「看護師でも公務員になれるの?」
「公務員試験は必要?」
このように公務員に憧れる看護師さんも多いのではないでしょうか?
看護師は求人に困ることは比較的少ないですが、より安定した仕事に就きたい方は公務員看護師がおすすめです。
一般の看護師との違いはなんだろう?
特別な資格や公務員試験はあるのかな?
公務員看護師に関して多くの疑問が浮かびますよね。
公務員看護師には安定しているなどのメリットがある一方、副業禁止や雇用保険の対象外などデメリットもあります。
この記事を読めば、公務員看護師の魅力や働き方についての理解を深められます。
公務員になりたい看護師はぜひ本記事を参考にしてくださいね。
公務員看護師とは?
公務員看護師とは国や自治体が運営する病院や施設、行政機関などに勤務する看護師のことです。
仕事内容は一般の看護師と変わりはなく、公的な病院や施設で勤務すれば公務員とみなされます。
公務員試験を受ける必要はありませんが、国や地方自治体が実施する採用試験に合格する必要があります。
一般の公務員試験のように特別な試験対策はあまり必要ありません。看護師免許さえ持っていればわりと簡単に公務員になれます。
ただし勤務先によって看護師免許のほかに資格が必要だったり臨床での経験年数、学歴が必要だったりするので注意しましょう。
看護師が公務員として働ける職場8選
以下の表のように、公務員看護師は国家公務員と地方公務員の2つに分類されます。
国家公務員 | 地方公務員 |
---|---|
国立ハンセン病療養所 看護系技官 自衛隊病院 宮内庁病院 刑務所看護師(法務技官) | 県立・市立病院 診療所保健所・保健センター 公立の学校 |
それぞれ詳しく解説していきます。
【国家公務員】
国家公務員看護師とは防衛省、宮内庁、厚生労働省、法務省が運営する病院や機関に所属している看護師のことを指します。
国家公務員看護師は特殊な職場が多く、その分やりがいもありますが求人数としては稀少です。
国立ハンセン病療養所
国立ハンセン病療養所は元ハンセン病患者が入所している、厚生労働省が所管する医療機関です。
国立ハンセン病療養所の募集要項によると医療職俸給(三)が適用されるため平均年収は575万円、大学卒業初年度で年収が450万円です。
入所している方の高齢化が進み、ハンセン病の後遺症や他の疾患を抱えている方もいるため看護師を増員する施設が増えています。
発展途上国を中心に年間20万人以上の新規発生者がいますが、環境の良い日本ではごく稀な感染症です。
日本全国13箇所に施設があり、創立1909年と歴史のある医療機関です。
国立ハンセン病療養所を設置する地域 |
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青森県、宮城県、群馬県、東京都、静岡県、岡山県、香川県、熊本県、鹿児島県、沖縄県 |
ワークライフバランスも整いやすく、研修制度も充実しているので看護師としてのやりがいも大きい職場と言えるでしょう。
看護系技官
看護系技官採用情報によると医療職俸給(三)が適用され平均年収は575万円、課長補佐モデルケースで年収が510万円です。
看護系技官とは厚生労働省や、厚生局(厚生労働省の地方支分局)に所属し保健、福祉、医療などの制度や政策の改善、創設に携わる国家公務員です。
少し難しいように思いますが、看護系技官は国民の健康や暮らしを支える枠組み作りができるやりがいのある仕事です。
ただし看護師であれば誰でも看護系技官を目指せるわけではありません。
看護系技官の応募資格 |
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日本国籍を持っている 看護師免許と助産師または保健師の免許を取得している 看護系大学卒業または看護系大学院修了者 看護業務の経験が7年以上ある |
看護系技官は全体で約60名と看護師の仕事の中でもあまりメジャーではなく、狭き門といえます。
看護系技官に興味がある方は年に2回看護系技官業務説明会が開催されているので、厚生労働省のホームページで確認してみましょう。
自衛隊病院
自衛隊病院の技官看護師の給料は医療職俸給(三)、自衛官看護師は自衛官俸給表が適用されます。
技官看護師の平均年収は575万円ですが、自衛官看護師の場合月給自体が医療職俸給より1〜2万円高く手当も充実しているため給与水準は、より一層高いと言えるでしょう。
自衛隊病院は元は自衛隊とその家族のための病院でしたが、現在は一般に開放されています。
自衛隊病院で働く場合、「防衛医科大学を卒業していなくてもいいの?」と疑問に思うかもしれませんが絶対に必要というわけではありません。
自衛官看護師と技官看護師の違い | |
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自衛官看護師 | 災害や紛争地域への派遣あり 自衛隊病院駐屯地や基地の医務室で勤務 陸・海・空各幹部候補生学校での訓練が必要 |
技官看護師 | 自衛隊病院での勤務のみ 自衛隊病院での採用試験訓練は必要なし |
自衛官看護師と技官看護師があり、自衛官看護師になるためには陸・海・空各幹部候補生学校での訓練が必要です。
技官看護師は看護師の免許があり、自衛隊病院に採用されれば防衛省所属の特別職国家公務員になります。
自衛官看護師は自衛隊として活動するため特別な訓練が必要ですが、技官看護師は看護師免許があれば応募可能なので自衛官看護師に比べると難易度が低いと言えるでしょう。
宮内庁病院
宮内庁ホームページによると宮内庁病院の初任給は247,500円で、医療職俸給(三)が適用されるため平均年収は575万円です。
宮内庁病院は皇族の方々や宮内庁職員のための宮内庁所管の病院です。
業務は一般の看護師と変わりませんが、宮内庁所属の国家公務員でそれなりの礼節が求められます。
病院の規模としては内科や外科の他婦人科や泌尿器科、耳鼻科などがあり病床数20床と大きくはありません。
夜勤は一般の病院と同じように月4回程度あります。
宮内庁病院は東京に1箇所しかないのでほとんどの看護師さんは通えないのが難点です。
刑務所看護師(法務技官)
刑務所看護師は医療職俸給(三)が適用され平均年収は575万円ですが、一般刑務所では夜勤がないため平均年収よりは低くなることを念頭に置いておきましょう。
刑務所看護師とは法務省が管理する一般刑務所または、医療刑務所に勤務する看護師のことで、法務技官という国家公務員に分類されます。
全国各地にある少年刑務所や刑務所に勤務する看護師は日勤のみで、受刑者の健康管理とケガの手当などを行うため一般の看護師とはカルテの記載方法なども異なります。
医療刑務所は全国に4ヶ所あり、主に精神疾患を持つ受刑者が多く矯正医療に看護師として携わる点が特徴的です。
医療刑務所の仕事内容は一般の看護師とほぼ同じですが、精神疾患を有する受刑者が多いため精神科病棟と類似しています。
刑務所内での勤務は恐いというイメージを持つ方も多いでしょう。
受刑者との接触の制限は厳格に行われているので、みなさんが想像するよりも安全な環境です。
【地方公務員】
地方公務員看護師は、市立病院や保健所などに勤務する看護師のことを指します。
国家公務員と比較して施設や病院が多く、比較的求人も多く存在しているので身近に感じる人も多いでしょう。
県立・市立病院・診療所
県立、市立病院の採用情報を元に調査した結果、役職のない看護師の平均年収は430万円〜550万円程度で経験年数や地域によってばらつきがあります。
県立・市立病院や診療所は地方自治体が運営する病院であり、そこに勤務する看護師は地方公務員となります。
運営元が違うだけで業務内容は民間病院と一緒です。
しかし県立や市立と名前に付いている場合でも、民間の医療法人が運営する病院もあるので注意しましょう。
保健所・保健センター
保健所や保健センターで働く看護師は夜勤がないため、平均年収は493万円とやや低めの水準です。
保健所、保健センターに勤務する看護師は保健師や助産師が中心となり地域で暮らす人の健康を支える地方公務員です。
看護学校でも保健センターの実習があるので身近に感じる人も多いのではないでしょうか。
医療行為自体はほぼないものの、知識を活用して予防的側面から健康を支えることができる仕事です。
日勤業務で夜勤はなく残業も比較的少ないので、ワークライフバランスを重視する人には働きやすい職場と言えるでしょう。
»【看護師と保健師の違い】資格・勤務先・年収・キャリアパスの違いを徹底解説!
公立の学校
公立の学校に勤務する看護師は地方公務員であり、仕事内容は公立看護学校や大学の教員が一般的です。
公立の学校で働く看護師においても、夜勤がないため平均年収は493万円です。
公立看護学校の教員になるには受験資格の条件を満たした看護師が、自治体などが行う採用試験に合格する必要があります。
公立看護学校または大学の受験要件 |
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臨床経験5年+厚生労働省が認定する専任教員として必要な研修または講習を受けている |
臨床経験3年以上+大学または大学院で教育に必要な科目の単位を取得し卒業している |
看護学校の教員は向き不向きが分かれますが、人に何かを教えるのが好きと言う人には向いてる職業と言えるでしょう。
看護系大学の教員の場合、教授クラスになれば年収1000万円も珍しくありません!
看護師としての準公務員(みなし公務員)とは?
準公務員とは、もともと国営で現在は民間が運営する企業(郵便局)やインフラに関わる仕事(電力会社)など公務に準ずる仕事をする人のことを指します。
看護師としての準公務員の勤務先は、独立行政法人や社会福祉法人など公益性、公共性の高い病院です。
年収は地域や経験年数により異なりますが、平均年収は558万円と国家公務員と比較しても高年収と言えるでしょう。
準公務員とされている病院 |
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国立の大学病院 独立行政法人国立病院機構 国立がん研究センター 労災病院 赤十字病院 済生会病院 KKR病院(国家公務員共済組合連合会) |
国立の大学病院や済生会、赤十字などは、市立病院や県立病院と並び医療機関として地域で高度な医療を提供するなど重要な任務を担っています。
準公務員は実際には公務員ではありませんが、同等の待遇を受けられる職場が多く倒産などのリスクも低いため、安定していると言えるでしょう。
準公務員といっても待遇は公務員と変わりありません。公務員という働き方に求める条件しだいでは上記の病院も検討してみるのも良いですね。
公務員看護師と民間病院の給与水準の比較
実際に公務員看護師と民間看護師の給与水準を比較してみましょう。
国家公務員、地方公務員ともに民間企業と比較して賞与がかなり手厚いことがわかります。
月給自体は数万円の差ですが、賞与は約60万円の差が出るので公務員看護師は給与水準が高いと言えるでしょう。
平均月給 | 賞与 | 年収 | |
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国家公務員看護師 | 35万8479円 | 144万9307円 | 575万1055円 |
地方公務員看護師 | 32万1778円 | 140万6710円 | 526万8046円 |
看護師全体 | 34万8433円 | 82万4500円 | 500万5696円 |
同じ仕事をするなら少しでも給与が高い方がモチベーションは上がりますよね。こうしてみると公務員は魅力的です!
さらに公務員看護師には退職金も高額なので、民間看護師との生涯収入の差はさらに大きいと言えるでしょう。
公務員看護師以外に、給料が高い職場の特徴や平均年収知りたい方は下記の記事もチェックしてみてください!
看護師が公務員として働くメリット
福利厚生、給与水準、社会的信用など様々な観点から見て公務員看護師はメリットが多いです。
看護師が公務員として働くメリットを詳しく見てみましょう。
福利厚生が充実している
看護師が公務員として勤務する場合、国家公務員や地方公務員の福利厚生が適用されます。
退職金制度も福利厚生の一つですが定年退職する公務員の場合、退職する時点の月給に最大47ヶ月分掛けた金額が支払われるので老後も金銭面では安心できますよね。
例えば定年退職時点で基本給が35万円だった場合、退職金が1600万円という計算になります。
育児休暇や子の看護休暇が取得できたり、院内保育所が設置されている病院もあり育児中の看護師でも働きやすい環境が整っています。
またレジャーや保養所などを割引価格で利用できる制度もあり、休暇もお得に満喫できるのは嬉しいですよね。
年間休日が125日程度と多く、プライベートを充実させられるのも大きな魅力です。
扶養手当や通勤手当、住宅手当など生活関連の手当も充実しており福利厚生はかなり充実していると言えるでしょう。
安定感が抜群
公務員看護師を目指す人は安定感を求めている人が多いのではないでしょうか。
倒産する心配はもちろんありませんし、退職金制度があり給与は毎年昇給するので公務員看護師においても安定感は抜群と言えます。
ただ、看護師という職業自体にもともと安定性があるのでメリットという面では少し弱いかもしれません。
教育体制が整っている
国家公務員の看護師として働ける看護系技官のように特殊な職業はもちろんのこと、国や地方自治体が管轄する病院では教育体制が整っています。
国や自治体が管轄しているような医療機関では質の高い医療を提供する必要があり、各病院では様々な研修や勉強会を開催しています。
病院によってはローテーション研修を取り入れており、幅広い知識を身につけることができるためより良いチーム医療を展開できます。
クリニカルラダーを導入している病院がほとんどで、着実にスキルアップできる点もメリットです。
特に新人や経験が浅い看護師への教育も計画的に行うので、独り立ちするまで期間を要するという声も聞かれています。
看護師が公務員として働くデメリット
公務員看護師は安定や高待遇と引き換えに柔軟さを得られにくく、窮屈に感じる場合があります。
看護師が公務員として働くデメリットを確認しましょう。
副業ができない
公務員は国家公務員法・地方公務員法で副業を禁止されているため原則副業はできません。
公務員としての品位、守秘義務、職務の能率、公正を維持するために禁止されており、違反した場合には免職や停職、減給などのペナルティを受けてしまいます。
現在は公務員でも副業が認められるケースがありますが、色々と制限があるのが実情です。
やりたい副業がある人は、柔軟な病院を選ぶのが賢明です。
「バレなければ大丈夫」という考えで副業をしてもいつどこでバレるか分かりません。思わぬペナルティを受ける可能性もあるので注意しましょう。
体質が古い
体制や体質の古さも公務員ならではのデメリットです。
近年一般企業では成果主義を取り得れる企業も多く、若い人でもチャレンジしたりモチベーションを高く維持する仕組みが作られています。
一方で年功序列はメリットもありますが、能力のある若い看護師は評価を得られず離職する原因にもなりかねません。
転職を検討する際は職場見学をしたり、内情に詳しい転職エージェントに相談するなどの方法で事前に情報収集をしておきましょう。
雇用保険の対象外
公務員は雇用保険に加入していないため、退職しても失業手当を受け取ることはできません。
ただし公務員は退職時に退職手当が支給されます。
退職手当が失業保険より少ない場合には、手続きすれば差額(失業者の退職手当)を受給することが可能です。
とはいえ雇用保険であれば早期就職した場合に再就職手当が受給できるので、雇用保険の対象外になるのは不利に働くことがあるので注意しましょう。
公務員看護師でも可能な副業はある?
公務員は原則副業禁止ですが、昨今は人口減少による人材不足や働き方の多様化などから許可を得て兼業できるケースがあります。
公務員の副業に関する許可要件 |
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地域を活性化させる 社会貢献を目的としている 営利が主目的でない 許容範囲の報酬 勤務態度が良い 勤務時間外で本業に影響がない |
地域での茶道教室の補佐や、NPO法人での手話通訳活動、産後ケアトレーニング教室の開催などが実例です。
上記は一般的な公務員の例なので、公務員看護師でもルールを守れば許可を得られる可能性があります。
またその他不動産投資や、執筆活動、株式投資・家業の手伝い・小規模農業などはそれぞれ条件があるものの公務員でもできる副業です。
反対にYouTubeや、アフィリエイト、WEBライター、クラウドソーシングでの仕事の受注、せどりは違反行為になるので注意しましょう。
それぞれ可能な副業、禁止されている副業を下記の表にまとめました。
条件付きで可能な副業 | 禁止の副業 |
---|---|
茶道教室の補佐 NPO法人での手話通訳活動 産後ケアトレーニング教室の開催 不動産投資 執筆活動 株式投資 家業の手伝い 小規模農業 | YouTube アフィリエイト WEBライター クラウドソーシングでの仕事の受注 せどり等 |
看護師として公務員になる方法
看護師が公務員になるために公務員試験は必ずしも必要ではありません。
地方自治体や国が運営する病院や組織の採用試験を受け、就業することで公務員看護師になります。
病院や組織によって応募条件が異なり、看護師以外の免許が必要な場合や、臨床経験年数などが決められているので各ホームページなどで確認しましょう。
職場によっては常に人員が充足しており、欠員が出たときだけ募集するケースも多いです。人気の職場は運やタイミングしだい・・なんてことも。
個人での情報収集は限界があるので、転職エージェントに相談するのもおすすめです。
看護師公務員は直接応募するのが一般的ですが、必要な情報をプロのキャリアアドバイザーがアドバイスしてくれます。
また公務員と同等の待遇を受けられる求人も扱っているので、理想の職場と出会える可能性もあります。
まとめ
国家公務員看護師は少々ハードルが高いですが、地方公務員は比較的求人も多く意欲的な人であれば目指すのは難しくないでしょう。
公務員看護師は高い給料水準、福利厚生の充実、研修制度などメリットが多い一方で副業は原則禁止、年功序列など体質が古く柔軟性に欠ける部分があります。
公務員看護師と同等の待遇を受けられる準公務員も視野に入れれば、理想の職場と出会える可能性が高くなります。
公務員看護師になるには公務員試験は必要ありませんが、求人が少なく応募条件があるなど情報収集が必要です。
幅広く包括的に情報収集するためには転職エージェントに相談するのもおすすめです。
ぜひ本記事を参考にしていただき、公務員看護師について情報収集する際に役立ててくださいね。
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