「今の職場よりも年収を上げたい」
「夜勤の回数や休日の希望を通したい」
そう考えて転職活動を始めても、いざ面接や内定の場面になると、「条件交渉をして印象が悪くなったらどうしよう」「内定取り消しになるのでは」と不安になり、結局希望を言い出せない人も多いでしょう。
結論からいえば、看護師の転職において条件交渉は十分に可能です。
本記事では、実際に転職エージェントを活用し、病院から有料老人ホームへの転職で年収150万円アップを実現した筆者の実体験をもとに、条件交渉を成功させるための具体的なノウハウを徹底解説します。記事を読めば、リスクを最小限に抑えながら、希望条件を最大限に叶えるための正しい手順が分かります。
ryanta73やってはいけないNG行動や、交渉しやすい条件・難しい条件の違いについても触れています。
そもそも看護師の転職で条件交渉は可能なのか


転職活動において、多くの看護師が提示された条件をそのまま受け入れてしまいがちです。条件交渉は自身のスキルや経験に見合った待遇を求めることは正当な権利であり、決してマナー違反ではありません。
ここでは、なぜ看護師の条件交渉が可能なのか、具体的にどのような項目であれば交渉の余地があるのかを解説します。
- 結論:適切な準備とタイミングなら交渉はできる
- 看護師が交渉しやすい条件と難しい条件
- 筆者が年収150万円アップを勝ち取った体験談
結論:適切な準備とタイミングなら交渉はできる
看護師の転職において条件交渉は十分に可能です。むしろ、即戦力となる経験豊富な看護師であればあるほど、採用側も「多少条件を譲歩してでも入職してほしい」と考える傾向にあります。
看護業界は依然として慢性的な人材不足が続いており、いわゆる「売り手市場」です。病院や施設側は、採用コストをかけてでも優秀な人材を確保したいと考えています。そのため、以下の3つのポイントを押さえた適切なアプローチであれば、交渉はスムーズに進みます。
- 根拠のある提示
- 「なぜその給与が必要なのか」をこれまでの経験やスキル、前職の給与をベースに説明できること。
- 適切なタイミング
- 面接の冒頭ではなく、内定が出る直前や内定後の条件提示面談など、相手が「あなたを採用したい」と決めた段階で行うこと。
- 謙虚な姿勢
- 「給料を上げろ」と要求するのではなく、「御社で長く貢献したいからこそ、生活の基盤となる条件を相談させてほしい」というスタンスを見せること。
ただし、すべての条件が通るわけではありません。相手の事情も考慮した上で、落とし所を見つける交渉術が求められます。
看護師が交渉しやすい条件と難しい条件
条件交渉を成功させるためには、「変えられるもの」と「変えられないもの」を見極めることも重要です。法人全体の規定で決まっているものは交渉が難しく、個人の評価や裁量で決まる部分は交渉の余地があります。
以下に、一般的な医療機関・介護施設における交渉の難易度をまとめました。
| 交渉項目 | 交渉のしやすさ | 理由と対策 |
| 入職時期 | 交渉しやすい (4.5 / 5.0) | 現職の退職交渉や引き継ぎ状況に合わせて調整がつきやすい項目です。「〇月からなら万全の状態で勤務開始できます」とポジティブに伝えましょう。 |
| 基本給・手当 (経験加算) | 交渉しやすい (3 / 5.0) | 給与テーブルが決まっていても、「経験年数のカウント方法」や「調整手当」で上乗せできるケースがあります。特定のスキル(認定看護師など)やリーダー経験が評価対象になります。 |
| 夜勤の回数 | 交渉しやすい (3 / 5.0) | 「夜勤多め(専従)」や「月2回まで」など、現場のシフト状況とマッチすれば希望が通りやすい項目です。特に夜勤を多く入れる場合は年収アップの材料になります。 |
| 賞与(ボーナス)の支給月数 | 交渉が難しい (1 / 5.0) | 「基本給の〇ヶ月分」という規定は全職員共通であることが多く、個人だけ特別扱いすることは労働組合や公平性の観点から困難です。 |
| 所定休日数・福利厚生 | 交渉が難しい (1 / 5.0) | 4週8休などの休日規定や、退職金制度、住宅手当の支給要件などは就業規則で定められているため、個別の変更はほぼ不可能です。 |
制度そのものを変える交渉は困難ですが、「あなたの経験をどう評価して給与に反映させるか」という運用面での交渉は十分に余地があります。
筆者が年収150万円アップを勝ち取った体験談
実際に私が転職活動を行い、年収を大幅にアップさせた際の実例を紹介します。私は元々、急性期病院の病棟看護師として勤務していましたが、激務と給与のバランスに悩み、転職を決意しました。
結果として、年収470万円から620万円へと、150万円の年収アップを実現しました。



この成功には、明確な戦略がありました。以下で解説します。
1. 業界の給与水準が高い「有料老人ホーム」へのキャリアチェンジ
まず、給与原資が高い業態を選びました。病院は診療報酬改定の影響を受けやすいですが、大手企業が運営する有料老人ホームは、施設長候補やリーダー枠での採用において、病院以上の高待遇を用意していることがあります。



もともと介護士をしていたこともあり、いつかは福祉業界に行きたいとは思っていました。
2. 転職エージェントを「交渉の代理人」として徹底活用
自分自身で「年収を上げてください」と言うのは心理的ハードルが高いため、私は転職エージェントを利用しました。担当者に伝えたのは以下の点です。
- 介護福祉士も所有している
- 病院でのリーダー経験があるため、即戦力としてマネジメントにも関われる
- 希望額(年収600万円)に届かないなら、現職に留まることも考えている
この2点をエージェント経由で法人側に伝えてもらうことで、私の市場価値を客観的に証明し、「この金額を出してでも採用したい人材」と認識させることができました。
3. 提示された年収の内訳を精査して再交渉
最初の提示額は580万円でした。しかし、エージェントを通じて「オンコール対応の手当」や「入職後の昇給モデル」について細かく確認し、最終的に調整手当を含める形で、目標の600万円ラインに乗せることができました。
この経験から言えるのは、「交渉とは、単なる要求ではなく、自分の価値を正しく相手に理解してもらうプレゼンテーションである」ということです。個人では難しいこの調整も、プロの力を借りることで成功率は格段に上がります。
看護師が転職の条件交渉で失敗しないために絶対にやるべきこと


転職活動において、条件交渉は「内定が出てから考えるもの」と思ってしまいがちです。
実は、その考え方こそが交渉失敗の最大の原因です。私が年収150万円アップを実現できたのは、応募前から綿密な準備を行い、交渉の土台を作っていたからに他なりません。
条件交渉は、単なる「要求」ではなく、病院側と応募者の「合意形成」のプロセスです。こちらの要望を通すためには、相手が納得できるだけの材料と、譲れないラインの明確化が不可欠です。
ここでは、交渉のテーブルに着く前に必ずやっておくべき3つの準備について解説します。
- 希望条件リストの作成と優先順位付け
- 応募先の給与テーブルや待遇の事前調査
- 自分の市場価値を証明する材料を集める
希望条件リストの作成と優先順位付け
まず最初に行うべきは、自分が転職で何を叶えたいのかを可視化することです。
「給料も高く、休みも多く、残業はない」という条件は理想ですが、すべての条件を完璧に満たす求人は現実にはほとんど存在しません。そのため、条件に優先順位をつける「MUST(絶対に譲れない条件)」と「WANT(できれば叶えたい条件)」の仕分け作業が重要になります。
交渉の際、すべての条件を要求すると「扱いにくい人材」と判断され、内定取り消しや不採用のリスクが高まります。「ここは譲るけれど、ここは譲れない」という交渉カードを持っておくことで、着地点を見出しやすくなります。
MUST(必須条件)
転職の軸となる条件です。妥協すると転職後に後悔する可能性もあります。このラインを下回るなら辞退する覚悟を持つことも必要です。
- 年収500万円以上(生活水準維持のため)
- 夜勤なし、または月2回以内(家庭の事情)
- 通勤時間30分以内(保育園の送迎のため)
WANT(希望条件)
あれば嬉しいが、他の条件次第では妥協できる項目です。交渉時の「譲歩カード」として使用するのもアリです。
- 年間休日120日以上(110日でも可)
- 賞与4.0ヶ月以上(月給が高ければ3.0ヶ月でも可)
- 電子カルテ導入済み
このようにリスト化しておくことで、エージェントや採用担当者に希望を伝える際もブレがなくなり、「この人は自分のキャリアプランをしっかり考えている」という好印象を与えることができます。
応募先の給与テーブルや待遇の事前調査
次に重要なのが、敵を知ること、つまり応募先の「相場」を知ることです。
病院や施設には、年齢や経験年数に応じた「給与規定(給与テーブル)」が存在します。例えば、規定で「30代看護師の上限年収は500万円」と決まっている病院に対し、600万円を要求しても通ることはまずありません。
無謀な交渉をして心証を悪くしないために、以下の項目を事前にリサーチしましょう。
- 基本給の算出方法
- 経験年数がどう加算されるか、本給と職能給の内訳など
- 手当の種類と金額
- 夜勤手当、住宅手当、資格手当などの相場
- 賞与の実績
- 基本給の何ヶ月分か、基本給以外の手当も算定基礎に含まれるか
- モデル年収
- 自分と同じ年齢・経験年数の看護師がどの程度もらっているか



これらの情報は、求人票(募集要項)だけでは読み取れないことが多いです。
詳細な内部情報を得るためには、看護師専門の転職サイトやエージェントを通じて確認するか、口コミサイトなどの情報を参考に、ある程度の予測を立てておく必要があります。
また、公的な賃金統計を確認し、世間一般の相場と比較してその病院が高いか安いかを把握しておくことも有効です。客観的なデータは交渉の強力な武器になります。
自分の市場価値を証明する材料を集める
「給料を上げてほしい」と伝えるだけでは、病院側にとってコストが増えるだけでメリットがありません。
条件交渉を成功させるためには、「私を採用すれば、病院側にこれだけのメリットがある(だから高い給料を払う価値がある)」と納得させる必要があります。
能力を証明するために、自分のスキルや経験を「数値」や「具体的な成果」として棚卸ししましょう。これを職務経歴書に反映させるだけでなく、面接や交渉の場で口頭で伝えられるように準備します。
専門スキル・資格
- 認定看護師・専門看護師資格の有無
- 特定行為研修の修了
- ICU、オペ室、透析など専門性の高い部署での経験年数
マネジメント経験
- 看護師長、主任、リーダー業務の経験年数
- プリセプター(新人指導)の経験回数
- 委員会活動や業務改善プロジェクトでのリーダーシップ実績
即戦力・定着性
- 前職での勤続年数(長く働けることの証明)
- 幅広い診療科での経験(多角的な視点)
- 急な欠員時の対応力や柔軟なシフト協力の姿勢
特に、「即戦力として教育コストがかからない」「リーダー経験があり組織運営に貢献できる」という点は、病院側にとって大きな加点要素となります。



私の場合、前職での「業務改善による残業時間削減の実績」と「プリセプター経験」を具体的にアピールしたことが、基本給のランクアップに繋がりました。
効果的な自己分析の具体的な方法については、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:看護師の転職に必須の自己分析とは?実体験から学んだ8つのステップを解説
これで完璧!看護師の転職条件交渉 伝え方の例文集


看護師が転職活動において条件交渉を行う際、最も重要なのは「伝え方」です。同じ希望条件であっても、言葉の選び方一つで採用担当者に与える印象は大きく変わります。
ここでは、給与、休日、勤務形態など、項目別にそのまま使える具体的な交渉例文を紹介します。自身の状況に合わせてアレンジして活用してください。
- 給与(年収)交渉で使える切り出し方と伝え方
- 休日に関する希望を伝える際の例文
- 勤務形態(日勤常勤・夜勤回数など)の交渉例文
- 面接の場で希望を伝える場合の言い方
給与(年収)交渉で使える切り出し方と伝え方
給与交渉は最もハードルが高い項目ですが、曖昧にせず明確な根拠を持って伝えることが重要です。「生活が苦しいから上げてほしい」といった個人的な事情ではなく、「経験・スキル」や「前職の給与水準」をベースに話を進めます。
前職の給与水準を維持したい場合
転職によって年収が下がることを防ぎたい場合は、源泉徴収票などの客観的な事実を基に交渉します。
【例文】
「大変恐縮なお話ではございますが、給与条件についてご相談させていただけますでしょうか。前職では、基本給と各種手当を含め、年収〇〇万円をいただいておりました。生活水準の維持という観点からも、可能であれば同等の条件を希望したく存じます。もちろん、貴院の規定に従いますが、ご考慮いただけますと幸いです。」
経験やスキルをアピールして年収アップを狙う場合
認定看護師の資格や、リーダー経験、特定の診療科での長い経験がある場合は、即戦力としての価値を売り込みます。
【例文】
「私はこれまで〇年間、循環器内科の集中治療室にて勤務し、呼吸器管理や急変対応のスキルを磨いてまいりました。また、直近3年間はプリセプターとして新人教育にも携わっております。これらの経験を活かし、貴院でも即戦力として貢献したいと考えております。つきましては、私の経験とスキルを評価いただき、年収〇〇万円程度をご検討いただくことは可能でしょうか。」
以下に、給与交渉におけるOKな伝え方とNGな伝え方の比較をまとめました。
| 比較項目 | OKな伝え方(印象が良い) | NGな伝え方(印象が悪い) |
| 根拠の提示 | 「前職の実績や保有資格に基づき…」 | 「相場がこれくらいだと思うので…」 |
| スタンス | 「貴院に貢献することを前提に…」 | 「この額をくれないと入職できません」 |
| 表現方法 | 「ご検討いただくことは可能でしょうか」 | 「〇〇万円欲しいです」 |
休日に関する希望を伝える際の例文
休日や有給休暇の取得に関する交渉は、「働く意欲はあるが、長く勤めるために必要な条件である」というニュアンスを含ませることが大切です。単に「休みが欲しい」と伝えると、労働意欲が低いと誤解されるリスクがあります。
固定の休み(土日祝など)を希望する場合
子育てや介護、または資格取得のための通学など、正当な理由がある場合は正直に伝えた方が、入職後のトラブルを防げます。
【例文:子育て中の場合】
「現在、小学生の子供がおり、土曜日は夫が仕事のため私が面倒を見る必要があります。そのため、可能な範囲で構いませんので、土曜日の勤務を免除、あるいは回数を調整していただくことは可能でしょうか。その分、平日の勤務や祝日の出勤などで調整し、業務に支障が出ないよう努めます。」
有給休暇の取得率や長期休暇について確認したい場合
直接的に「有給は取れますか?」と聞くのではなく、職場の協力体制を確認する形で質問します。
【例文】
「長く健康に働き続けたいと考えておりますので、リフレッシュのための休暇も大切にしたいと思っております。貴院のスタッフの皆様は、夏季休暇や有給休暇をどのように取得されていますでしょうか。また、チーム内で互いに休みを取り合うような協力体制はございますでしょうか。」
勤務形態(日勤常勤・夜勤回数など)の交渉例文
看護師の働き方において、夜勤の有無や回数は生活リズムに直結する重要な要素です。募集要項と異なる希望を出す場合は、代替案(トレードオフ)を提示すると交渉がスムーズに進みます。
夜勤回数を制限したい場合
体力的な問題や家庭の事情で夜勤に入れない、あるいは回数を減らしたい場合の例文です。
【例文】
「前職では月6回の夜勤をこなしておりましたが、体調管理の観点から、貴院では月3回~4回程度に調整していただくことは可能でしょうか。夜勤が少ない分、日勤帯での委員会活動や係の仕事などは積極的に引き受け、チームに貢献したいと考えております。」
日勤のみ(日勤常勤)を希望する場合
病棟勤務などで夜勤が前提となっている場合でも、事情によっては日勤のみで採用されるケースがあります。
【例文】
「家庭の事情により、夜間の勤務が難しい状況です。そのため、日勤常勤での勤務を希望しております。早出や遅出のシフトには柔軟に対応できますし、土日祝日の日勤も可能です。このような勤務形態で選考の対象としていただけますでしょうか。」
面接の場で希望を伝える場合の言い方
面接中に条件交渉を行う場合は、タイミングが非常に重要です。冒頭から条件の話ばかりするのは避け、仕事への熱意を伝えた後、面接の終盤や「何か質問はありますか(逆質問)」と聞かれた際に切り出します。
逆質問のタイミングで切り出すフレーズ
面接官から「最後に何か質問はありますか?」と聞かれた時が、自然に条件を確認するベストなタイミングです。
【例文】
「本日の面接を通じ、貴院の『患者様に寄り添う看護』という理念に深く共感し、ぜひ一員として働きたいという気持ちが強くなりました。
そこで、もしご縁をいただけた場合の具体的な働き方について確認させていただきたいのですが、残業時間の実績や、時間外手当の算定方法について教えていただけますでしょうか。長く勤務する上で、生活の基盤もしっかり整えたいと考えております。」
絶対に譲れない条件がある場合の確認方法
条件が合わなければ辞退する覚悟がある「必須条件」については、選考の早い段階(面接の中盤~終盤)で齟齬がないか確認しておくのがマナーです。
【例文】
「面接の場でお話しにくいことではございますが、入職後のミスマッチを防ぐためにお伺いさせてください。現在、保育園の送迎の関係で、どうしても18時には退社する必要があります。募集要項には17時30分定時とありましたが、実際の現場での残業状況を含め、18時退社は現実的に可能でしょうか。」
これらの例文をそのまま使うだけでなく、自分の言葉で「貴院で働きたい」という熱意とセットで伝えることが、交渉成功への近道です。
転職活動で条件交渉を切り出すベストなタイミングはいつ?


看護師の転職活動において、条件交渉の成否を分ける大きな要因になるのが「タイミング」です。年収アップや待遇改善を勝ち取るためには、採用側の心理状況を理解し、交渉のカードを切るべき瞬間を見極める必要があります。ここでは、交渉を成功率を最大化するための具体的なタイミングと、その理由について解説します。
- 基本は「内定後」が鉄則である理由
- 面接中に交渉の布石を打つテクニック
- 複数の内定で交渉を有利に進める方法
基本は「内定後」が鉄則である理由
結論からいうと、給与額や手当、入職日といった具体的な条件交渉を行うベストなタイミングは、「内定が出た後(内定通知を受け取った直後)」から「内定承諾をする前」の間です。



なぜ面接中ではなく内定後が鉄則なのか、その理由は採用担当者や病院側の心理状態の変化にあります。
- 面接中・選考中
- 交渉のリスクは極めて高いです。選考中は「この人は自院に合うか?」「採用すべきか?」を見定めている段階。「お金にうるさい」「権利主張が強い」と判断され、不採用になる可能性が高いでしょう。
- 内定後
- 交渉のリスクは低いです。内定は「ぜひ来てほしい」「他院に行かれては困る」と、確保したい心理が働いている段階。すでに能力や人柄を評価しているため、多少の条件調整には応じようとする姿勢があります。
内定が出たということは、病院側が応募者を「必要な人材」として認めた証拠です。この時点では、立場が「選ばれる側(求職者)」から「選ぶ側(対等な交渉者)」へとシフトします。病院側も、一度内定を出した人材を条件の不一致だけで逃したくないため、要望に耳を傾けてくれる可能性が格段に高まります。
また、内定時には必ず「労働条件通知書」や「内定通知書」といった書面で、具体的な給与や待遇が提示されます。この書面に記載された確定条件をもとに、「提示いただいた基本給ですが、前職の経験を考慮して◯◯円まで検討いただけないでしょうか」と具体的に切り出すのが最もスマートで効果的な方法です。
面接中に交渉の布石を打つテクニック
「交渉は内定後」が鉄則ですが、面接中に何もしてはいけないわけではありません。むしろ、面接の段階で「希望条件の種まき(布石)」をしておくことで、内定後の交渉がスムーズになります。
面接中に意識すべきは、「交渉」ではなく「事実の伝達と確認」に徹することです。
- 現在の年収(事実)を正確に伝える
- 「現在の年収は夜勤手当込みで◯◯万円です」と源泉徴収票などの根拠をもとに伝えておきます。「生活水準を維持したい」というニュアンスを含めることで、極端に低い提示額を防ぐことができます。
- 評価制度の確認をする
- 「私と同様の経験年数(◯年)の方は、大体どのくらいの給与レンジになるのでしょうか?」と質問します。これは交渉ではなく質問なので、悪印象を与えずに相手の相場感を探ることができます。
このように、面接中は「お金への執着」を見せず、「長く働くために条件を確認しておきたい」という誠実な姿勢で情報を出し入れすることが、最終的な条件アップへの重要な布石となります。
複数の内定で交渉を有利に進める方法
もし複数の病院や施設から内定をもらっている場合、それは最強の交渉カードになります。他社の評価(オファー金額)は、応募者の市場価値を客観的に証明する材料になるからです。
本命の病院(A病院)の提示額が、滑り止めの病院(B病院)より低かった場合、以下のように相談を持ちかけることができます。
【例】
「A病院の理念や業務内容に大変魅力を感じており、ぜひ入職したいと考えています。ただ、同時に内定をいただいたB病院からは年収◯◯万円の提示をいただいており、生活面を考えると迷いが生じています。もし、A病院で◯◯万円程度まで考慮いただけるのであれば、即決で入職させていただきたいのですが、ご検討いただくことは可能でしょうか?」
この手法のポイントは、以下の3点です。
- 入職意欲が高いことを先に伝える(「御院が第一志望」と明言する)
- 他社の具体的な提示額を出す(嘘は絶対につかない)
- 条件がクリアされれば「即決する」と約束する
採用担当者にとって最も避けたいのは、「条件を上げたのに結局辞退されること」です。「条件さえ合えば必ず来てくれる」という確約があれば、稟議を通しやすくなり、年収アップの成功率は飛躍的に高まります。
筆者も実践!看護師転職エージェントを最大限に活用した条件交渉術


看護師が個人で病院や施設に対して条件交渉を行うのは、非常に難易度が高いです。私自身が年収150万円アップを実現できた最大の要因は、間違いなく「転職エージェントを徹底的に使い倒したこと」にあります。
ここでは、エージェントを介した交渉のメリットと、担当者を本気にさせるための具体的な連携方法について解説します。
- エージェントに交渉を代行してもらうメリット
- 担当者に希望をうまく伝えて味方につけるコツ
エージェントに交渉を代行してもらうメリット
転職エージェント経由で交渉を行う最大のメリットは、「採用担当者への心象を悪くせずに、言いにくい希望を伝えられる」という点に尽きます。直接応募の場合、面接の場で「給料を上げてほしい」「残業はできない」と主張すると、「権利ばかり主張する扱いづらい看護師」というレッテルを貼られるリスクがあります。
転職エージェントを介在させることで、クッション役となってもらい、角を立てずにこちらの要望を論理的に伝えてもらうことが可能です。以下に、自力での交渉とエージェント経由での交渉の違いを整理しました。
| 比較項目 | 自力で交渉する場合 | 転職エージェントに依頼する場合 |
| 給与交渉のしやすさ | 非常に難しい(金銭への執着を疑われる) | 容易(相場に基づき客観的に交渉可能) |
| 採用担当者の心象 | 悪化するリスクが高い | 直接的なマイナスイメージを持たれにくい |
| 交渉のタイミング | 内定後など限られた場面のみ | 応募前から内定後まで調整可能 |
| 裏情報の入手 | 不可(求人票の情報のみ) | 可能(前任者の退職理由や実際の残業時間など) |
また、エージェントは「その病院が今どれくらい看護師を欲しがっているか」という内部事情を把握しています。「急募案件だから多少年収を上げてでも採用したいはず」などといった読みができるため、強気の交渉が可能かどうかの判断も的確に行ってくれます。
担当者に希望をうまく伝えて味方につけるコツ
転職エージェントを活用する上で重要なのは、担当のキャリアアドバイザーを「自分の熱烈な応援者」にすることです。担当者は同時に何十人もの求職者を抱えています。その中で優先的に動いてもらい、病院側に熱意を持って交渉してもらうためには、信頼関係の構築が欠かせません。
私が実際に実践し、効果的だった「担当者を味方につけるポイント」は以下の通りです。
1. ネガティブな情報も含めて「本音」をすべて話す
「実は前の職場を早期退職している」「家庭の事情で夜勤ができない曜日がある」といったマイナス要因を隠してはいけません。後から発覚すると信頼を失うだけでなく、交渉の前提が崩れてしまいます。すべてをさらけ出すことで、担当者は「この人のために守ってあげよう」という心理になり、病院側へのフォロー策を事前に考えてくれます。
2. 交渉の「最低ライン」と「希望ライン」を明確に伝える
単に「給料を上げてください」と伝えるだけでは、担当者も動きようがありません。以下のように具体的な数字と根拠を提示しましょう。
- 最低ライン:「現在の年収470万円は絶対に維持したい。これを下回るなら転職しない」
- 希望ライン:「経験年数10年を考慮し、年収600万円を目指したい」
このように幅を持たせることで、担当者は病院側に対して「470万円は必須ですが、600万円出していただければ即決してくれる優秀な人材です」といった落としどころを探る交渉がしやすくなります。
3. レスポンスの早さで「転職意欲」を示す
担当者からの連絡には即レスを心がけましょう。連絡が早い求職者は「転職意欲が高い=売上につながる可能性が高い」と判断され、優先順位が上がります。私が年収アップに成功した際も、求人紹介から面接調整までのやり取りを即日行うことで、担当者が病院側に「非常に意欲的な方です」とプッシュしてくれる材料になりました。



エージェントはあくまでビジネスパートナーです。彼らのメリット(成約)と自分のメリット(好条件での転職)が合致するように振る舞うことが、最強の交渉術となります。
条件交渉に強いおすすめの看護師転職エージェント3選


数ある転職サイトの中で、どこが本当に「交渉」に強いのかを見極めるのは難しいものです。ここでは、実際に多くの看護師が年収アップや待遇改善を実現しており、筆者自身も利用して成果を出した信頼できるエージェントを3つ厳選して紹介します。
関連記事:【看護師転職エージェントおすすめ7選】年収150万円アップ&働きやすさを実現した私の成功体験も紹介!
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レバウェル看護(旧看護のお仕事)


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レバウェル看護では、実際にその病院で働いている看護師へのヒアリングや、年間数千回に及ぶ職場訪問を通じて、「リアルな職場情報」を収集しています。「残業の実態」や「有給の取りやすさ」、「ママさんナースの割合」など、求人票には載らない情報を元に、入職後のミスマッチを防ぐための条件すり合わせを行ってくれます。
また、LINEでのやり取りがメインで相談しやすく、担当者のレスポンスが早いのも特徴です。面接同行のサポートも手厚いため、面接の場で自分からは言い出しにくい条件も、担当者が間に入ってうまく調整してくれるでしょう。


看護師ワーカー
| 運営会社 | 株式会社トライトキャリア |
| 求人数 | 約46,800件 |
| 交渉の強み | 病院側へのプッシュ型交渉、高額給与案件の調整力 |
| おすすめな人 | スピーディーに転職を決めたい人 具体的な希望年収額が明確な人 |
「看護師ワーカー(旧医療ワーカー)」は、トライトグループが運営する、スピード感のある対応と熱心なサポートが特徴の転職サイトです。特に「急ぎの転職」や「高額求人の獲得」における交渉力には定評があります。
看護師ワーカーのエージェントは、病院側に対して積極的にアプローチを行う姿勢が強く、求職者の売り込みに熱心です。「夜勤専従でこれだけ稼ぎたい」「日勤のみで年収○○万円以上欲しい」といった明確な希望がある場合、既存の求人枠に当てはめるだけでなく、病院側に条件を打診して新しい枠を作り出すような交渉をしてくれることもあります。
また、応援看護師(トラベルナース)などの高収入案件も豊富に取り扱っているため、短期間でガッツリ稼ぎたいという場合の条件交渉にも最適です。
知っておきたい!看護師転職における条件交渉のNG行動と注意点


看護師の転職において、より良い待遇を求めるための条件交渉は正当な権利です。しかし、交渉の進め方や態度を誤ると、採用担当者の心証を損ね、「扱いにくい人材」と判断されてしまうリスクがあります。最悪の場合、せっかくの内定が白紙に戻ってしまうことさえあり得ます。
ここでは、交渉を成功させるために絶対に避けるべきNG行動と、必ず守るべき注意点を解説します。
- 感情的・高圧的な態度は絶対NG
- 根拠のない希望額を伝えることのリスク
- 内定承諾後に交渉を始めるのはマナー違反
- 自分の都合ばかりを主張しすぎる
感情的・高圧的な態度は絶対NG
条件交渉の場で最も避けるべきなのが、感情的になったり、上から目線で高圧的な態度をとったりすることです。看護師の仕事は医師や他のコメディカル、患者様とのチームワークが基本です。そのため、採用担当者はスキルだけでなく「一緒に働きたいと思える人柄か」「協調性があるか」を厳しくチェックしています。
「こちらの条件を飲まなければ入職しない」といった脅迫めいた態度は、即座に不採用の判断材料となりかねません。あくまで「相談」というスタンスを崩さず、謙虚な姿勢で臨むことが重要です。
「他院はもっと出してくれた」という比較の仕方
複数の病院から内定をもらっている場合、他院の条件を引き合いに出すこと自体は有効なテクニックの一つです。しかし、「A病院は年収600万円提示してくれたんだから、ここもそうすべきだ」といった比較の仕方は大変失礼にあたります。
もし他院の条件を伝える場合は、「A病院様からは〇〇円のご提示を頂いており、大変魅力を感じております。しかし、業務内容や理念に関しては貴院を第一志望と考えておりますので、待遇面で少しでも近づけて頂くことは可能でしょうか」といったように、相手を立てつつ相談する形をとりましょう。
根拠のない希望額を伝えることのリスク
「なんとなく年収600万円欲しい」「生活が苦しいから給料を上げてほしい」といった、客観的な根拠のない希望額を伝えるのはNGです。病院側にも給与規定(ラダー)や予算があり、根拠のない要求には応えられません。
給与交渉を行う際は、自身の経験年数、保有資格、前職の給与明細、そして応募先エリアの相場などを踏まえ、「なぜその金額が妥当なのか」を論理的に説明する必要があります。
| NGな伝え方の例 | OKな伝え方の例 |
| 「とにかく年収を上げたいので、月給35万円を希望します」 | 「認定看護師の資格とリーダー経験があるため、貴院の規定に照らし合わせ、資格手当を含めた月給35万円をご検討いただけないでしょうか」 |
| 「前の職場より忙しそうなので、もっと給料をください」 | 「前職では年収450万円でした。即戦力として貢献できるスキルがあると自負しておりますので、前職と同等以上の水準を希望いたします」 |
内定承諾後に交渉を始めるのはマナー違反
条件交渉を行うタイミングは、原則として「内定が出てから、内定承諾書にサインをするまで」の間です。一度承諾の意思を示した後に、「やっぱり給料を上げてほしい」「夜勤の回数を減らしてほしい」と後出しで条件を変更しようとするのは、社会人としてのマナー違反です。
内定承諾後の交渉は、採用担当者や現場の責任者からの信頼を一気に失います。入職前から「約束を守れない人」というレッテルを貼られることになり、働き始めてからの人間関係にも悪影響を及ぼすでしょう。
最悪の場合、内定取り消しに繋がる可能性も
法的には内定承諾によって労働契約が成立したとみなされるケースが多いですが、入職直前での無理な条件変更要求は、信頼関係の破壊とみなされ、内定取り消し(採用見送り)に繋がるリスクがゼロではありません。また、転職エージェントを利用している場合、エージェントと病院間の契約違反になり、多大な迷惑をかけることになります。



条件の確認と交渉は、必ず承諾のサインをする前に完了させてください。
自分の都合ばかりを主張しすぎる
条件交渉は「ギブアンドテイク」が基本です。「給料は上げてほしい、でも残業はしたくない、土日は休みたい」と、自分のメリットばかりを主張しすぎると、病院側には採用するメリットがないと判断されます。
「夜勤を多めに入れるので、その分年収を考慮してほしい」「委員会活動や新人指導には積極的に関わるので、手当をつけてほしい」など、病院側にどのような貢献ができるかをセットで提示することが大切です。
まとめ


結論として、看護師の転職で好条件を引き出すための交渉は十分に可能です。しかし、単に要望を伝えるだけでは失敗に終わるリスクがあります。交渉を成功させるためには、以下の3つのポイントが重要です。
第一に、自分の市場価値を客観的に把握し、希望条件に優先順位をつける「入念な事前準備」を行うこと。第二に、具体的な交渉は基本的に「内定後」のタイミングで行うこと。そして第三に、相手の立場を尊重し、根拠を持って伝える「マナーと誠実さ」を忘れないことです。
給与や勤務条件といったデリケートな交渉を自分一人で行うのが不安な場合は、転職エージェントを最大限に活用することをおすすめします。「ナース専科 転職」や「レバウェル看護」のような実績のあるエージェントであれば、自分の代わりにプロの視点で交渉を進めてくれるため、採用担当者の心証を損ねることなく希望を叶えられる可能性が高まります。
転職はキャリアにおける大きな転機です。遠慮して後悔するよりも、適切な準備と戦略を持って条件交渉に臨みましょう。













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