認定看護師は看護師のキャリアのなかで高い専門性を身に付け、さらなるスキルアップを目指す方法のひとつです。特定の分野において高い知識とスキルを持ち、チーム医療の中心として貢献できる重要な役割があります。
本記事では、認定看護師になるために知っておくべき条件や方法、手順まで分かりやすく解説します。記事を読めば、認定看護師としてステップアップするために必要な知識を理解し、万全な準備ができるでしょう。
今は看護師も専門性の高さが求められます。プロフェッショナルとして高みを目指すには認定看護師がおすすめです!
認定看護師になるにはどうすればいいか解説
認定看護師の資格を取得するためには、取得条件や流れを理解する必要があります。主に以下の5つを解説します。
- 資格取得の条件
- 認定看護師教育機関の選び方
- カリキュラムと授業内容
- 認定審査の流れ
- 資格取得にかかる費用と奨学金制度
資格取得の条件
認定看護師になるためには、認定審査に合格する必要があります。以下の条件を満たすことで認定審査を受けることが可能です。
日本国の看護師免許を有すること 通算5年以上の実務研修を受けており、そのうち3年以上が認定看護分野の実務研修であること。 認定看護師教育機関でA課程(615時間)もしくはB課程(800時間)の教育課程を修了していること。 参考:公益社団法人日本看護協会 認定看護師制度規程 |
看護師免許を取得してから最低5年間の実務経験が必要であり、そのうち3年間は取得したい認定分野の領域で実務経験を積まなければなりません。
准看護師での実務経験はカウントされないので注意しましょう。
認定看護師教育課程の修了には6ヶ月の期間がかかります。働きながらの受講は難しいため、仕事を休職するか、資格取得のための長期休暇を取って通学するのが一般的です。
認定看護師教育機関の選び方
日本看護協会によると、2024年11月現在、認定看護師の教育機関は全国に88機関あります。認定看護師の教育機関を選ぶ際は、自分が取得したい分野の教育機関がどの地域にあるのかを把握しなければなりません。分野によって選ぶべき教育機関は異なります。全国でも教育機関が数えるほどしかない分野もあるため、必ずしも自宅から通える範囲にあるとは限りません。
例えば、小児プライマリケアの教育機関は神奈川県に1箇所しかありません。
認定看護師教育機関は、比較的都市部に多い傾向があります。自分が取得したい分野の教育機関がどこにあるかを把握し、自宅から通える範囲であるかどうかを判断しましょう。
カリキュラムと授業内容
認定看護師教育基準カリキュラムは分野によって異なります。科目は大きく分けて以下の3種類です。
- 共通科目(約120時間)
- 専門科目(約345時間)
- 演習・実習(150時間)
共通科目では、看護師に必要な基礎知識や看護理論について学びます。医療安全や薬理学など、分野に関わらず幅広い学習が必要です。専門科目では、特定の分野に特化した知識を習得します。学習内容は、選択する認定分野ごとに異なります。救急看護やがん看護など、各分野の病態生理やケアの方法についての知識を深める講義が中心です。演習・実習では、学んだ知識をもとに、シュミレーション形式で実践力を磨きます。
時間単位は標準で約615時間以上と定められており、6ヶ月〜1年間を目安にカリキュラムを進めます。
認定審査の流れ
認定審査における流れを把握しておくことも重要です。
認定看護師の審査は、申請手続き後に筆記試験を通して実施されます。日本看護協会が定める基準に基づき、認定看護師として必要な知識や判断力、実践力を総合的に評価します。専門分野ごとに審査基準が異なりますが、一般的に正答率70%以上が合格の基準です。
資格取得にかかる費用と奨学金制度
認定看護師の資格取得にかかる費用は、約150万円が一般的です。人によって状況や養成所は異なるため、金額に差が生まれます。主な費用の内訳は以下のとおりです。
必須でかかる費用 | 状況に応じて必要な費用 |
---|---|
入学試験料:約5万円 入学金:約5万円 授業料:約70〜100万円 実習費用:約10万円 認定審査料:約5万円 認定料:約5万円 | 引越し費用 家賃や光熱費 交通費 参考書代 パソコン代 |
住んでいる地域によっては転居が必要になるケースがあり、生活コストが増加します。養成所までの交通費や学習に使用するパソコン代など、状況に応じて200万円近く必要になる人もいます。
認定看護師取得を支援する奨学金制度には、以下の制度が挙げられます。
- 勤務先の病院の奨学金制度
- 地方自治体の助成金制度
- 日本看護協会の「認定看護師教育課程奨学金」
- 国や民間の教育ローン
奨学金制度や助成金制度の有無や支給条件は、病院や自治体によって異なるため、事前に確認することをおすすめします。制度を設けている場合、特定の病院や施設で一定期間勤務することで、返済が免除になるケースが多いです。一方で、国や民間で実施する教育ローンは返済義務が生じるものの、低金利や長期返済が可能な場合が多いです。
認定看護師になるための4ステップ
認定看護師を取得するまでには、以下の4つのステップで進めていきます。
- 実務経験を積む
- 認定看護師教育機関へ入学する
- 認定審査に合格する
- 認定看護師登録手続きを行う
それぞれのステップごとに詳しく解説します。自分がどのステップから目指す必要があるのかを判断しましょう。
1.実務経験を積む
認定看護師の教育機関へ入学するためには、一定の実務経験が必須です。日本看護協会では、看護師として通算5年以上、そのうち認定看護分野で3年以上の実務経験を条件としています。認定看護師は、看護師のなかでも高度な知識と技術を有することを証明する資格です。看護師への指導的立場で貢献する必要があるため、新人看護師が認定看護師を目指すことはできません。
看護師免許を取得してから、最低でも5年間は認定看護師は目指せないんですね。
2.認定看護師教育機関へ入学する
取得する認定看護分野によって入学すべき教育機関は異なります。各分野の教育機関は日本看護協会ホームページより確認できます。
入学試験は年に1回、冬期(12〜翌年2月ごろ)に実施されるのが一般的です。教育機関により入学試験の日程は異なるため、志望期間の募集要項を確認しましょう。試験問題は主に筆記試験、小論文、面接による選考が一般的です。筆記試験は看護に関する基礎知識が問われます。解剖生理や病態生理、専門分野の基礎的な内容を理解しておくことが大切です。小論文では、自身の看護観や考え方を論理的に分かりやすく伝える能力が問われます。面接試験では、志望動機や目指したいキャリアプランなどの質問がされます。事前に想定される質問に対する返答を用意しておきましょう。
3.認定審査に合格する
所定の教育機関に入学し、認定看護師教育課程(615時間以上)を修了することで、認定審査が受けられます。
認定審査は筆記試験でおこなわれ、問題形式はマークシートを使用した多肢選択式です。問題数は全40問であり、100分間の試験時間で問題を解きます。配点は以下で構成されます。
出題方式 | 問題数 | 配点 |
---|---|---|
一般問題 | 20問 | 50点 |
状況設定問題 | 20問 | 100点 |
合計 | 40問 | 150点 |
分野ごとに基準点が設けられている場合もありますが、正答率70%以上が合格ラインとされています。
4.認定看護師登録手続きを行う
認定審査の合否は、日本看護協会公式ホームページで公開されます。公表期間が限られているため、必ず期間内に確認し、登録手続きに進むことが大切です。合否の確認とともに、合格者のページには登録料の振込先口座・金額・期間が明示されます。指定の期間内に登録料(金額は約5万円)を振り込むと、登録手続き完了後に認定証が交付されます。
出典:2024年度 認定の手引き「第32回認定看護師(CN)認定審査」
認定看護師になるメリット
認定看護師を取得するのは簡単ではないですが、得られるものも大きいです。認定看護師になると、以下のメリットがあります。
- 専門性の向上
- キャリアアップ
- 待遇の改善
- 活躍の場の拡大
専門性の向上
認定看護師では感染管理やがん看護、救急看護などの特定の分野で、高度な知識と技術を習得できます。専門性の高さから、患者のケアやチーム医療におけるリーダーシップを発揮することが可能です。継続的な学習や研修なども行うため、専門分野における最新の医療情報に触れられることも専門性の向上につながります。
キャリアアップ
認定看護師は、特定の看護分野において熟練した知識や技術を有する「スペシャリスト」としてのキャリアアップが可能です。現場での実務だけではなく、ほかの看護師への指導を担うことも多いため、管理職へのステップアップにも有利になります。将来的に看護師長や看護部長への昇進を目指す「ジェネラリスト」としてのキャリアアップにつながるでしょう。
キャリアの選択肢が広がるのも大きなメリットですね。
待遇の改善
認定看護師の取得により、待遇の改善が期待できます。認定看護師のような希少性の高い知識やスキルは貴重であり、特別な待遇を設けている病院も多いです。具体例として、以下の待遇改善が見込めます。
- 資格手当の支給
- 基本給アップの可能性
- 昇格による役職手当の支給
日本看護協会の調査によると、認定看護師の資格手当の平均支給額は8,530円です。基本給が上がった人の平均額は11,191円であり、年間10万円以上の収入アップの可能性があります。
活躍の場の拡大
病院だけではなく、さまざまな活躍の場が与えられていることも認定看護師の魅力です。地域医療や在宅医療、教育機関、行政機関など幅広い分野で活躍できます。医療の高度化や高齢化が進む社会において、専門性の高い認定看護師の役割はさらに重要になるでしょう。
認定看護師になるときの注意点
認定看護師の取得は看護師としての専門性を高め、キャリアアップや待遇改善に有利です。ただし、目指す際には以下のポイントを踏まえて行動しましょう。
- 資格取得までにかかる時間を考慮する
- キャリアプランを立てる
資格取得までにかかる時間を考慮する
認定看護師になるには、まず看護師として5年以上の実務経験が必要です。その後、所定の養成所で約6ヶ月の認定看護師教育課程を修了しなければなりません。在学中はフルタイムでの勤務が難しいため、事前に金銭面や生活面の変化を考慮しておくことが重要です。認定審査への合格も必須になるため、学業と仕事のバランスを考え、計画的に進めましょう。
自分が今から目指す際は、あとどのくらいの期間が必要かを把握しましょう。
キャリアプランを立てる
認定看護師における専門分野の選択は、取得後のキャリアに直結します。長く興味を持ち続けられる分野であるか、今後のキャリアに必要な資格であるかを慎重に検討しましょう。認定看護師を取得したものの、資格を活かせない職場だったりキャリアに活かせなかったりしては意味がありません。キャリアプランを立てたうえで、長期的な視点で活躍できる環境を選ぶことが重要です。
目標を達成するまでの道筋を明確にすることが成功への鍵です。
認定看護師になる方法に関するよくある質問
認定看護師の取得方法や資格に関して疑問を持つ人も多いです。ここでは、以下のよくある質問に答えます。
- 認定看護師の難易度はどれくらい?
- 認定看護師資格はなくなる?
- 認定看護師資格の更新は必要?
- 認定看護師に向いている人は?
認定看護師の難易度はどれくらい?
認定看護師になるには高い専門性が求められるため、決して簡単ではありません。認定審査の合格率は約90%と高い水準ではあるものの、6ヶ月にわたるカリキュラムの受講や課題、レポートの提出などが求められます。計画的に学習を進める必要もあるため、高い意欲や精神力が必要です。ただし、看護師としての基礎知識やスキルを有していれば、十分に挑戦可能な資格です。
認定看護師資格はなくなる?
結論からいえば、現段階で認定看護師資格がなくなることはありません。日本看護協会は、2026年に現行の認定看護師制度を廃止し、新制度へ改正することを発表しています。
「旧制度の廃止」という言葉から、認定看護師がなくなるのではないかという噂に変容してしまったのかもしれません。
新制度であるB課程認定看護師では、分野の統合や名称が変更されます。さらに特定行為研修が追加されることで、より高い水準での看護実践が期待されます。
認定看護師資格の更新は必要?
認定看護師には更新制度があります。特定分野に関する高い看護実践レベルを保持するためです。更新審査は5年ごとに実施され、更新するためには所定の要件を満たす必要があります。具体的な要件は以下のとおりです。
- 看護実践時間:2000時間以上
- 自己研磨実績:50点以上
認定看護師は特定の分野において高度な実践力と指導的役割を担う存在です。積極的な能力開発や向上のために、一定以上の看護実践と自己研磨が求められます。
常に高いレベルを求められるのが認定看護師なんですね。
認定看護師に向いている人は?
認定看護師の役割や特性を踏まえて、以下の人に向いています。
- 特定の分野に強い興味や関心がある人
- 継続学習の意欲がある人
- リーダーシップを発揮したい人
ひとつの分野に特化してスペシャリストを目指したい人は、認定看護師の取得がおすすめです。定期的な更新制度によって高いレベルを維持することも求められるため、継続的に学び続けられる意欲も必要不可欠です。認定看護師はチーム医療の中心的な役割を担うことも多く、リーダーシップを取れる人も向いているといえます。
まとめ
認定看護師の資格は、看護師としての専門性を高めるだけでなく、キャリアアップや収入アップ、患者への質の高い看護を提供するために有効な手段です。取得には5年以上の実務経験と教育機関への入学、認定審査の合格が必須です。合格率は約90%と難易度は高くありませんが、6ヶ月にわたるカリキュラムの実施や数多くの課題、レポートをこなす必要があります。在学中はフルタイムでの勤務は難しいため、生活スタイルの変化を考慮して計画的な学習を心がけましょう。
医療の進歩や高齢化社会に伴い、認定看護師が担う役割もさらに重要視されます。自身のキャリアの可能性を広げる選択肢として、ぜひ前向きに検討してください。
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