看護師の職場の人間関係、本当にドロドロで辛いですよね。客観的に見れば仲が良さそうでも、裏ではお互いの悪口のオンパレード。時には、あからさまに人間関係の悪さが出ている職場もあります。

私は看護師以外にも、営業職や介護職を経験してきましたが、看護師の世界が1番ドロドロしています。
この記事では、現役看護師である私が実際に経験した人間関係の苦労と、根本的な原因を解説します。さらに、実体験から編み出した、辛い状況を乗り越えるための具体的な7つの対処法を詳しく紹介します。メンタルを守り、前向きに働くためのヒントや、最終手段としての転職についても徹底解説。
記事を読めば、ドロドロな人間関係に一人で悩むことなく、解決の糸口を見つけられるでしょう。
看護師の人間関係がドロドロになる原因


看護師の人間関係がドロドロになる背景には、看護師特有の労働環境や文化が関係しています。主な原因は以下の4つです。
- 女性が多い職場特有の派閥やいじめ
- 先輩・後輩の厳しい上下関係
- 多忙な医療現場でのストレス
- マウントや他人への嫉妬心
女性が多い職場特有の派閥やいじめ
看護師の職場は、依然として女性が大多数を占める環境です。女性が多い職場では、共感や協調性が重視される一方で、グループ意識が強まり、自然と派閥が形成されやすい傾向があります。
派閥が形成されやすい要因
- 年齢層(ベテラン層 vs 中堅層 vs 若手層)
- 経験年数や役職
- 出身校や過去の勤務先
- 特定の医師や上司との関係性
- 働き方(常勤 vs 非常勤、日勤専従 vs 夜勤専従)
派閥同士で対立が生じると、情報共有ができなかったり、協力体制が築きにくくなったりします。さらに深刻なケースでは、特定の個人やグループに対する陰口、無視、仲間外れといった「いじめ」に発展することも少なくありません。ターゲットにされた看護師は精神的に追い詰められ、仕事への意欲を失い、最悪の場合、休職や退職に至ることもあります。



このような状況は、患者へのケアにも悪影響を及ぼしかねません。チーム内での連携不足は、医療ミスやインシデントのリスクを高める可能性があります。
先輩・後輩の厳しい上下関係
看護師の世界は、人の命を預かるという高い責任感が求められるため、伝統的に厳しい上下関係が存在します。特に新人看護師や経験の浅い看護師は、先輩からの指導を受ける立場にあり、その関係性が過度に厳しくなることも多いです。
厳しすぎる指導の例
- 人格を否定するような暴言
- 他のスタッフや患者さんの前での過度な叱責
- 質問しても「自分で考えて」「見て覚えろ」と突き放す
- わざと必要な情報を教えない、無視する
- プライベートな時間にまで及ぶ過剰な干渉
厳しい上下関係は、プリセプター制度(新人看護師指導制度)やOJT(On-the-Job Training)の現場で多く見られます。指導する側の先輩看護師も、自身の業務負担やストレス、あるいは「自分が新人時代に受けた指導」だからこそ、後輩に対して厳しく当たってしまうのかもしれません。



「自分が新人の頃はもっと辛かった」と話すベテラン看護師も多いですよね。
しかし、強すぎる上下関係は後輩看護師の主体性や学習意欲を削ぎ、心理的な安全性を脅かします。萎縮してしまった結果、報告・連絡・相談が滞り、医療安全上のリスクを高めることにもつながります。
多忙な医療現場でのストレス


仕事の性質上、看護師は常に高いストレスに悩まされています。特に、以下の要因でストレスを受けやすいです。
- 慢性的な人手不足
- 長時間労働
- 不規則な交代勤務
- 緊急入院や急変対応のプレッシャー
- 患者やその家族からのクレーム対応
看護師の仕事は時に命に関わることもあり、心身ともに負担が大きいです。厚生労働省の調査でも、看護職員の長時間労働やメンタルヘルスの問題が指摘されています。



現場の過酷な労働環境が、スタッフの心に余裕をなくさせ、人間関係の悪化を招く大きな要因となります。
ストレスが人間関係に及ぼす影響
高いストレス状態が続くと、人は以下のような心理状態に陥りやすくなります。
- イライラしやすくなる
- 些細なことで感情的になったり、他人の言動に過敏に反応したりする。
- 不寛容になる
- 他人のミスや意見を受け入れられず、批判的・攻撃的な態度をとる。
- コミュニケーション不足
- 忙しさから必要な情報共有や声かけを怠り、誤解や連携ミスを生む。
- 八つ当たり
- 溜まったストレスのはけ口を、立場の弱い同僚や後輩に向けてしまう。
- 共感性の低下
- 他人の気持ちを思いやる余裕がなくなり、冷たい態度をとってしまう。
人員がギリギリの状態で業務を回している職場では、一人のスタッフの欠勤やミスが他のスタッフの負担増に直結しやすくなります。



お互いを責めたり、不満をぶつけ合ったりする状況が生まれ、結果的に人間関係がドロドロになりやすいです。
要因カテゴリ | 具体例 |
---|---|
業務量・質 | 人手不足、長時間労働、急変対応、緊急入院、複雑な処置、記録業務の多さ |
対人関係(患者・家族) | クレーム対応、無理な要求、看取りの精神的負担、コミュニケーションの難しさ |
対人関係(職場) | 上司・同僚との連携不足、いじめ・ハラスメント、価値観の違い |
労働環境 | 交代勤務、夜勤、休憩が取れない、給与・待遇への不満、感染リスク |
責任・プレッシャー | 命を預かる重圧、医療過誤への不安、インシデント報告、リーダー業務 |
マウントや他人への嫉妬心
看護師の職場では、スキルや経験、知識が重視されるため、それを背景とした「マウンティング」が発生することがあります。マウンティングとは、相手よりも自分の方が優位であると示す言動のことです。具体的には、以下のような形で見られます。
- 経験年数やスキルによるマウント
- 「私の若い頃はもっとできた」「そんなことも知らないの?」といった発言。
- 役職によるマウント
- リーダーや主任といった役職者が、下の立場のスタッフに威圧的な態度をとる。
- 知識や学歴によるマウント
- 特定の資格や研修経験をひけらかしたり、専門用語を多用して相手を委縮させたりする。
- プライベートに関するマウント
- 結婚、出産、持ち家などの話題で優位に立とうとする。



特に知識や経験でマウントをとる人は本当に多いと感じます。
同僚の成功や評価に対する「嫉妬心」も、人間関係をドロドロさせる原因です。例えば、特定の看護師が医師や上司から高く評価されたり、昇進したりした場合、それを快く思わない同僚から、陰口を言われたり、協力を得られなくなったりすることがあります。
看護師は専門職であり、自己肯定感や承認欲求が高い人も少なくありません。他者との比較から劣等感を抱いたり、逆に優越感に浸ろうとしたりする心理が働きやすく、マウントや嫉妬といった形で表出してしまいます。こうした負の感情が渦巻く職場は、雰囲気が悪くなり、チームワークを阻害します。
私が経験した看護師の人間関係トラブル5選


ここでは私自身が実際に経験した、忘れられない人間関係のトラブルを5つご紹介します。
- 無視やシカトを受けた新人時代
- ゴシップの的にされた時の体験
- 仕事を教えてもらえないつらさ
- 患者の前での叱責
- 休み希望が通らない不公平感
無視やシカトを受けた新人時代
看護学校を卒業し、期待と不安を胸に急性期病院に入職した私を待ち受けていたのは、想像以上に厳しい現実です。特に新人時代は、一部の先輩看護師からのあからさまな無視やシカトに悩まされました。



重症患者が多いその病棟では、新人は邪魔な存在として扱われているように感じることが多々ありました。
具体的には、以下のような状況が日常的にありました。
状況 | 具体的な行動 | 当時の心境 |
---|---|---|
朝の挨拶・声かけ | こちらから挨拶しても返事をしない、目を合わせない、聞こえないふりをする。 | 自分の存在が認められていないようで、毎朝出勤するのが憂鬱でした。 |
業務に関する質問 | 質問しても「今忙しいから後で」と後回しにされたまま忘れられる、あるいは完全に無視される。慣れたスタッフとは積極的にコミュニケーションを取っている。 | 必要な知識や技術を習得できず、業務に支障が出るのではないかと常に不安でした。孤立感を強く感じました。 |
カンファレンス・申し送り | 特定のスタッフにだけ必要な情報共有がされない、意見を求められない。 | チームの一員として扱われていない人もいると感じ、恐さを覚えました。患者の情報を正確に把握できないリスクも感じていました。 |
こうした状況は、単に「慣れていないから」「新人だから厳しく」というレベルを超えており、精神的に非常に追い詰められました。なぜ自分がこのような扱いを受けなければならないのか、理由も分からず苦しんだ新人時代でした。



新人看護師へのいじめやハラスメントは、早期離職の大きな原因の一つであり、決して許されることではありません。
ゴシップの的にされた時の体験
男性看護師が少ない職場環境では、良くも悪くも目立ってしまいがちです。私の職場でも、些細な言動がすぐに噂となり、広まってしまうことがありました。特に、プライベートに関するゴシップの的にされた経験は、非常に不快で精神的にこたえました。
特定の女性スタッフと業務上の会話をしていただけで「あの二人、付き合っているらしい」「〇〇さん(私)が言い寄っている」といった根も葉もない噂が流れたことがあります。休日の過ごし方や交友関係など、プライベートな情報がどこからか漏れ、尾ひれがついて広まることも。休憩室での何気ない会話が、いつの間にか間違った解釈で伝わっていることもありました。
これらのゴシップは、弁明すればするほど「火消しに必死」と見られ、状況が悪化することも考えられたため、どう対処すべきか非常に悩みました。自分の知らないところで勝手に評価され、人間関係が歪められていく感覚は、大きなストレスです。



閉鎖的な環境になりがちな病棟単位では、一度広まった噂を訂正するのは困難を極めます。
仕事を教えてもらえないつらさ
新人時代だけでなく、多少経験を積んでからも、特定のの先輩看護師から意図的に仕事を教えてもらえない経験をしました。これは、単なる指導不足ではなく、明らかに「育てない」という意図を感じるものでした。



いわゆる「ネグレクト型」のパワーハラスメントに近い状況だったのかもしれません。
質問をしても「それくらい自分で考えて」と冷たく突き放されたり、わざと不機嫌な態度を取られたりすることが続きました。次第に質問すること自体が心理的な負担となり、自己判断で業務を進めざるを得ない状況に追い込まれました。もちろん、看護業務における自己判断は、重大な医療過誤(インシデント)のリスクを高めます。
必要な指導を受けられず、スキルが伸び悩む焦り。そして、周囲から「仕事ができないやつ」「成長しないスタッフ」というレッテルを貼られるのではないかという恐怖。これは、看護師としてのキャリアを考える上で、非常につらい経験でした。厚生労働省も職場におけるパワーハラスメント対策を強化しており、その中には「過小な要求」(能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや、仕事を与えないこと)も含まれています。
患者の前での叱責


看護師の仕事は、常に患者さんの安全と安心を守ることが最優先です。チーム医療を実践する上で、スタッフ間の適切なコミュニケーションと指導は不可欠ですが、その方法と場所をわきまえる必要があります。しかし、私が経験したトラブルの中には、その原則がないがしろにされるような出来事がありました。それは、患者さんの目の前で、先輩看護師が若手に対して大声で叱責したことです。
ある日、若手の看護師が点滴の準備で些細な手順ミスをしてしまった際、先輩看護師から、患者さんがベッドで休んでいるすぐそばで「何やってるの!」「そんなこともできないの!」と、感情的に怒鳴っていました。もちろん、ミスは本人の責任であり、再発防止のための指導は必要です。しかし、患者さんの前という場所、そして人格否定とも取れるような感情的な言葉での叱責は、明らかに不適切でした。
多くの人がいる前で、まるで公開処刑のように叱責されたことで、若手看護師のプライドは深く傷ついたでしょう。



教育的な指導というよりも、感情のはけ口や、他のスタッフへの見せしめのように感じられました。
一部のスタッフの間には「厳しく指導しないと覚えない」というような、誤った指導観があったのかもしれません。しかし、どのような理由があっても、患者さんの前での叱責は、プロフェッショナルとして許される行為ではありません。患者さんに不安を与えるだけでなく、指導を受ける側の精神的なダメージも大きく、信頼関係を損なう行為です。
ドロドロした人間関係が看護師に与える影響


看護師のドロドロした人間関係は、患者や医療現場全体に深刻な悪影響を及ぼします。ここでは、その具体的な影響について詳しく解説します。
- メンタルヘルスの悪化
- 看護ケアの質が低下する
- 退職率が上がる
メンタルヘルスの悪化
看護師が日常的にドロドロとした人間関係のストレスに晒されることは、心身の健康に大きなダメージを与えます。無視や陰口、派閥による仲間外れ、理不尽な叱責、パワハラなどは強い精神的苦痛を与える原因です。
メンタルヘルス悪化のサイン
- 不安感や抑うつ気分
- 不眠や過眠、悪夢
- 食欲不振または過食
- 頭痛、腹痛、めまいなどの身体症状
- 集中力や判断力の低下
- 涙もろくなる、イライラしやすくなるなどの情緒不安定
- 出勤が億劫になる、職場に行くと動悸がする
このような状態が長期化すると、仕事への意欲や関心を失い、心身ともに極度の疲労状態に陥る「バーンアウト(燃え尽き症候群)」を引き起こすリスクが高まります。人間関係のストレスは、このバーンアウトの大きな引き金となり得る要因です。



一度バーンアウトに陥ると回復には時間がかかり、休職や離職を余儀なくされるケースも少なくありません。
看護ケアの質が低下する


職場の人間関係が悪化すると、看護師個人の問題だけでなく、患者さんへ提供される看護ケアの質にも直接的な影響を及ぼします。ドロドロした関係性は、以下のような形でケアの質を低下させる可能性があります。
- 情報共有の不足・遅延
- スタッフ間のコミュニケーションが円滑に行われなくなると、患者さんの状態変化や重要な申し送り事項が正確に伝わらず、必要なケアが遅れたり、誤った対応をしてしまったりするリスクが高まります。特に、特定のスタッフを無視したり、意図的に情報を伝えなかったりする行為は、医療安全の観点からも極めて危険です。
- チームワークの崩壊
- 看護はチームで行うものです。スタッフ間に対立や不信感があると、協力体制が築けず、効率的な業務遂行が妨げられます。緊急時や多忙な状況下での連携不足は、インシデントやアクシデントにつながる可能性を高めます。
- 精神的な余裕の喪失
- 人間関係のストレスで精神的に追い詰められていると、心に余裕がなくなり、患者に対して丁寧で思いやりのある態度で接することが難しくなります。観察力やアセスメント能力が低下し、患者さんの小さな変化を見逃してしまうかもしれません。
- 患者の不安増大
- スタッフ間の険悪な雰囲気や、特定の看護師が他の看護師から冷たく扱われている様子などを、患者さんは敏感に感じ取ります。そのような環境は患者さんに不要な不安やストレスを与え、療養環境として好ましくありません。
- 教育・指導の質の低下
- 先輩看護師が後輩看護師に対して、人間関係のもつれから十分な指導を行わなかったり、逆に過度な叱責を繰り返したりすると、後輩の成長が阻害され、結果的にチーム全体の看護技術レベルの低下につながります。



職場の人間関係の問題は、巡り巡って患者さんの安全や安心を脅かすことになりかねないのです。
退職率が上がる
看護師の離職理由として、人間関係の問題は常に上位に挙げられます。日本看護協会が実施した「2023年 病院看護実態調査」においても、正規雇用看護職員の離職理由の上位に「人間関係」に関連する項目が含まれています。
ドロドロした人間関係による精神的な苦痛が限界に達し、「このままでは自分が壊れてしまう」と感じて退職を決意する看護師は後を絶ちません。特に新人や若手の看護師は、厳しい上下関係や陰湿ないじめに耐えきれず、早期に離職してしまうケースが多く見られます。これは、貴重な人材の損失であると同時に、新人教育にかけたコストや労力の無駄にもつながります。



私も何度も辞めようと考えた時期がありました。日本看護協会の調査によれば、新卒看護師の10人に1人の割合で離職しています。
退職者が出れば、残されたスタッフの業務負担増を招き、さらなるストレスや人間関係の悪化につながるという悪循環を生みます。特定の部署で退職者が相次ぐ場合、その背景には根深い人間関係の問題が潜んでいる可能性が高いと言えるでしょう。高い退職率は、慢性的な人手不足を招き、医療現場全体の疲弊を加速させる大きな要因となります。
看護師がドロドロな人間関係を乗り越えるための7つの対処法


ここでは、私が実際に試行錯誤し、効果を実感した7つの具体的な対処法と、経験から学んだ人間関係構築のポイントを紹介します。
- 感情をコントロールする技術を身につける
- コミュニケーションスキルを磨く
- 信頼できる味方を作る
- プライベートと仕事を切り離す
- 自分の強みを活かした立ち位置を確保する
- 相談できる人を見つける(師長・看護部長・産業医など)
- 最終手段としての部署異動や転職
感情をコントロールする技術を身につける
人間関係のトラブルに直面すると、怒りや悲しみ、不安といったネガティブな感情が湧き上がってくるのは自然なことです。
しかし、感情に振り回されてしまうと冷静な判断ができなくなり、状況をさらに悪化させてしまう可能性があります。感情をコントロールするスキルは、ドロドロした人間関係の中で自分自身を守るための重要な盾です。具体的な方法としては、以下のようなものが挙げられます。
- アンガーマネジメント
- 怒りの感情が湧き上がったときに、衝動的な言動を避け、冷静に対処するためのテクニックです。6秒ルール(怒りを感じてから6秒待つ)、スケールテクニック(怒りの度合いを数値化する)、コーピングマントラ(落ち着くための言葉を唱える)などがあります。
- ストレスコーピング
- ストレスの原因(ストレッサー)に働きかける「問題焦点型コーピング」と、ストレッサーによるストレス反応(気分や体調の変化)に働きかける「情動焦点型コーピング」があります。状況に応じて適切な対処法を選択することが重要です。例えば、問題解決に向けて行動する、気分転換をする、誰かに相談するなどがあります。
- リフレーミング
- 物事の捉え方を変えることで、ネガティブな感情を和らげる方法です。「失敗した」ではなく「学びの機会を得た」、「嫌がらせをされた」ではなく「相手が問題を抱えているのかもしれない」と視点を変えることで、受け止め方が変わります。
- マインドフルネス
- 「今、ここ」の瞬間に意識を集中させることで、過去の後悔や未来への不安から解放され、心の平穏を取り戻す手法です。瞑想や呼吸法などが有効です。



私は仕事中では感情的にならないことを徹底しています。負の感情を出さないだけでも、周りの人とうまく関係を築けるようになりました。
厚生労働省が運営する「こころの耳」などのウェブサイトでも、ストレス対処法に関する情報が提供されているので、参考にしてみると良いでしょう。
コミュニケーションスキルを磨く


人間関係のトラブルの多くは、コミュニケーションの取り方や不足から生じます。多忙でプレッシャーのかかる医療現場では、丁寧なコミュニケーションが後回しにされがちですが、意識的にスキルを磨くことで、不要な摩擦を避け、円滑な連携を築くことができます。磨くべき具体的なスキルは以下のとおりです。
- アサーティブコミュニケーション
- 相手の意見や気持ちを尊重しつつ、自分の意見や要求を正直に、誠実に、対等に伝えるスキルです。攻撃的でも受け身的でもない、バランスの取れた自己表現を目指します。
「私は~と感じています」「私は~してほしいです」といった「I(アイ)メッセージ」を活用するのがポイントです。 - 傾聴力
- 相手の話を注意深く、共感的に聴くスキルです。相手が本当に伝えたいことを理解しようと努める姿勢が、信頼関係の構築につながります。相槌やうなずき、適切な質問などを通じて、相手が話しやすい雰囲気を作りましょう。
- 非言語コミュニケーション
- 言葉だけでなく、表情、声のトーン、視線、態度なども重要なコミュニケーション要素です。穏やかな表情や丁寧な態度を心がけることで、相手に安心感を与え、良好な関係を築きやすくなります。
- 報告・連絡・相談(ホウレンソウ)の徹底
- 医療安全の観点からも基本ですが、人間関係においても重要です。情報を正確かつタイムリーに共有することで、誤解や憶測を防ぎ、チーム内での信頼を高めます。苦手な相手に対しても、業務上必要なホウレンソウは丁寧に行うことが大切です。



私は書籍や研修、日々の実践を通じて向上に努めています。
まずは、自分のコミュニケーションの癖を客観的に見つめ直すことから始めてみましょう。
信頼できる味方を作る
職場で孤立してしまうと、精神的な負担は計り知れません。辛い状況を乗り越えるためには、心の内を打ち明けられたり、困ったときに相談できたりする「味方」の存在が大きな支えとなります。
- 同期
- 同じような経験や悩みを共有しやすく、共感し合える存在です。
- 信頼できる先輩・後輩
- 経験に基づいたアドバイスをくれたり、時には愚痴を聞いてくれたりするかもしれません。
- 他部署のスタッフ
- 部署内のしがらみから離れた視点で話を聞いてくれることがあります。
- 職場外の友人・家族
- 仕事とは全く関係のない視点から、客観的な意見や精神的なサポートを得られます。



味方は、必ずしも同じ部署の人間である必要はありません。私の場合は看護学校時代の仲間です。
信頼できる人が一人でもいるという事実は、困難な状況に立ち向かう勇気を与えてくれます。特定の人とだけ固まるのではなく、幅広い人間関係を築くことも大切です。
派閥に加担したり、一方的に愚痴ばかりをこぼしたりする関係は、新たなトラブルの原因にもなりかねません。お互いを尊重し、支え合えるような、健全な関係性を目指しましょう。
プライベートと仕事を切り離す
職場の人間関係のストレスをプライベートにまで持ち込んでしまうと、心が休まる暇がなくなり、疲弊してしまいます。意識的に仕事とプライベートの境界線を引くことが、メンタルヘルスを維持し、仕事へのエネルギーを再充電するために不可欠です。具体的な方法としては、以下のような工夫があります。
- オン・オフの切り替え儀式を作る
- 例えば、病院を出たら深呼吸をする、好きな音楽を聴く、帰宅後すぐに入浴するなど、自分なりの切り替えスイッチを持つと効果的です。
- 仕事の情報を持ち込まない
- 職場の愚痴を家庭で延々と話したり、業務用の資料を自宅に持ち帰って作業したりするのは避けましょう。
- 連絡手段を分ける
- 可能であれば、仕事用の連絡ツールとプライベートの連絡ツールを使い分け、終業後や休日の仕事関連の通知はオフにするなどの工夫も有効です。
- 没頭できる趣味を持つ
- 仕事のことを忘れられるような、自分が心から楽しめる趣味や活動に時間を使うことで、効果的な気分転換になります。
- 質の高い休息
- 十分な睡眠時間を確保し、バランスの取れた食事を心がけ、リラックスできる時間(入浴、ストレッチなど)を意識的に設けることが大切です。
- 有給休暇の積極的な取得
- 心身のリフレッシュのために、遠慮せずに有給休暇を取得しましょう。



私は職場まで車で30分かかるので、この30分の運転時間でオンオフを切り替えています。
ワークライフバランスを保つことは、長期的に看護師として働き続けるためにも非常に重要です。厚生労働省「働き方・休み方改善ポータルサイト」などで、仕事と生活の調和に関する情報を提供しています。
自分の強みを活かした立ち位置を確保する


職場で「替えがきかない存在」になることは、理不尽な扱いや攻撃から自分を守るための一つの戦略となり得ます。自分の得意なことや専門性を磨き、それを活かせるポジションを築くことで、周囲からの評価や信頼を得やすくなり、自信を持って仕事に取り組めるようになります。
強みの例
- 得意な看護技術や知識
- 例えば、採血やルート確保が正確で早い、特定の疾患領域(循環器、呼吸器など)の知識が深い、急変対応が得意など。
- コミュニケーション能力
- 患者さんや家族との関わりが得意、多職種連携を円滑に進められる、後輩指導が上手いなど。
- 特定のスキル
- PCスキルが高い、資料作成が得意、英語が話せるなど。



自己分析だけでなく、信頼できる同僚や上司に自分の強みについてフィードバックを求めてみるのも良いでしょう。
強みが見つかったら、それを積極的に活かせる場面を探します。
- 専門分野を磨く
- 認定看護師や専門看護師の資格取得を目指す、特定の委員会(感染対策、褥瘡対策、医療安全など)で中心的な役割を担う。
- 得意な業務への積極的な関与
- 例えば、新人指導が得意なら教育担当に立候補する、PCスキルが高いなら業務改善プロジェクトに参加するなど。
- 勉強会や研修での発表
- 自分の知識や経験を共有することで、専門性をアピールできます。
自分の強みを認識し、それを活かして貢献することで、職場での存在価値が高まり、理不尽な人間関係のターゲットになりにくくなる可能性があります。
相談できる人を見つける(師長・看護部長・産業医など)
自分一人で抱えきれない問題や、ハラスメントに該当するような深刻な状況の場合は、信頼できる相手に相談することが重要です。相談することで客観的なアドバイスを得られたり、具体的な解決策が見つかったり、あるいは組織として正式な対応を求めることができます。
相談相手としては、以下のような選択肢が考えられます。
相談相手 | 主な役割・特徴 | 期待できる対応 |
---|---|---|
師長・主任 | 直属の上司。部署内の状況を最もよく把握している。 | 部署内での指導、注意、業務調整、配置転換の検討など。 |
看護部長 | 看護部門の最高責任者。病院全体の視点を持つ。 | 部署異動の判断、組織的な問題解決、師長への指導など。 |
人事部・総務部 | 労務管理担当部署。ハラスメント相談窓口が設置されている場合も。 | 事実調査、加害者への処分、労働環境の改善策検討など。 |
産業医・カウンセラー | メンタルヘルスの専門家。守秘義務がある。 | 精神的なサポート、医学的・心理的な助言、必要に応じた休職の診断など。 |
労働組合 | 労働者の権利を守る組織(組合がある場合)。 | 職場環境改善の交渉、団体交渉、法的サポートなど。 |
外部相談窓口 | 都道府県労働局、労働基準監督署、法テラスなど。 | 法的な助言、あっせん制度の利用、ハラスメントに関する情報提供など。 |



相談する際には、以下の点を心がけるとスムーズです。
- 事実を整理する
- いつ、どこで、誰が、何を、どのように、といった5W1Hを明確にして、具体的な状況を説明できるように準備します。可能であれば、日時や内容を記録したメモを用意しましょう。
- 冷静に伝える
- 感情的になりすぎず、客観的な事実に基づいて話すように努めます。
- 希望を伝える
- 相談によって、具体的にどうしてほしいのか(例:注意してほしい、配置を変えてほしい、謝罪してほしいなど)を明確に伝えます。
- 記録を残す
- 誰に、いつ、何を相談したのかを記録しておくと、後々役立つ場合があります。
一人で悩まず、信頼できる窓口にアクセスすることが、解決への第一歩です。
最終手段としての部署異動や転職


これまで紹介した対処法を試しても状況が改善しない、あるいは心身の健康が著しく損なわれている場合は、環境そのものを変える、つまり部署異動や転職を検討することも有効な選択肢です。



これは決して「逃げ」ではなく、自分自身を守り、より良いキャリアを築くための前向きな決断となります。
部署異動
同じ病院内での異動であれば、給与や福利厚生などの条件を維持したまま、人間関係をリセットできる可能性があります。新しい部署で新たな知識やスキルを習得する機会にもなります。
ただし、異動希望が必ずしも通るとは限らず、異動先でまた別の問題に直面する可能性もゼロではありません。異動を希望する場合は、師長や看護部長に相談し、異動したい理由や希望する部署を具体的に伝えましょう。
転職
現在の職場環境に根本的な問題があると感じる場合や、より良い労働条件、キャリアアップを目指す場合には、転職が有効な手段です。新しい環境で心機一転、スタートを切ることができます。
転職を考える際は、まず自己分析を行い、自分がどのような働き方をしたいのか、どのような職場環境を求めているのかを明確にすることが大切です。その上で、病院のウェブサイトや口コミサイト、そして後述する転職エージェントなどを活用して情報収集を行いましょう。
部署異動や転職は大きな決断ですが、自分の心と体の健康を守ることが最優先です。限界を感じる前に、選択肢の一つとして検討してみてください。
経験から学んだ人間関係のポイント
ドロドロした人間関係を経験することは、非常につらく、時には深い挫折感を味わうこともあります。しかし、その経験から学びを得て、今後の人間関係構築に活かすことも可能です。



私がこれまでの経験から学んだ、より良い人間関係を築くためのポイントをいくつかご紹介します。
- 完璧を目指さない
- すべての人に好かれようとしたり、常に完璧な対応をしようとしたりすると、自分が疲弊してしまいます。ある程度「仕方ない」と割り切ることも大切です。
- 適切な距離感を保つ
- 誰とでも親密になろうとするのではなく、相手や状況に応じて適切な距離感を保つことが、トラブルを避ける上で重要です。プライベートに踏み込みすぎない、仕事上の関係と割り切るなどの意識も時には必要です。
- 問題が起きたら振り返る
- トラブルが起きた際、感情的に反応するだけでなく、なぜそのような状況になったのか、自分の言動に改善点はなかったかなどを冷静に振り返ることで、次に活かすことができます。
- 自己肯定感を保つ工夫
- 他人の評価に一喜一憂せず、自分自身の価値を認めることが大切です。仕事以外での成功体験や、自分を褒める習慣などが、自己肯定感を支えてくれます。
- 「合わない人」はいると認識する
- 残念ながら、どうしても相性が合わない人は存在します。すべての人と良好な関係を築こうと無理をするのではなく、「そういう人もいる」と認識し、必要最低限の関わりにとどめる勇気も必要です。
これらの学びは、すぐに実践できるものばかりではないかもしれません。しかし、少しずつ意識することで、人間関係におけるストレス耐性を高め、よりしなやかに対応できるようになるはずです。



「辛い経験も自分を成長させる糧」と捉える視点を持つことが、前向きに進む力となります。
まとめ


看護師の職場の人間関係は、女性が多い環境や過重なストレスなどが原因で「ドロドロ」しやすい傾向にあります。放置すれば心身の不調や看護の質の低下、離職に繋がる深刻な問題です。
しかし、感情のコントロールやコミュニケーション改善、味方作りといった対処法で乗り越えられる可能性もあります。どうしても辛い場合は、自分を守るために部署異動や信頼できる転職エージェントを活用した転職も有効な選択肢です。一人で抱え込まず、解決策を探しましょう。



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