「准看護師はレベルが低い」という言葉に、不安や悔しさを感じていませんか?私も准看護師として勤務していた経験がありますが、直接的ではないにしろ「見下されてるな‥」と感じる場面は多々ありました。
結論から言うと、これは教育課程や法律上の役割の違いからくる誤解であり、決して個人の能力が低いわけではありません。この記事では、准看護師経験もある現役主任看護師が、現場で見てきた実態をもとに、「レベルが低い」と言われる5つの理由を解説します。正看護師との業務範囲や給与・昇進の違い、准看護師だからこそ得られるメリット、そして「レベルが低い」と言われないための具体的な対処法までわかります。
なぜ准看護師はレベル低いと言われがちなのか

長年、看護の現場に身を置き、准看護師としての経験も持つ筆者からすると、「准看護師はレベルが低い」という言葉は決して個々の准看護師の能力や努力を指すものではないと断言できます。むしろ、その背景には、准看護師と正看護師を取り巻く制度上の違いや、業務における役割の差が大きく影響しています。
ここでは准看護師と正看護師の法的な定義の違いを明確にし、なぜ「レベルが低い」という誤解が生まれやすいのか、その構造的な理由を解説します。さらに、筆者が准看護師として働いていた時代に実際に目の当たりにした、現場のリアルな実態についても触れていきます。
- 准看護師の定義
- 看護師の定義
- 筆者が准看護師時代に現場で見てきたリアルな実態
»正看護師と准看護師の違い5選!給料や役割、就業先の特徴を徹底比較
准看護師の定義
准看護師は、「保健師助産師看護師法」の第六条において定義されています。 最も重要なポイントは、その業務が「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて」行われる、という点です。
免許は国家資格である正看護師とは異なり、都道府県知事から交付されます。 資格取得に必要な教育期間は、中学校卒業後であれば准看護師養成所に2年間通うのが一般的です。
正看護師の定義
一方、正看護師(法律上の名称は「看護師」)は、同じく「保健師助産師看護師法」の第五条で定義されています。 こちらは「傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」とされており、准看護師の定義にある「指示を受けて」という文言がありません。 これは、正看護師が自らの判断に基づき、看護ケアを実践できることを意味しています。
免許は厚生労働大臣から交付される国家資格です。 資格取得には、高校卒業後に看護大学や専門学校などで3年または4年間の専門教育を受ける必要があります。
准看護師と正看護師の主な違い
| 項目 | 准看護師 | 正看護師(看護師) |
| 根拠法規 | 保健師助産師看護師法 第六条 | 保健師助産師看護師法 第五条 |
| 免許 | 都道府県知事免許 | 厚生労働大臣免許(国家資格) |
| 業務の根拠 | 医師・歯科医師・看護師の指示のもと業務を行う | 自らの判断で業務を行うことができる |
| 教育期間(最短) | 2年間 | 3年間 |
筆者が准看護師時代に現場で見てきたリアルな実態
法律上の定義だけでは、現場の実態は見えにくいかもしれません。筆者が准看護師として働いていた頃、「レベルが低い」という言葉がどのような場面で使われがちだったか、具体的な場面を振り返ってみます。
経験豊富なベテラン准看護師が、経験の浅い新人正看護師に業務の手順を教える、といった光景は日常茶飯事です。しかし、法的な位置づけとしては、その新人正看護師の指示のもとでベテラン准看護師が動くという構造になっています。このねじれ構造も、准看護師の専門性が正当に評価されにくい一因であり、「経験はあっても、できることは限られる」というイメージにつながっているのかもしれません。
決して個々の准看護師の学習意欲や技術が低いわけではありません。むしろ、限られた権限の中で、いかに患者さんのために動けるかを常に考えている素晴らしい准看護師を、筆者はたくさん見てきました。問題の根源は、個人の資質ではなく、資格制度そのものに内包された業務範囲と責任の明確な違いにあります。
ryanta73実際、一緒に仕事をしている私から見ても誰が准看護師で誰が正看護師かは区別がつきません。
准看護師がレベル低いと言われる5つの理由


ここでは、現役の主任看護師として、そして准看護師としての経験も踏まえ、なぜ准看護師はレベルが低いと言われがちなのか、5つの具体的な理由を解説します。
- 教育課程と学習時間の圧倒的な差
- 自らアセスメントして動く訓練の不足
- 正看護師の指示受けが前提という業務構造
- 採用・昇進で正看護師が優遇されやすい現実
- 一部のベテラン准看護師による業務の形骸化
教育課程と学習時間の圧倒的な差
准看護師がレベルが低いと言われる最も大きな要因の一つが、正看護師との教育課程における違いです。資格取得までに求められる学習時間や内容には、明確な差が設けられています。
正看護師は、高校卒業後、大学(4年)や専門学校(3年)などで3,000時間以上の専門教育を受け、看護理論や複雑な病態生理、科学的根拠に基づいた看護過程の展開を深く学びます。 一方、准看護師は中学校卒業後、養成所などで2年間、1,890時間の教育を受けるのが基本です。 この教育年数と総学習時間の差は、知識の深さと幅、そして論理的思考力の育成に直接影響します。



准看護学校は中学卒業が要件ですが、実際にはほとんどの人が高校卒業か社会人で入学します。
以下の表は、両者の教育課程の主な違いをまとめたものです。
| 項目 | 准看護師 | 正看護師 |
| 免許 | 都道府県知事 | 厚生労働大臣(国家資格) |
| 入学要件 | 中学校卒業 | 高校卒業 |
| 養成期間(最短) | 2年 | 3年 |
| 総学習時間(必修) | 1,890時間 | 3,000時間以上(102単位以上) |
| 教育の基本 | 医師、歯科医師または看護師の指示のもとに、安全に療養上の世話や診療の補助を実施する能力の育成 | 科学的根拠に基づき、自律的に看護を計画・実践する能力の育成 |
このように、教育の出発点から「自ら判断し計画する正看護師」と「指示を受けて実践する准看護師」という役割の違いが想定されており、この差が臨床現場での能力差として認識される一因となっています。
自らアセスメントして動く訓練の不足
教育課程の違いは、臨床現場で最も重要とされる「アセスメント能力」の差に直結します。アセスメントとは、患者さんから得た情報(主観的情報・客観的情報)を分析し、看護上の問題を明らかにする思考プロセスです。
正看護師の教育では、アセスメントとそれに基づいた看護計画の立案・評価(看護過程)を繰り返し訓練します。 なぜこの症状が出ているのか、今後どのようなリスクがあるのかを科学的根拠に基づいて予測し、個別性のあるケアを計画する能力を養います。
一方、准看護師の教育では、看護計画の立案やアセスメントそのものは必須の到達目標とされていません。 あくまで「看護師が立案した看護計画を理解し、それに基づいて実践する」ことが求められます。 そのため、自らの判断で患者の状態を統合的に分析し、次に行うべきケアを主体的に決定する訓練が、教育段階で不足しがちになります。



この教育課程の違いが、現場で「言われたことしかできない」と見なされ、レベルが低いという評価に繋がってしまう一因です。
正看護師の指示受けが前提という業務構造
准看護師の業務は、保健師助産師看護師法第六条において「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて」行うものと明確に定められています。



これは、准看護師が自分の判断のみで看護業務を完結させてはならない、という法的な制約です。
実際の業務内容は、採血や点滴、バイタルサイン測定など、正看護師とほとんど変わらない場面も多くあります。 しかし、その一つひとつの行為の根拠には、必ず医師や正看護師の「指示」が存在しなければなりません。例えば、患者さんの容態が急変した際、応急手当はできても、その後の治療方針に関わるような医療行為を自己判断で行うことは法律で禁じられています。
この「指示受け」が前提の業務構造は、主体的な行動を制限し、責任の所在を曖昧にしかねません。結果として、常に受け身の姿勢に見えたり、責任ある立場を任せられないと判断されたりすることが、「レベルが低い」という印象を強める一因です。
採用・昇進で正看護師が優遇されやすい現実
キャリアパスにおける格差も、准看護師が「レベルが低い」と見なされる現実に影響しています。特に、大学病院や大規模な急性期病院では、採用が正看護師に限定されるケースがほとんどです。 複雑で重症度の高い患者さんへの対応には、高度なアセスメント能力と自律的な判断が求められるからです。
キャリアアップの面でも大きな壁が存在します。看護主任や看護師長といった管理職への昇進は、多くの場合、正看護師であることが必須条件とされています。 法律上、准看護師は他の看護師に指示を出す立場にないため、スタッフを管理・指導する役職に就くことが構造的に難しいのです。 給与体系も基本給や昇給率、資格手当などで正看護師と差が設けられていることが多く、生涯年収で大きな差が生まれます。



就職先の選択肢が限られ、キャリアの天井が見えやすいことも、准看護師資格の評価を相対的に低く見せる要因です。
一部のベテラン准看護師による業務の形骸化
これは非常にデリケートな問題ですが、一部のベテラン准看護師の存在が、全体のイメージを下げてしまっている側面も否定できません。
長年の経験則だけを頼りに業務を行い、新しい医学的知見や看護技術の学習に消極的な一部のスタッフがいます。自身のやり方を「昔からこうだったから」と変えようとせず、科学的根拠に基づいたケアを実践しようとする若手看護師と対立してしまうケースも見受けられます。



知識やスキルのアップデートを怠り、経験だけに固執する姿勢は、業務の「形骸化」を招きます。
もちろん、これは准看護師に限った話ではありませんが、「指示を受けて動く」という立場上、自己研鑽への意識が低いと見なされやすい傾向があるのかもしれません。このような一部の存在が、残念ながら「准看護師は学習意欲が低く、レベルが低い」というステレオタイプを助長してしまっているのです。
正看護師と准看護師の決定的な違いとできないこと
私自身も准看護師としてキャリアをスタートさせた頃、業務内容自体は正看護師とほとんど変わらないのに、見えない壁や制限を感じることが多々ありました。
ここでは、法律上の位置づけから、具体的な業務内容、そして給与やキャリアといった待遇面に至るまで、両者の決定的な違いを私の実体験も交えながら詳しく解説します。
- 法律上の位置づけと業務範囲の違い
- 准看護師にはできないことと制限される業務
- 給与や昇進における待遇の差
法律上の位置づけと業務範囲の違い
正看護師と准看護師の最も根本的な違いは、保健師助産師看護師法という法律によって定められた定義にあります。 この法律が、業務における責任と権限の範囲を明確に分けています。
| 項目 | 准看護師 | 正看護師 |
| 免許の種類 | 都道府県知事免許 | 国家資格(厚生労働大臣免許) |
| 法律上の定義 | 傷病者やじょく婦(産後の女性)に対する療養上の世話、または診療の補助を自らの判断で行うことを業とする者。 | 医師、歯科医師または看護師の指示を受けて、療養上の世話や診療の補助を行うことを業とする者。 |
この「指示を受けて」という一文が、准看護師の業務を規定する上で最も重要なポイントです。 正看護師が自らの専門的知識と判断(アセスメント)に基づいて看護を実践できるのに対し、准看護師の業務は常に医師や正看護師の指示のもとに行われる、という法的な位置づけになっています。
しかし、この位置づけも実際の現場ではかなり曖昧です。私が准看護師だった頃も、業務の幅や指示系統に境界線はありませんでした。准看護師がリーダー業務を担い、他の正看護師に指示を出す場面も日常的です。仕事ぶりから准看護師と正看護師の違いを感じることもありません。ただし、明言されてなかったものの、看護師長などの役職への昇進やプリセプターは、正看護師だけが任命されていたのは事実です。
准看護師にはできないことと制限される業務
法律上の定義の違いは、多少なりとも業務に影響を及ぼします。採血や点滴、バイタルサイン測定といった多くの日常業務は正看護師と同様に行えますが、判断を伴う業務には明確な線引きがあります。
自己判断による看護業務とアセスメント
准看護師に最も明確に「できない」とされているのが、自己の判断のみで看護業務を行うことです。 具体的には、患者の状態を観察・分析し、何が問題でどのようなケアが必要かを判断する「看護アセスメント」と、それに基づく「看護計画の立案・修正」は正看護師の独占業務とされています。
准看護師は、その計画に沿ってケアを実施することはできますが、計画そのものを作ったり、自分の判断で変更したりすることはできません。



急変時など緊急性が高い状況であっても、まずは医師や正看護師に報告し、指示を仰ぐのが原則です。
他の看護職員への指示
准看護師は本来、たとえ自分より経験の浅い正看護師が相手であっても、業務上の指示を出すことはできません。 チームリーダーや日々の業務の調整役といった役割は、必然的に正看護師が担うことになります。これも「指示を受けて」業務を行うという法的な立場からくる制限です。
管理職への就任
准看護師が看護主任や看護師長といった管理職になることは、原則としてできません。 管理職の業務には、看護計画の管理、スタッフへの指示や指導、労務管理などが含まれるため、これらの権限を持たない准看護師がその任に就くことは難しいのが現状です。
一部の特定業務の制限
例えば、訪問看護ステーションでは、管理者は保健師または看護師でなければならないと定められています。 また、単独での訪問や緊急時対応(オンコール)なども、自己判断が求められるため准看護師の業務範囲には制限がかかる場合があります。
| 業務内容 | 准看護師ができるか | 備考 |
| バイタルサイン測定・注射・採血・点滴 | ◯ | 医師または正看護師の指示のもとであれば可能 |
| 看護記録の記入 | ◯ | 実施したケアや観察項目などの事実を記録することは可能 |
| 看護アセスメント・看護計画の立案 | × | 正看護師の独占業務 |
| 後輩看護師(正・准問わず)への指示 | × | 指示を出す立場にはなれない |
| 看護主任・師長などの管理職 | × | 原則として就任できない |
給与や昇進における待遇の差
業務範囲や責任の違いは、給与や昇進といった待遇面にも直接的に反映されます。これはキャリアを考える上で非常に重要な要素です。
給与・年収の差
厚生労働省の統計調査などを見ると、正看護師と准看護師の間には明確な給与差が存在します。初任給の段階で差があるだけでなく、経験年数を重ねるごとにその差は開いていく傾向にあります。
令和6年の賃金構造基本統計調査によると、正看護師の平均年収が約519万円であるのに対し、准看護師の平均年収は約417万円と、年間で約102万円もの差が生じています。 この差は、基本給の違いに加え、資格手当の有無や額、そして賞与(ボーナス)の算定基準の違いなどから生まれます。
| 項目 | 准看護師 | 正看護師 |
| 平均年収 | 約417万1,700円 | 約519万7,000円 |
| 平均月収 | 約29万4,000円 | 約36万4,000円 |
| 平均ボーナス(年間) | 約83万5,000円 | 約64万100円 |
昇進・キャリアパスの差
前述の通り、准看護師は看護部門の管理職(主任、師長など)への昇進が原則としてできません。 そのため、現場のスペシャリストとして経験を積むことはできても、マネジメント層へのキャリアアップは難しいのが現実です。将来的に専門看護師や認定看護師といった、より専門性の高い資格を目指す場合も、まずは正看護師の資格を取得することが必須条件となります。
私自身、准看護師として数年働いた後、給与明細を見るたびに同期入社の正看護師との差を実感しました。将来のキャリアプランを考えた際に「このままでは伸びしろが少ない」という現実に直面したことが、正看護師を目指す大きなモチベーションとなりました。
准看護師として働くメリット


「准看護師はレベルが低い」といった声や、正看護師との待遇差など、ネガティブな側面に光が当たりやすい准看護師ですが、私自身の経験を振り返っても、准看護師としてキャリアをスタートすることにもメリットが存在します。将来を見据えたとき、准看護師という選択肢が持つ利点を具体的にご紹介します。
- 資格取得までが短く費用負担が抑えられる
- 働きながら正看護師を目指せるルートがある
資格取得までが短く費用負担が抑えられる
准看護師を目指す最大のメリットの一つが、正看護師に比べて短期間かつ少ない費用で資格を取得できる点です。一日でも早く医療現場で働きたい、経済的な負担を少しでも軽くしたいと考える方にとって、これは非常に大きな魅力と言えるでしょう。



特に私のように、働いて収入を得ながら資格取得を目指したい方にはベストな選択肢です。
具体的に、正看護師と准看護師の養成課程には以下のような違いがあります。
| 項目 | 准看護師養成学校 | 正看護師養成学校 |
| 最短修業年限 | 2年 | 3年(専門学校・短大)または4年(大学) |
| 学費の目安(総額) | 約100万円~200万円 | 約250万円~700万円(進学先により大きく異なる) |
| 入学要件の例 | 中学校卒業以上 | 高等学校卒業以上 |
私自身、社会人経験後に准看護師養成所に入学し、現場で給与を得ながら看護師としてのキャリアをスタートさせることができました。この時間的・経済的なアドバンテージは、私のような社会人経験者にとって大きなメリットを与えてくれます。
働きながら正看護師を目指せるルートがある
准看護師としての経験は、決してキャリアの終着点ではありません。むしろ、看護師への確実なステップアップのための重要な過程と捉えることができます。 准看護師として働きながら、正看護師を目指すための進学ルートが複数用意されているのです。
主に以下の3通りの方法があります。
- 全日制の養成学校(2年)
- 夜間定時制の養成学校(3年)
- 通信制の養成所(実務経験5年+2年)
私が選んだのは、夜間定時制の養成学校です。夕方18時〜21時までの授業なので、職場によっては正社員として働きながら通学が可能だったからです。



全日制よりも1年多くかかりますが、おかげで収入を確保したまま看護師資格を取得できました。
通信制課程へ進学するには、准看護師として7年以上の実務経験が必要でしたが、日本看護協会によると、2026年4月入学者から「5年以上」に短縮されました。 経済的な負担を抑えつつ、現場経験を途切れさせることなく上位資格を目指せるこのルートは、准看護師だからこそ選べる大きなメリットと言えるでしょう。
また、各自治体や日本看護協会、病院などが提供する奨学金制度も充実しており、経済的な支援を受けながら学ぶことも可能です。 このように、准看護師は「レベルが低い」のではなく、より実践的で、かつ柔軟なキャリアプランを描ける可能性を秘めた資格なのです。
准看護師として働くデメリット


私自身も、准看護師としてキャリアをスタートさせた一人ですが、実際に働くなかで正看護師との違いを痛感し、デメリットを感じる場面も少なくありませんでした。ここでは、私の実体験も交えながら、准看護師として働く上で直面しやすい3つのデメリットを詳しく解説します。
- 待遇差が積み上がりやすい(基本給・手当・昇給)
- 准看護師にはできないことと制限される業務
- キャリアの天井を感じやすい(役職・領域・転職)
待遇差が積み上がりやすい(基本給・手当・昇給)
准看護師として働く上で、最も大きなデメリットとして挙げられるのが、正看護師との経済的な待遇差です。同じ職場で同様の業務を行っていても、給与体系に明確な違いが存在します。
まず、基本給そのものが正看護師よりも低く設定されているケースがほとんどです。これは資格の違いによるもので、初任給の段階から差が生じます。基本給の差は、毎月の給与だけでなく、賞与(ボーナス)や退職金の算定基礎にもなるため、勤続年数が長くなるほど、生涯年収で大きな差となって表れます。
実際に私も、給与明細を見るたびに、同じ夜勤をこなしている正看護師の同僚との手当や基本給の違いに、モチベーションを維持するのが難しいと感じることがありました。
| 項目 | 准看護師 | 正看護師 | 差額 |
| 平均年収 | 約418万円 | 約508万円 | 約90万円 |
| 年間賞与など | 約63万円 | 約86万円 | 約23万円 |
※上記の数値は、各種調査データに基づく一例であり、勤務先や経験年数、地域によって異なります。
キャリアの天井を感じやすい(役職・領域・転職)
准看護師としてのキャリアを考えたとき、「キャリアの天井」を感じやすい点も大きなデメリットです。
法律・制度上の昇進の限界
保健師助産師看護師法では、准看護師は「医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて」業務を行うと定められています。 このため、自らの判断で他の看護職員に指示を出す立場である看護師長や看護部長といった管理職に就くことは、法律上できません。



多くの病院では、准看護師は主任クラスが昇進の限界となることがほとんどです。
どんなに経験を積み、知識や技術を磨いても、最終的な責任者や管理者にはなれないという現実は、長期的なキャリアプランを描く上で大きな制約となります。
キャリアアップ資格への道
さらに、高度な専門知識と技術を証明する「専門看護師」や「認定看護師」といった資格は、正看護師の免許を持っていることが取得の前提条件となっています。 准看護師のままでは、特定の看護分野のスペシャリストとしてキャリアを極める道は閉ざされています。
最新医療を提供する大学病院や特定機能病院などでは、そもそも准看護師の採用が少ない傾向にあり、活躍できる領域が限られてしまうのも実情です。
転職時の選択肢の狭さ
転職を考えた際にも、求人の多くが「正看護師」を応募資格としており、准看護師の資格では応募できる求人が限られてしまいます。特に、給与や福利厚生といった待遇の良い職場や、専門性を高められる職場は正看護師向けの求人が中心となるため、キャリアアップを目指した転職のハードルは高くなります。
業務範囲の制限がストレスになるケース
日々の業務において、法律で定められた業務範囲の制限が、精神的なストレスやジレンマにつながることも少なくありません。 准看護師は、たとえ豊富な経験と知識があったとしても、自己の判断で看護業務を行うことはできません。
例えば、患者さんの状態変化に気づき、次に行うべきケアが分かっていても、まずは正看護師に報告し、指示を仰がなければなりません。この「指示待ち」の状態が、緊急時などにはもどかしさや無力感につながることがあります。経験を重ね、アセスメント能力に自信がついてくると、「自分の判断で、もっと主体的に患者さんのために動きたい」という思いと、制度上の制約との間で葛藤が生まれます。
また、カンファレンスなどの場で、他職種と対等に意見を交わし、看護計画の立案に主体的に関わることが難しい場面もあります。看護計画の立案は正看護師の業務とされているため、あくまで補助的な役割に留まらざるを得ません。
准看護師がレベル低いと言われないための対処法


「准看護師はレベルが低い」という評価を覆し、一人の専門職として確固たる信頼を築くことは決して不可能ではありません。ここでは筆者が准看護師だった頃の経験も踏まえ、自分自身のキャリアに自信を持つための具体的な対処法を4つの視点から詳しく解説します。
- 日々の業務でアセスメント力を磨く
- 院内研修や外部セミナーに積極的に参加する
- 正看護師へステップアップするための進学を検討する
- 関連資格・研修で強みを作る
日々の業務でアセスメント力を磨く
准看護師の業務は法律上、医師や看護師の指示のもとに行うことが定められています。 しかし、これを単なる「指示待ち」と捉えるか、「指示の根拠を理解し、次の展開を予測する機会」と捉えるかで、成長の角度は大きく変わります。指示受け業務の中でも、自らの思考プロセスを止めないことがアセスメント力向上に不可欠です。
具体的には、以下の点を意識して日々の業務に取り組んでみましょう。
- 情報収集の精度を高める
- バイタルサインの数値だけでなく、患者さんの表情、声のトーン、皮膚の色つや、発言内容、食事摂取量、排泄状況など、五感をフル活用して情報を集めます。 これらの客観的情報(Oデータ)と患者さんの訴えである主観的情報(Sデータ)を統合することがアセスメントの第一歩です。
- 「なぜ?」を繰り返す習慣
- 「なぜこの指示が出たのか?」「この薬剤を投与する目的は何か?」「このケアを行うことで、どのような変化が期待できるか?」など、一つひとつの業務の根拠を常に考える癖をつけましょう。 不明な点は放置せず、先輩看護師や医師に質問することで、知識が定着し、臨床推論能力が養われます。
- 看護記録で思考を整理する
- 日々の看護記録を単なる作業報告で終わらせず、S情報・O情報から自分がどのように考え(アセスメント)、どのような計画を立てたか(プラン)を意識して記述する訓練をしましょう。 これにより、自分の思考の癖や不足している視点に気づくことができます。
- カンファレンスで発言する
- たとえ短い時間でも、自分が担当する患者さんについて収集した情報や気づいた変化を積極的に報告・提案しましょう。他職種の視点に触れることで、アセスメントの幅が格段に広がります。
これらの地道な積み重ねが、患者さんの小さな異変にいち早く気づき、的確な報告・行動ができる「頼れる准看護師」への道につながります。
院内研修や外部セミナーに積極的に参加する
医療は日進月歩であり、常に新しい知識や技術が求められます。 業務経験だけでは得られない最新の知見を学ぶために、研修やセミナーへ主体的に参加する姿勢が重要です。自己投資としての学習が、専門職としての価値を高め、周囲からの評価を変えるための重要なプロセスです。
参加を検討すべき研修には、以下のようなものがあります。
- 院内研修
- 多くの医療機関では、医療安全、感染管理、褥瘡対策、急変時対応といったテーマで定期的に研修が実施されています。これらは看護の質を担保する上で必須の知識であり、まずは院内の研修にすべて参加することを目指しましょう。
- 看護協会主催の研修
- 日本看護協会や各都道府県の看護協会では、准看護師向けの研修や交流会も企画されています。 同じ立場の仲間と学び、交流する中で、新たな目標が見つかることもあります。
- 学会や民間企業主催のセミナー
- 特定の疾患領域(例:がん看護、認知症ケア、呼吸器ケアなど)や看護技術(例:フットケア、スキンケア)に特化したセミナーも数多く開催されています。 自分の興味や職場の特性に合わせて参加することで、専門性を高めることができます。
研修で学んだことを職場で共有したり、実際のケアに活かしたりすることで、学習効果はさらに高まります。学習意欲の高い姿勢は、必ず周囲に伝わり、あなたへの信頼につながるでしょう。
正看護師へステップアップするための進学を検討する
業務範囲の制限や待遇面での格差といった問題を根本的に解決し、キャリアの可能性を最大限に広げたいと考えるなら、正看護師資格の取得が最も確実な選択肢です。正看護師資格の取得は、キャリアの天井を取り払い、自律した専門職として歩むための最も有効な手段と言えるでしょう。
准看護師から正看護師になるためには、看護師学校養成所(2年課程または3年課程)を卒業し、看護師国家試験に合格する必要があります。働きながら学べるよう、多様なルートが用意されています。
| 課程 | 修業年限 | 特徴 | 向いている人 |
| 全日制 | 2年 | 平日の昼間に授業や実習を行う最も一般的なスタイル。短期間で集中して学べる。 | 学業に専念できる環境を確保できる人。 |
| 定時制(昼間・夜間 | 3年 | 昼間または夜間の時間帯に授業が行われる。働きながら通学しやすい。 | 日中の仕事と両立しながら、対面での学習を重視したい人。 |
| 通信制 | 2年 | 准看護師としての実務経験7年以上(2026年度入学者から5年以上に短縮予定)が必要。 自分のペースで学習を進められるが、スクーリング(面接授業)や実習への参加は必須。 | 長年の実務経験があり、時間や場所の制約を受けずに学びたい人。 |
学費は年間50万円~150万円程度と学校によって幅がありますが、病院の奨学金制度や専門実践教育訓練給付金などを活用することで、経済的負担を軽減できる場合があります。 進学は簡単な決断ではありませんが、その先には管理職への道や、認定看護師・専門看護師といった専門資格への挑戦など、大きな可能性が広がっています。
»看護師の学歴の真実| 働きながら資格を取った私の経験を紹介
関連資格・研修で強みを作る
すぐに進学するのは難しいけれど、専門性を高めて自分の価値を証明したいという場合には、関連資格の取得や特定の研修の修了が有効です。「看護+α」の強みを持つことで、特定の分野で「この人に任せたい」と思われる存在となり、信頼獲得につながります。
»看護師のキャリアアップに有利な資格20選!取得のポイントも解説



准看護師としての経験を活かせる、おすすめの資格・研修をご紹介します。
特定の分野での専門性を高める資格
高齢化が進む現代の医療現場では、特に介護・福祉領域の知識を持つ看護職の需要が高まっています。
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 准看護師としての実務経験も受験資格に該当する場合があり、取得すればケアプラン作成など介護保険サービスの中心的な役割を担えます。 合格率は低い難関資格ですが、病院の退院支援部門や地域包括支援センター、居宅介護支援事業所など、キャリアの選択肢が大きく広がります。
- 認知症ケア専門士
- 認知症患者さんのケアにおいて、高度な知識と技術を持つことを証明する民間資格です。認知症ケア加算などを算定する施設で評価されやすく、チームの中心的存在として活躍できます。
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 呼吸管理に関する専門知識を持つことを示す資格で、呼吸器を装着している患者さんが多い病棟やICUなどで強みを発揮します。
特定の看護技術を証明する研修
特定の看護技術に習熟することも、専門性をアピールする上で効果的です。
- BLS/ACLSプロバイダー
- 心肺停止や重篤な不整脈など、生命の危機的状況に対応するための救命処置に関する研修です。特に救急外来やICU、手術室などで働く上で非常に役立ちます。
- エンド・オブ・ライフケア(ELC)に関する研修
- 人生の最終段階にある患者さんとその家族に対し、質の高いケアを提供するための知識と技術を学びます。緩和ケア病棟や在宅医療の現場でニーズの高いスキルです。
これらの資格や研修への挑戦は、あなた自身のスキルアップはもちろん、所属する組織への貢献にもつながり、「レベルが低い」という不当な評価を覆す確かな力となります。
まとめ


准看護師がレベル低いと言われるのは、教育課程や法律上の業務範囲の違いが主な原因であり、決して個人の資質の問題ではありません。准看護師は医療現場に不可欠な存在ですが、キャリアや待遇面で壁を感じやすいのも事実です。
レベルが低いと言われないためには、日々の業務でアセスメント力を磨き、研修に励むことが重要です。さらに、正看護師へのステップアップも視野に入れることで、より専門性を高め、活躍の場を広げることができるでしょう。




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