最近では介護施設看護師の求人も多く、病院から介護施設への転職を検討する人も多いのではないでしょうか。
介護施設で働く看護師の年収は増加傾向にあるものの、看護師全体の年収と比べればまだまだ低いのが実情です。一方で高齢化社会に伴い介護施設は年々増えており、介護施設看護師の需要も高まっています。
本記事では介護施設で働く看護師の年収を厚生労働省、政府統計データなどをもとに解説しています。この記事を読めば施設看護師の実態や収入アップに向けた転職方法について知ることができます。介護施設看護師を検討している方はぜひ本記事を参考にしていただき、収入を確保しつつ自分らしく働ける介護施設を探しましょう。
介護施設と病院における看護師の役割の違い
介護施設での看護師は入所者の健康管理が主な役割であり、介護施設の形態によって必要な医療ケアは異なります。
介護施設での主な医療ケア |
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バイタルサイン測定 内服薬の管理 褥瘡処置 血糖測定・インスリン注射 ストマ管理 膀胱留置カテーテルの挿入管理 胃瘻、経管栄養往診時の診療補助 在宅酸素の管理 転倒・外傷時の応急手当 受診付き添い、情報提供 点滴管理(頻度は少ない) 喀痰吸引(頻度は少ない) エンゼルケア |
病院での看護師は治療を安全に受けられるよう支援することが主な役割で、診療科や配属先によっては専門的な知識が必要です。介護施設では病院のように高度なスキルや知識を必要としないことから「介護施設の看護師はラク」と思われがちです。
しかし、介護施設の看護師には病院とは違った困難や苦悩があります。
病院看護師との違いは介護施設には圧倒的に医療従事者が少ないため、判断力と応用力が求められプレッシャーがかかると言えるでしょう。高齢者は症状が非定型であることも多く、訴えが曖昧でわかりにくいため、体調の変化を見逃さないように注意深く観察しなければなりません。
病院と比べて介護施設は利用者一人一人と関わる時間が長く、ゆっくり長い時間をかけて看護したいという方にはおすすめです。
比較的残業や夜勤も少ないため、ワークライフバランスを考えた働き方ができるのもメリットです。
介護施設の給料は看護師全体の中でも低い?
看護師全体の年収が平均508万円であるのに対して、介護施設看護師の年収は476万円と約32万円の差があります。
ただし病院や介護施設にも様々な規模、形態があるため一概には言い切れません。
病院規模 | 10人〜99人 | 100〜999 | 1000以上 |
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月収 | 329,700円 | 338,200円 | 377,400円 |
賞与 | 647,900円 | 794,300円 | 1,031,300円 |
年収 | 4,604,300円 | 4,852,700円 | 5,560,100円 |
介護施設看護師の年収「令和5年度介護事業経営実態調査結果:令和4年決算より引用」
年々施設看護師の年収は看護師全体の年収と近くなってきており、施設看護師の年収が上昇傾向にあると言えるでしょう。
施設種類別の看護師の平均年収を比較
介護施設看護師の平均年収は476万円ですが、施設の種類により年収は大きく異なります。
看護師常駐の義務や医療ニーズが高い施設は、夜勤があるケースが多く、年収が高い傾向です。
介護施設の種類別に看護師の平均年収を比較して見てみましょう。
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームの看護師の年収は令和4年度で546万円と看護師全体の年収よりも高いです。
令和1年 | 令和3年 | 令和4年 | |
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正看護師 | 5,071,824円 | 5,242,500円 | 5,465,892円 |
准看護師 | 4,590,504円 | 4,729,848円 | 5,033,364円 |
特別養護老人ホームとは、介護保険施設で要介護認定を受け在宅での生活が困難な方が入所できる介護サービスと生活の場を提供する施設です。
入所条件は一部特例を除いて65歳以上の要介護3以上の方なので、比較的介護量が多いのが特徴です。
特別養護老人ホームは看護師の配置が義務付けられていますが、24時間常駐の義務はないため91.6%の施設でオンコール体制をとっています。夜勤がない施設がほとんどなので、ワークライフバランスと収入面を総合的にみて働きやすい環境であるといえるでしょう。
介護老人保健施設
介護老人保健施設の令和4年度の平均年収は563万円と、看護師全体の平均よりも高くなっています。
令和1年 | 令和3年 | 令和4年 | |
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正看護師 | 5,387,544円 | 5,555,460円 | 5,634,876円 |
准看護師 | 4,593,588円 | 4,819,272円 | 4,911,384円 |
介護老人保健施設とは介護が必要な高齢者の自立支援、自宅復帰を前提とした施設でリハビリや医療ケアを行う施設です。医療ケアが多くなるため、特養やその他の施設と比較して看護師の人数が多いのが特徴です。
介護老人保健施設では92.9%が看護師の常時夜勤体制もしくは当直制をとっており、夜勤手当により年収が高い傾向にあります。
有料老人ホーム
有料老人ホームの看護師の年収は令和4年度は525万円と、看護師全体の年収と比較しても高い水準です。
令和1年 | 令和3年 | 令和4年 | |
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正看護師 | 5,135,124円 | 5,037,036円 | 5,258,472円 |
准看護師 | 4,511,196円 | 4,406,268円 | 4,877,928円 |
有料老人ホームとは民間企業が運営する介護施設で、介護や食事、健康管理やリハビリなどのサービスを提供する施設です。
施設によって入所されている方の介護度は異なり、介護付き・住宅型・健康型と3つのタイプに分類されます。
有料老人ホームは年間休日が少ない、拘束時間が長いなどワークライフバランスを重視する方には少々きついと感じる場合があります。
年収だけではなく勤務時間や就業時間を確認するようにしましょう。
h3:デイサービス
デイサービスでの看護師の年収は令和4年度で450万円と、介護施設看護師の中でも最も低い年収になっています。
デイサービスは在宅で生活する高齢者に対して食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを行う施設です。
令和1年 | 令和3年 | 令和4年 | |
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正看護師 | 4,251,828円 | 4,474,596円 | 4,503,924円 |
准看護師 | 3,919,440円 | 4,012,692円 | 4,220,880円 |
デイサービスは通所型のサービスで夜勤がないため年収は低い傾向にあります。
時間通りに終業することが比較的多く、夜勤もないためワークライフバランスを重要視する人には働きやすい環境です。
介護医療院
介護医療院の看護師の年収は令和4年度で552万円と老人健康保険施設と並んで高い水準です。
令和1年 | 令和3年 | 令和4年 | |
---|---|---|---|
正看護師 | 5,380,380円 | 5,673,468円 | 5,526,240円 |
准看護師 | 4,830,492円 | 4,656,300円 | 4,787,448円 |
介護医療院とは医師の配置が義務付けされており、喀痰吸引や経管栄養など医療ニーズが高い高齢者が入所できる施設です。
介護老人保健施設が在宅復帰を目指す一時的な入所施設であるのに対し、介護医療院は終の住処としての役割も担っています。
介護医療院にはI型とII型がありI型は比較的重症度の高い方、II型は比較的容態が落ち着いている方が対象です。
24時間医療ケアが必要な方が多く、夜勤があることからも年収が高いと言えるでしょう。
介護施設で働く看護師は介護職員より年収が低くなるケースもある
介護施設で働く看護師は介護職員よりも年収が低くなるケースがあります。
看護師の配置が義務付けられていない特別養護老人ホームの場合、准看護師の年収は503万円、介護福祉士の年収は504万円です。
令和1年 | 令和3年 | 令和4年 | |
---|---|---|---|
准看護師 | 4,590,504円 | 4,729,848円 | 5,033,364円 |
介護福祉士 | 4,517,064円 | 4,746,192円 | 5,040,108円 |
正看護師でも夜勤の必要がなければ、夜勤の回数によっては介護福祉士の年収が高くなるケースもあります。
その背景として、介護施設が増加傾向にあり介護士の人員確保も難しくなってきているため、介護士の年収も年々増加しています。
処遇改善も度々改正されており、介護施設では看護師よりも介護福祉士の方が年収が高くなるケースがあります。
将来的に介護施設で働く看護師の年収が上がる見通しは?
将来的に看護施設で働く看護師の年収が上がる見通しは大いにあると言えます。
まず介護施設の看護師の年収は年々増加傾向であり、看護師全地の年収と比較してその差は縮まりつつあります。
令和1年 | 令和3年 | 令和4年 | |
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准看護師 | 5,045,340円 | 5,196,612円 | 5,277,880円 |
介護福祉士 | 4,489,044円 | 4,524,876円 | 4,766,200円 |
また2012年からたびたび介護士の処遇改善加算が進められていますが、介護施設の看護師は対象ではありません。
処遇改善加算の金額や職員への振り分け方は施設の方針によって異なります。
私が勤務する施設では、看護師に対しても数千円の処遇改善手当を付けてくれています。
令和6年の看護師処遇改善でも病院と訪問看護ステーションでの看護師が対象で、医療施設ではない介護施設の看護師は除外されています。
様々な処遇改善が進められている中で、介護施設でも看護師の人材確保に向けた改善が今後は期待できると考えられます。
看護師が介護施設への転職で年収を上げるためのポイント3選
介護施設への転職を検討している看護師さんのなかには、年収を重視する方もいるのではないでしょうか。
介護施設への転職で年収を上げるためには以下の3つのポイントをおさえて転職活動を進めることが大切です。
- 処遇改善加算を取得している施設かどうか
- 複数の施設を比較する
- キャリアアドバイザーに相談する
少しでも安定した年収を確保しつつ、ワークライフバランスや看護観を大切にできる職場が理想でしょう。
ここでは看護師か介護施設への転職で年収を上げるためのポイントを押さえておきましょう。
1.処遇改善加算を取得している施設かどうか
そもそも処遇改善加算とは介護士の人材確保、給与のベースアップを目的とした加算のことです。
基本的に介護士が対象となる処遇改善加算ですが、介護士を兼務する看護師も対象になるケースがあります。
また令和6年以降の新処遇改善加算においては職種間配分ルールが緩和されるため、看護師の年収もベースアップする可能性があります。
処遇改善加算は様々な適用条件を満たした施設が算定できるため、処遇改善加算を算定している介護施設は積極的に処遇改善を推進していると言えるでしょう。
処遇改善加算を取得している施設であるかどうかは、介護施設看護師の年収を上げるポイントになります。
2.複数の施設を比較する
看護師が介護施設へ転職する際に年収を上げるためには、複数の施設を比較するのがおすすめです。
介護施設の種類や規模によって年収や仕事内容、年間休日や拘束時間は大きく異なります。
複数の施設を比較する前に職場選びの条件と、優先順位を明確にしておきましょう。
例えば自分の看護観とあっているかどうか、年収、ワークライフバランスなどの自己分析を転職する際に明確にしておくと比較しやすくなります。
理想の職場と出会うためには、複数の施設を比較して検討すると成功確率が大きく上がるでしょう。
3.キャリアアドバイザーに相談する
介護施設への転職で年収をアップさせる効率的な方法は、キャリアアドバイザーへ相談することです。
結局のところ、この方法が転職で年収を上げるためには確実性が高いといえます。
キャリアアドバイザーは転職希望者に対して求人とのマッチングから面接対策、給与面などの就業条件の交渉までサポートしてくれます。
キャリアアドバイザーに相談すると、希望条件にあった求人を提案してくれるため自分で探す時間と手間が省けるのがメリットです。
キャリアアドバイザーに相談すると自分の仕事に対する希望が整理されるので、より自分に合った介護施設に出会える可能性が高くなります。
介護施設への転職で年収アップを狙うなら看護師転職エージェントがおすすめ
介護施設への転職で年収アップを狙うなら、転職エージェントを利用するのがおすすめです。
看護師転職エージェントは、看護師の業界に精通したプロのキャリアアドバイザーが丁寧にサポートしてくれます。
様々な看護師転職エージェントがありますが、それぞれ特徴が違うためご自身に合った転職エージェントを選びましょう。
看護師転職エージェントを利用するメリット |
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看護師転職エージェントは病院・施設側から紹介料を受け取ることで利益を得ているため、求職者は無料で利用できる仕組みです。
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まとめ
介護施設で働く看護師の年収は、看護師全体の年収と比較して低いのが現状です。
しかし介護施設の規模や看護師の配置が義務付けられているかどうか、または夜勤の有無などによって年収は大幅に異なります。
介護施設のなかでも、老健や医療介護院は医療ケアの必要性が高い方が入所しているため年収が高い傾向にあります。
年々介護施設看護師の年収は増加しており、病院看護師全体の平均年収との差が縮まっているのも事実です。
介護施設への転職で年収をアップさせたいという場合は、キャリアアドバイザーに相談するのがおすすめです。
看護師転職エージェントを利用することで介護施設の内情を詳しく知り、一般の求人では出会えない理想の職場と出会える可能性が高くなります。
介護施設看護師として働くことを検討している方は、ぜひ本記事を参考にしていただき収入アップを目指しましょう。
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