康リスクが広く知られるようになりました。



一方で「夜勤が体に悪いは嘘」という主張も一部で見られます。
「夜勤が体に悪いは嘘」という主張の背景
- 個人の体質や生活習慣によって影響度が大きく異なる
- 適切な対策を取れば健康リスクを大幅に軽減できる
- 研究結果は統計的相関であり、必ずしも因果関係を証明していない
- 夜型の生活リズムに適応できる人もいる
夜勤が体に悪いことを裏付けるデータ


「夜勤が体に悪い」という主張の真偽を客観的に判断するためには、公的機関から発表されている信頼性の高いデータを確認することが重要です。ここでは、夜勤労働に関する各種調査結果や論文をもとに、夜勤と健康の関係について検証します。
- 夜勤労働者の健康調査結果
- 交代制勤務と生活習慣病の相関関係
夜勤労働者の健康調査結果
厚生労働省が公表する「長時間の過重業務における労働時間以外の負荷要因等」によると、交代制勤務や夜勤を含む勤務形態の労働者は、日勤のみの労働者と比較して虚血性心疾患等による死亡リスクが2.32倍になるとされています。
カナダのワーク&ヘルス研究所(IWH)では、シフト勤務(特に夜間勤務)において、以下の健康問題との関連性について言及しています。
- 睡眠障害
- 職場での怪我
- 癌
- 妊娠の合併症
- 胃腸障害
- 心血管疾患
- 心理的苦痛
- 糖尿病
また、厚生労働省の過労死等の労災補償状況によると、脳・心臓疾患の労災認定事例において、「長時間の過重業務」に次いで「交代制勤務・深夜勤務」が発症に関与する要因として挙げられています。
交代制勤務と生活習慣病の相関関係
厚生労働省の「e-ヘルスネット」が実施した調査では、交代制勤務と各種生活習慣病との間に一定の相関関係が認められています。特に注目すべきは、夜勤を含む不規則な勤務形態が代謝系疾患に与える影響です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、交代制勤務と生活習慣病の関連について言及されており、以下のような相関関係が示されています。
疾患・リスク要因 | 交代制勤務者のリスク増加率 | 主な原因 |
---|---|---|
高血圧 | 約1.2倍 | 交感神経の活性化と血圧調整機能の低下 |
心血管系疾患 | 約1.15倍 | 自律神経の乱れによる血圧上昇・動脈硬化 |
メタボリックシンドローム | 約1.03倍 | 複合的な代謝機能の乱れ |



これらのデータは「夜勤が必ず健康被害をもたらす」ということを意味するものではありません。適切な対策や個人の体質によって影響度は大きく異なることも指摘されています。
夜勤が体に与える影響


ここでは、医学的知見に基づいて、夜勤労働が体に与える影響を詳しく解説します。
- 体内時計(サーカディアンリズム)の乱れ
- メラトニン分泌への影響
- 睡眠の質と量の変化
- 免疫機能への影響
体内時計(サーカディアンリズム)の乱れ
人間の体には約24時間周期で変動する体内時計が存在します。「サーカディアンリズム」とも呼ばれ、睡眠と覚醒のサイクル、体温の変動、ホルモン分泌など、様々な生理機能の調整に重要な役割を果たしています。
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夜勤は、自然なサーカディアンリズムを強制的に変化させます。昼間に眠り、夜に活動するというパターンは、進化の過程で形成された人間の生物的な仕組みに反するものです。日本看護協会でも、不規則な生活リズムが健康リスクを高める可能性が指摘されています。
体内時計の乱れは、以下のような症状を引き起こす可能性があります。
- 慢性的な疲労感
- 集中力の低下
- 気分の変動
- 消化器系のトラブル
- 長期的な健康リスクの増加



サーカディアンリズムの乱れが長期間続くと、様々な健康障害のリスクが高まります。
メラトニン分泌への影響
メラトニンは「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、夜間に松果体から分泌されるホルモンです。睡眠の質を高めるだけでなく、抗酸化作用や免疫調整機能も持っています。
夜勤中に明るい環境で過ごすことで、本来メラトニンが分泌されるべき時間帯に光を浴びることになります。光はメラトニン分泌を抑制する最大の要因であり、これにより以下の影響が生じます。
影響の種類 | 短期的影響 | 長期的影響 |
---|---|---|
睡眠への影響 | 入眠困難、睡眠の質低下 | 慢性的な不眠症、睡眠障害 |
健康への影響 | 疲労感、日中の眠気 | 免疫力低下、酸化ストレス増加 |
精神面への影響 | 集中力低下、イライラ | うつ症状、不安障害リスク上昇 |
厚生労働省「深夜業務のある男性就労者の生活習慣と大腸がん」によれば、夜勤労働者のメラトニン分泌パターンの乱れは、長期的に見ると発がんリスクの上昇にも関連している可能性が示唆されています。
個人差も大きく、夜勤への適応能力は人によって異なります。適切な対策を講じることで、メラトニン分泌への悪影響を最小限に抑えることも可能です。
睡眠の質と量の変化
夜勤労働者が直面する大きな問題の一つが、睡眠の質と量の変化です。昼間に眠ろうとしても、環境的要因(光、騒音)や生物学的要因(体内時計)により、質の高い睡眠をとることが難しくなります。夜勤労働者の睡眠には、以下の特徴があります。
- 睡眠時間の短縮(平均1〜2時間)
- レム睡眠とノンレム睡眠のバランスの乱れ
- 中途覚醒の増加
- 深い睡眠(徐波睡眠)の減少
- 睡眠効率の低下
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると、睡眠の質と量の低下は、短期的には日中の眠気や集中力低下、作業効率の低下をもたらすことが分かっています。



単に「眠りにくい」という主観的な感覚だけでなく、生理学的にも実証されている現象です。
免疫機能への影響
質の高い睡眠は免疫機能の維持に不可欠です。睡眠中には免疫細胞の活性化や炎症性サイトカインの調整などが行われます。夜勤による睡眠の質と量の低下は、これらの免疫プロセスに悪影響を及ぼす可能性があります。以下の表でわかるように、睡眠時間が短いほど風邪の発症率は高いです。





アメリカの研究でも、睡眠不足と免疫力低下には相関関係があると発表しています。
免疫機能の低下で起こりうる健康問題
- 風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなる
- 感染症からの回復に時間がかかる
- 慢性炎症性疾患のリスク上昇
- 自己免疫疾患の発症リスク増加
- 長期的には癌のリスク上昇の可能性
夜勤の免疫機能への影響も個人差が大きく、睡眠の質を確保するための対策や生活習慣の工夫によって、悪影響を最小限に抑えることが可能です。適切な睡眠環境の整備、規則正しい生活リズムの維持、バランスの取れた食事、適度な運動など、総合的なアプローチが重要となります。



定期的な健康診断を受け、免疫機能に関わる指標をチェックすることで、早期に問題を発見し対処することができます。私の職場でも、夜勤をする職員には定期的な健診があります。
夜勤が「必ずしも悪くない」とする研究や事例


夜勤が健康に悪影響を及ぼすという一般的な認識がある一方で、必ずしもすべての人に同じ影響があるわけではないという根拠について解説します。
- 個人差による影響の違い
- 適切な対策を取れば健康維持も可能
- 夜型人間と夜勤の相性
個人差による影響の違い
人間の体内時計は遺伝的要因によって個人差があることが科学的に証明されています。島根大学の研究によると、体内時計の調節に関わる遺伝子の多型によって、夜型・朝型の傾向が決まるとされています。
田辺三菱製薬が実施した調査では、約8,000人のオフィスワーカーのうち30%の人が「夜型」の傾向を持っていると報告されています。これらの人々は、夜間活動に適応しやすい体質を持っているため、夜勤による健康リスクが比較的小さい可能性があります。


若年層(20〜30代)は中高年層に比べて夜勤への適応能力が高い傾向があります。これは加齢に伴い体内時計の柔軟性が低下するためと考えられています。



自分の体内時計タイプを知り、適した勤務スケジュールを選択できれば、夜勤による健康リスクを軽減できる可能性があります。
適切な対策を取れば健康維持も可能
夜勤従事者は適切な健康管理を行うことで、健康リスクを大幅に軽減できる可能性があります。具体的には、以下の対策を取ることで夜勤の悪影響を抑制することが可能です。
- 勤務前に90〜120分の仮眠を取る
- 勤務終了後は直射日光を避け、遮光メガネを着用する
- 夜勤専用の睡眠環境を整備する(遮光カーテン、防音対策など)
- 規則的な食事と運動習慣を維持する
- カフェインの摂取タイミングを調整する
また、夜勤のスケジュール設計も重要な要素です。前進ローテーション(日勤→準夜勤→夜勤の順)の方が後退ローテーション(夜勤→準夜勤→日勤の順)よりも体への負担が少ないことが示されています。これは、前進させる方が体内時計の調整が簡単であるためです。



労働者健康安全機構によれば、入浴や食事、軽めの運動も健康維持に重要であるとしています。
夜型人間と夜勤の相性
生まれつき夜型の生活リズムを持つ人々にとって、夜勤は必ずしも不自然な勤務形態ではありません。いわゆる「フクロウ型」と呼ばれる夜型の人々は、夜間の活動に適した体内時計の特性を持っています。夜型の人の特徴としては以下の点が挙げられます。
- 夜間(22時以降)に集中力や創造性が高まる
- 朝の目覚めが遅く、午前中のパフォーマンスが低い傾向
- 夜間の光暴露による体内時計の乱れが少ない
- 朝型の人と比べて夜間のメラトニン分泌パターンに差がある
夜型傾向を自己判定する簡易的な方法として、MEQスコア(朝型-夜型質問紙)の日本語版が有効です。この質問紙で16点以下のスコアの人は「明らかな夜型」と判定され、夜勤との相性が良いとされています。
ただし、すべての夜型の人が夜勤に適しているわけではなく、個人差があることには注意が必要です。家族との時間や社会的活動との両立という観点では、夜型の人でも課題を抱えることがあります。自分の体質や生活スタイルを理解し、それに合った勤務形態を選択することが、夜勤を健康的に続けるための重要なポイントです。



適切な対策と自己管理を行うことで、夜勤の悪影響を最小限に抑えながら、健康を維持することは十分に可能です。
夜勤を健康的に乗り切るための対策


夜勤は体に負担がかかる勤務形態ですが、適切な対策を講じることで健康への悪影響を最小限に抑えることが可能です。ここでは、根拠に基づいた夜勤の健康管理方法を解説します。
- 睡眠の質を高める方法
- 食事管理と栄養バランス
- 運動習慣の取り入れ方
- 光と闇のコントロール
睡眠の質を高める方法
夜勤勤務者にとって、良質な睡眠を確保することは健康維持のための重要な課題です。良質な睡眠を得るためには、適切な睡眠環境の整備が不可欠です。以下の点に特に注意しましょう。
- 遮光カーテン・アイマスクの活用
- 日中に睡眠をとる場合、完全な暗闇を作り出すことが重要です。研究によれば、わずかな光でもメラトニン分泌が抑制され、睡眠の質が低下します。
- 適切な寝室温度の維持
- 理想的な睡眠環境温度は18〜22℃とされています。エアコンや加湿器を活用して最適な温湿度を保ちましょう。
- 騒音対策
- 耳栓や防音カーテン、ホワイトノイズマシンの使用で、日中の生活音から睡眠を守りましょう。
- 快適な寝具の選択
- 自分の体型や寝姿勢に合った枕とマットレスを選ぶことで、睡眠の質は大きく向上します。
睡眠環境のチェックリストは以下のとおりです。
チェック項目 | 理想的な状態 | おすすめ対策 |
---|---|---|
光の遮断 | 完全な暗闇 | 遮光1級カーテン、アイマスク |
室温 | 18〜22℃ | エアコン、サーキュレーター |
湿度 | 40〜60% | 加湿器、除湿機 |
騒音 | 40dB以下 | 耳栓、ホワイトノイズマシン |
睡眠スケジュールの立て方
- 一定の睡眠時間の確保
- 夜勤の場合でも、毎日一定時間の睡眠をとるよう心がけましょう。厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人の場合、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することを推奨しています。
- 仮眠の効果的な活用
- 夜勤前に20〜30分の仮眠を取ることで、夜間の覚醒度を上げる効果があります。
- 休日の睡眠調整
- 完全に昼間のリズムに戻すのではなく、部分的に夜型のリズムを維持する方が体への負担が少ないとされています。
理想的な睡眠スケジュール例(夜勤勤務22時〜翌8時の場合)は以下のとおりです。
時間帯 | 活動内容 | ポイント |
---|---|---|
8:30〜9:00 | 帰宅・軽食 | 消化のよい軽い食事を摂る |
9:30〜16:30 | メイン睡眠 | 遮光・防音対策を徹底 |
16:30〜20:00 | 起床・食事・活動 | 明るい光を浴びる |
20:00〜20:30 | 仮眠 | アラームを必ずセット |
21:00〜 | 出勤準備 | カフェインは控えめに |
食事管理と栄養バランス
夜勤勤務者は通常と異なる食事時間により、消化器系の問題や栄養バランスの乱れを生じやすいとされています。適切な食事管理は健康維持の重要なポイントです。
夜勤中に適した食事内容
- 複合炭水化物の摂取
- 玄米、全粒粉パン、オートミールなどの緩やかにエネルギーを放出する炭水化物を選びましょう。
- 適度なタンパク質
- 鶏肉、豆腐、ヨーグルトなど、消化に負担がかからないタンパク質源を摂取しましょう。
- 避けるべき食品
- 脂肪の多い食品、加工食品、精製糖を多く含む食品は消化不良や血糖値の急激な変動を引き起こすため避けるべきです。
- 水分補給
- カフェインに頼りすぎず、水やハーブティーで適切な水分補給を心がけましょう。
夜勤中のおすすめ食品リストは、以下のとおりです。
食品カテゴリー | おすすめ食品 | 避けるべき食品 |
---|---|---|
炭水化物 | 玄米おにぎり、全粒粉サンドイッチ、オートミール | 白米、白パン、スナック菓子 |
タンパク質 | ゆで卵、サラダチキン、豆腐、納豆 | 揚げ物、ファストフード、加工肉 |
野菜・果物 | バナナ、リンゴ、ミニトマト、キュウリ | 柑橘類(胃酸過多の原因) |
飲み物 | 水、ハーブティー、少量の緑茶 | エナジードリンク、濃いコーヒー、アルコール |
食事タイミングのポイント
- 夜勤前の食事
- 勤務開始の2〜3時間前に消化の良いタンパク質と複合炭水化物を含む食事を摂りましょう。
- 夜勤中の食事
- 勤務の中間地点(深夜0時〜3時頃)に軽めの食事を摂るのが理想的です。大量の食事は避け、少量を複数回に分けて摂取することも効果的です。
- 夜勤後の食事
- 帰宅後すぐに重い食事を摂ると睡眠の質が低下します。軽い食事にとどめ、主要な食事は起床後に摂るようにしましょう。
夜勤勤務者の理想的な食事タイミング(夜勤22時〜翌8時の場合)は、以下の表のとおりです。
時間帯 | 食事内容 | ポイント |
---|---|---|
19:00〜20:00 | 夜勤前の食事 | バランスの良い食事、腹八分目に |
0:00〜1:00 | 夜勤中の軽食① | おにぎりやサンドイッチ程度の軽食 |
4:00〜5:00 | 夜勤中の軽食② | フルーツやヨーグルトなど消化の良いもの |
8:30〜9:00 | 帰宅後の軽食 | スープや温かい飲み物、少量の炭水化物 |
16:30〜17:30 | 起床後の主食 | 栄養バランスを意識した食事 |
運動習慣の取り入れ方
夜勤勤務者にとって適切な運動は、睡眠の質の向上、ストレス軽減、免疫機能強化など多くのメリットがあります。しかし、タイミングと運動強度に注意が必要です。
厚生労働省の運動指針では、成人は週に150分の中強度の有酸素運動を推奨していますが、夜勤従事者は以下のポイントに注意して運動を取り入れましょう。
- 適切な運動タイミング
- 睡眠の2〜3時間前までに終えるのが理想的です。夜勤前であれば出勤の4〜5時間前、夜勤後であれば帰宅後すぐではなく、数時間の間隔を空けましょう。
- 運動の種類
- ウォーキング、ジョギング、水泳、サイクリングなどの有酸素運動に加え、週2回程度の軽い筋力トレーニングを組み合わせるとより効果的です。
- 運動強度
- 「ややきつい」と感じる程度の中強度が理想的です。夜勤によるパフォーマンス低下を考慮し、通常より少し軽めの強度から始めましょう。
- 継続性
- 無理なく続けられる運動計画を立てることが重要です。1回の運動時間が短くても、継続することで効果が現れます。
夜勤勤務者におすすめの運動プランの例は以下のとおりです。
勤務状況 | おすすめの運動 | タイミング | 時間・強度 |
---|---|---|---|
夜勤前の日 | ウォーキング、軽いジョギング | 夕方(出勤の4〜5時間前) | 20〜30分、息が少し上がる程度 |
夜勤後の日 | ストレッチ、ヨガ | 起床後(夕方) | 15〜20分、リラックスできる程度 |
連続夜勤の合間 | 軽い筋トレ(自重)、ストレッチ | 起床後2〜3時間後 | 10〜15分、疲れを残さない程度 |
休日 | サイクリング、水泳など好みの運動 | 午前中〜夕方 | 30〜45分、やや強めの強度でも可 |



運動は習慣化させることが大事です。一回のきつい運動より、軽くても毎日続ける方が効果があります。
光と闇のコントロール
光は体内時計を調整するための強力な外部要因です。夜勤勤務者が健康を維持するためには、光と闇の適切なコントロールが不可欠です。
- 夜勤中の光環境
- 夜勤中はできるだけ明るい照明の下で作業することで覚醒度を維持します。特に夜間の2時〜4時に明るい光(1000ルクス以上)を浴びることで、体内時計の乱れを最小限に抑えられます。
- 夜勤後の光対策
- 夜勤終了後、帰宅時にはサングラスを着用し、強い朝日を避けることで、メラトニン分泌の抑制を防ぎます。
- 寝室の完全な遮光
- 日中の睡眠時には100%遮光カーテンやアイマスクを使用し、わずかな光も入らないようにしましょう。
- ブルーライト対策
- 寝る前の2時間はスマートフォンやパソコンの使用を控えるか、ブルーライトカットメガネやフィルター、ナイトモード機能を活用しましょう。
- 光治療の活用
- 夜勤後のリズム調整や、休日に昼間のリズムに戻す際に、高照度光療法(光治療)が効果的な場合があります。特に冬場や窓の少ない住環境では、光療法器の使用を検討してみましょう。
1日の理想的な光環境管理(夜勤22時〜翌8時の場合)は、以下のとおりです。
時間帯 | 推奨される光環境 | 対策・ツール |
---|---|---|
22:00〜2:00 | 通常の室内照明(300〜500ルクス) | 職場の照明を適切に調整 |
2:00〜4:00 | 明るい照明(1000ルクス以上) | 高照度の作業灯、光療法器 |
4:00〜7:00 | 徐々に照度を下げる | 調光可能な照明 |
8:00〜9:00(帰宅時) | 朝日を避ける | サングラス、つばの広い帽子 |
9:00〜16:30(睡眠時) | 完全な暗闇 | 遮光カーテン、アイマスク |
16:30〜19:00(起床後) | 明るい自然光または室内照明 | カーテンを開ける、外出する |
19:00〜22:00(次の勤務前) | 徐々に照度を上げる | 徐々に室内を明るくする |
夜勤タイプ別の健康リスクと対策


夜勤の働き方は業種や施設によって様々です。勤務形態によって身体への負荷や対策方法が異なるため、自分の勤務タイプに合わせた健康管理が重要です。ここでは、主な夜勤パターン別のリスクと具体的な対策を詳しく解説します。
- 2交代制の場合
- 夜勤専従の場合
- 3交代制の場合
- オンコールの場合
2交代制の場合
2交代制は主に日勤(8時間)と夜勤(16時間)の組み合わせで構成される勤務形態です。医療機関や介護施設で多く採用されています。
主なリスク | 具体的な対策 |
---|---|
長時間勤務による身体的疲労の蓄積 | 夜勤中の小休憩を効果的に活用、業務の優先順位付け |
不規則な睡眠サイクル | 夜勤後の睡眠時間確保(最低6時間)、遮光カーテンの活用 |
食生活の乱れ | 勤務中の食事タイミングの規則化、深夜の高カロリー食の回避 |
2交代制の最大の課題は、1回の夜勤が16時間と長時間に及ぶ点です。厚生労働省の労働時間の適正な把握によると、長時間労働は脳・心臓疾患のリスクを高めるとされています。
夜勤明けは体が疲労しているにもかかわらず、日中の明るさが睡眠の質を低下させます。対策としては、帰宅後すぐに睡眠をとる習慣をつけ、寝室は完全に遮光することが重要です。夜勤と日勤の間に最低でも16時間以上の休息時間を確保するようスケジュール調整を依頼することも効果的です。
夜勤中は3〜4時間ごとに10〜15分の仮眠を取ることで、パフォーマンスの低下を防ぐことができます。



仮眠は30分以内にとどめましょう。深い睡眠に入らず、起床時の睡眠慣性(目覚め後のぼんやり感)を防ぐことができます。
夜勤専従の場合
夜勤専従とは、常に夜間の時間帯のみ勤務する形態です。工場、警備、ホテル、医療機関などで採用されています。
主なリスク | 具体的な対策 |
---|---|
体内時計の完全な逆転による社会的孤立 | 休日も夜型生活を維持、社会活動への意識的な参加 |
ビタミンD不足(日光不足) | 日光浴の時間確保、ビタミンDサプリメントの摂取 |
長期的な健康リスクの増加 | 定期的な健康診断、生活習慣病の早期発見・予防 |
夜勤専従の最大のメリットは、生活リズムが一定になることです。体内時計を完全に夜型に調整することで、日勤と夜勤を交互に行う交代制と比較して、体への負担を軽減できる可能性があります。
ただし、夜勤専従者は日光を浴びる機会が少なくなるため、ビタミンD不足のリスクがあります。勤務後の朝や休日に15〜30分程度の日光浴を行うことを習慣化しましょう。また、厚生労働省の「健康日本21」でも推奨されているように、バランスの良い食事を心がけ、特にビタミンDを多く含む魚類や卵、きのこ類の摂取を意識することが重要です。
社会的な孤立を防ぐため、休日は友人や家族との時間を意識的に確保し、コミュニティ活動への参加も検討しましょう。



長期的に夜勤を続けると生活習慣病のリスクが高まるため、年に1回以上の健康診断を欠かさず受けることが推奨されます。
3交代制の場合
3交代制は日勤、準夜勤、深夜勤の3つのシフトを交代で行う勤務形態です。主に医療機関や24時間営業の工場などで採用されています。
主なリスク | 具体的な対策 |
---|---|
頻繁なシフト変更による体内時計の混乱 | シフト変更時の適応期間の確保、前進ローテーション(日勤→準夜勤→深夜勤)の採用 |
短時間の勤務間インターバル | シフト間の十分な休息時間の確保、特に深夜勤務後 |
睡眠パターンの不規則化 | シフトごとの睡眠戦略の確立、睡眠の優先順位付け |
3交代制の課題は、体内時計が安定しにくいことです。シフトの順番を「日勤→準夜勤→深夜勤」という前進ローテーションにすることで、体内時計への負担が軽減されます。各シフトへの適応策として、以下の対応が効果的です。
- 日勤前
- 通常の夜間睡眠を確保(22時〜6時頃)
- 準夜勤前
- 少し遅めに就寝し、朝も遅めに起床(24時〜9時頃)
- 深夜勤前
- 夕方に3〜4時間の仮眠を取り、朝は軽い活動後に昼寝(午前中2〜3時間、夕方16時〜20時に仮眠)
特に問題となるのが、深夜勤務から日勤への移行期間です。この場合、深夜勤明けの睡眠を最低6時間確保し、可能であれば次の日勤までに24時間以上の間隔を空けることが理想的です。



もし勤務間隔が短い場合は、短時間の仮眠(20〜30分)を活用することで、疲労回復を図りましょう。
オンコールの場合
オンコールとは、通常業務外の時間帯に緊急時の呼び出しに備える勤務形態です。医師、IT技術者、設備保守担当者などに多く見られます。



看護師の場合は、訪問看護やオペ室などで採用しているケースが多いです。
主なリスク | 具体的な対策 |
---|---|
不規則な呼び出しによる睡眠中断 | 呼び出し時の対応手順の効率化、事前準備 |
常に待機状態によるストレス | リラクセーション技法の習得、呼び出し体制の分担 |
通常業務と緊急対応の両立による疲労 | オンコール後の回復時間確保、次の日の業務調整 |
オンコール勤務の最大の特徴は、呼び出しの不確実性です。常に緊張状態となり、たとえ実際の呼び出しがなくても、質の高い睡眠が妨げられることがあります。
対策としては、呼び出し時の対応手順をマニュアル化し、迅速に対応できるよう準備しておくことが重要です。オンコール期間中は軽めの食事を心がけ、アルコールは避けることで、緊急呼び出し時のパフォーマンス低下を防ぎます。
睡眠への影響を最小限に抑えるため、オンコール当番の期間はできるだけ短く設定し、ローテーションを組むことが推奨されます。呼び出し対応後は十分な休息を取れるよう、勤務スケジュールに柔軟性を持たせることが理想的です。
特に医療従事者の場合、オンコール後の疲労回復が不十分なまま通常業務を行うことでミスが増加するリスクがあります。



可能であれば、オンコール対応後の勤務開始時間を遅らせる、もしくは業務量を調整するなどの配慮が必要です。
夜勤と生活の両立をサポートする最新ツールとサービス


近年は科学的根拠に基づいた様々なサポートアイテムが登場しており、体内リズムの調整や睡眠の質の向上に役立ちます。ここでは夜勤労働者の生活をサポートする最新のグッズやサービスを紹介します。
- 睡眠の質を高めるグッズ
- 体内時計を整えるアプリ
- 夜勤従事者向けの健康サポートサービス
睡眠の質を高めるグッズ
夜勤後の睡眠は、通常の夜間睡眠と比較して質が低下しがちです。睡眠の質を高めるための3つのアイテムを紹介します。
①遮光・防音対策グッズ
昼間に睡眠を取る夜勤従事者にとって、光と音は深刻な睡眠妨害の要因になります。音や光を効果的に遮断するグッズは必須のアイテムです。例えば、以下のものが挙げられます。
製品カテゴリ | 特徴 | 効果 |
---|---|---|
遮光カーテン | 完全遮光率99.99%以上のもの | 日中の強い光を遮断し、メラトニン分泌を促進 |
アイマスク | 立体構造で目への圧迫感が少ないタイプ | 移動中や自宅以外での睡眠時に光を遮断 |
耳栓 | 遮音性の高いシリコン製や形状記憶フォーム | 日中の生活音やトラフィックノイズを軽減 |
ノイズキャンセリングイヤホン | 環境音を打ち消す機能付き | 周囲の騒音を軽減しながら心地よい音で睡眠導入 |



サイズにもよりますが、遮光カーテンは数千〜数万円と少し高めです。アイマスクや耳栓は100均で十分でしょう。
②睡眠環境を整える寝具
体温調節と快適性は、質の高い睡眠に不可欠です。夜勤従事者の昼間睡眠をサポートする特化型の寝具も増えています。
温度調節機能付きの敷きパッドや掛け布団は、季節や時間帯による室温変化に対応できるため、夜勤従事者におすすめです。夏場の昼間は室温が高くなりがちですが、接触冷感素材や通気性の高い寝具を使用することで、快適な睡眠環境を維持できます。



体圧分散性能の高いマットレスを使用すると、短時間でも質の高い睡眠が得られやすいです。
③光療法デバイス
体内時計を調整するために、光を効果的に活用するデバイスも注目されています。
高照度光療法器は、起床後に利用することで覚醒を促進し、体内時計のリセットをしやすくなります。逆に、就寝前には徐々に光量を落とすタイプの照明を使用することで、自然な睡眠への移行をサポートします。



最近ではスマートLED電球など、時間帯によって自動的に色温度や明るさが変化する製品も登場しており、生活リズムに合わせたプログラミングが可能になっています。
体内時計を整えるアプリ
スマートフォンなどの普及により、体内時計の管理や睡眠の質をモニタリングするアプリが充実してきました。ここでは、2つの目的別のアプリを紹介します。
①睡眠記録・分析アプリ
自分の睡眠状態を客観的に把握することは、質の高い睡眠のためには重要です。以下のようなアプリが日本国内で人気を集めています。
アプリ名 | 主な機能 | 夜勤者向けの特徴 |
---|---|---|
Sleep Cycle | 睡眠サイクルを分析し最適なタイミングで起床 | 昼間睡眠モードあり、不規則な睡眠パターンにも対応 |
Sleep Meister | いびき検出、睡眠グラフ作成 | 日本製で日本人の睡眠パターンに対応 |
AutoSleep | Apple Watchと連携して自動的に睡眠を記録 | 装着したままで睡眠の質を詳細に分析可能 |



睡眠記録アプリを継続的に利用すると睡眠に対する意識が高まり、結果として睡眠時間の確保や睡眠環境の改善につながるケースも多いです。
②リラクゼーション・瞑想アプリ
夜勤後は交感神経が活発な状態が続き、なかなか眠れないことも多いです。眠れないときには、リラクゼーションを促進するアプリが役立ちます。
「Relook」や「Calm」などのアプリでは、充実した瞑想プログラムが用意されており、短時間で心身をリラックス状態に導くことができます。音楽療法の原理を応用した「α波誘導」アプリも、夜勤後の脳の興奮を鎮め、自然な眠りに誘うのに効果的です。



Calmは世界的に人気のアプリですが、日本語に対応していないのがデメリットです。
夜勤従事者向けの健康サポートサービス
個人で行う対策に加えて、専門的なサポートサービスを利用することで、より総合的な健康管理が可能になります。
①オンライン健康相談サービス
夜勤従事者は、一般的な診療時間に医療機関を受診しづらいという課題があります。現在は、普段病院へ行けない人をサポートするオンラインサービスも充実しています。
「CLINICS」や「ファストドクター」などのオンライン診療サービスでは、24時間対応の医師相談が可能です。夜勤特有の不調や睡眠の悩みについて、専門家に相談できる環境が整っています。
総務省の調査によると、オンライン診療を受診した患者のうち66%以上の人が「オンライン診療のほうがよい、または対面と同等」の満足度を得ています。
②夜勤専門の食事宅配サービス
夜勤中や夜勤後の適切な栄養摂取は、健康維持のために必須です。夜勤従事者向けの特化型食事サービスも登場しています。
サービス名 | 特徴 | 栄養面のポイント |
---|---|---|
ナイトフードデリバリー | 夜間配達対応、消化に優しい食材選定 | 消化負担が少なく、持続的なエネルギー供給 |
シフトワーカーズミール | 勤務シフトに合わせた食事設計 | 体内時計を考慮した栄養配分 |
深夜食堂便 | 保温・保冷容器で提供、電子レンジ不要 | 夜勤中のパフォーマンスを維持する栄養バランス |
これらのサービスでは、栄養士が夜勤従事者の代謝リズムを考慮して設計したメニューを提供しており、一般的な食事宅配サービスとは異なる特化型の内容となっています。
③夜勤従事者向け健康保険サービス
一部の健康保険組合や企業では、夜勤従事者に特化した健康管理プログラムを提供しています。
企業と提携した健康保険組合のなかには、夜勤従事者向けの特別保健指導プログラムを設け、睡眠や栄養の専門家による個別カウンセリングを実施しているケースもあります。
これらのツールやサービスを上手に活用することで、夜勤による身体的負担を軽減し、健康的な生活リズムを維持することが可能になります。個人の生活習慣や勤務形態に合わせて、適切なものを選択することが重要です。
夜勤経験者の体験談と工夫


実際に夜勤に従事してきた人の経験は、夜勤と健康の関係を理解する上で貴重な情報源です。



看護師として10年以上交代制勤務を続けている私「ryanta73」の経験と対策を紹介します。
夜勤が体に悪いというのは一概には言えません。確かに始めた頃は体調を崩しやすかった時期もありましたが、自分なりの対策を見つけることで、今では健康診断の数値も安定しています。
私の場合、夜勤前日は少し多めに睡眠をとり、夜勤明けは太陽の光を浴びてから睡眠をとるようにしています。ほかにも色々実践しましたが、最終的にこの方法が1番体調を崩しにくいです。夜勤中の食事は消化の良い軽めのものを選び、緑茶やほうじ茶などカフェインの少ない飲み物を飲むようにしています。



以下に、年代別で実践すべき対策についてまとめています。
年代 | 実践すべき年代別対策 |
---|---|
20代 | 体力維持のための運動習慣確立、規則的な食事 |
30代 | 質の高い睡眠環境への投資、ストレス管理法の習得 |
40代 | 夜勤回数の適正化、栄養バランスの見直し、定期的な健康チェック |
50代以上 | 夜勤と日勤の間の休息日の確保、専門医への相談、サプリメントの活用 |
夜勤経験者に共通するのは、「夜勤自体が悪いのではなく、夜勤に対してどう対応するかが健康を左右する」という認識です。健康を維持するには、個人の工夫と組織的な支援の両面が重要であると強調されています。適切な睡眠管理、栄養摂取、運動習慣、そして精神的なストレス管理が、夜勤を健康的に続けるために必要です。



夜勤は体に悪いという単純な考え方ではなく、「夜勤にどう適応するか」という視点が重要です。
まとめ


結論として、夜勤が体に悪いというのは一概に「嘘」とは言えません。多くの調査結果やデータが示すように、体内時計の乱れやメラトニン分泌の変化によって、長期的には生活習慣病のリスクが高まることは事実です。しかし、その影響には個人差があり、適切な対策を講じることで健康リスクを大幅に軽減できます。
睡眠環境の整備や規則的な食事、適度な運動習慣の維持、そして勤務形態に合わせた生活リズムの工夫が重要です。特に遮光カーテンやアイマスクの活用、体内時計を調整するアプリの利用など、現代のツールを賢く取り入れることで、夜勤と健康の両立は十分可能です。正しい知識と対策で、夜勤を健康的に乗り切りましょう。


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