看護師免許を持ちながら働いていない「潜在看護師」。復職を考えていても、大きな不安や迷いを感じてしまうものです。ブランクの長さ、子育てとの両立、職場環境など、様々な理由で一歩踏み出せない方も多いのではないでしょうか?
この記事では、潜在看護師の定義や実態、復職をためらう理由について徹底的に解説します。ハローワークや日本看護協会、各病院が提供する充実したサポート体制、そして復職しやすい職場環境の選び方についても詳しくご紹介します。記事を読めば、復職への不安が軽減し、具体的な行動を起こすための自信と希望が見出せるでしょう。

実際に子育てと両立しながら復職した方や、ブランクを克服して復職した方の具体的な成功例もご紹介します。
潜在看護師とは


看護師資格を持ちながら、医療現場で働いていない人のことを「潜在看護師」と呼びます。結婚、出産、育児、介護、病気療養など、様々な理由で看護師の職を離れ、現在は就業していない状態です。ここでは、潜在看護師の定義や実態について解説します。
- 潜在看護師の定義
- 潜在看護師の実態



復職を希望している方や、将来的に復職を考えている方も潜在看護師に含まれます。
潜在看護師の定義
厚生労働省は、潜在看護師を
「衛生行政報告例で報告されている就業場所(病院・診療所・助産所・訪問看護ステーション・介護保険施設等・社会福祉施設・保健所・都道府県・市町村・事業所・看護師等学校養成所又は研究機関・その他)において、就業していない看護師および准看護師」
と定義しています。
この定義には、復職の意思の有無は含まれていません。つまり、すぐにでも復職したいと考えている人から、全く復職を考えていない人まで、幅広い層が含まれています。
潜在看護師の実態
厚生労働省の調査によると、潜在看護師の数は約80万人と推計されています。これは、日本の看護師不足を解消する上で大きな潜在力と言えるでしょう。潜在看護師の年齢層は幅広く、20代から60代まで様々です。離職期間も、数ヶ月から数十年と様々です。
潜在看護師が看護師の職を離れた理由は様々ですが、主な理由として以下のようなものが挙げられます。
- 結婚・出産・育児
- 家事や育児に専念するために離職した方が多く、特に子育て中の女性看護師の復職支援は重要な課題となっています。
- 家族の介護
- 親や配偶者の介護のために離職せざるを得ないケースも少なくありません。介護と仕事の両立支援が求められています。
- 病気療養
- 自身の病気や怪我のために離職した方もいます。健康状態に配慮した復職支援が必要です。
- 職場環境への不満
- 長時間労働や人間関係のトラブルなど、職場環境への不満から離職した方もいます。より働きやすい職場環境の整備が求められています。
- スキルアップ・キャリアチェンジ
- 専門性を高めるため、あるいは異なる分野で働くために一時的に離職した方もいます。
これらの理由に加え、ブランクへの不安や復職後の生活との両立への不安なども、潜在看護師が復職をためらう要因となっています。潜在看護師の復職を促進するためには、不安を解消するためのサポート体制の整備が不可欠です。
潜在看護師が復職をためらう理由


潜在看護師が復職をためらう理由は様々ですが、大きく分けて以下の3つが挙げられます。
- ブランクへの不安
- 子育てとの両立への不安
- 職場環境への不安
ブランクへの不安
看護師の仕事は常に新しい知識や技術が求められます。医療技術の進歩は目覚ましく、新しい医療機器や治療法、薬剤などが次々と導入されています。ブランクによってこれらの知識や技術が不足していることに不安を感じる潜在看護師は少なくありません。
医療事故のリスクへの懸念も大きな不安要素です。医療ミスをして患者さんに迷惑をかけてしまうのではないかという不安や、責任の重い仕事をこなせるかどうかの自信のなさから、復職に二の足を踏んでしまうケースも多々あります。
ブランクによって看護師としての感覚が鈍っていることへの不安も挙げられます。以前のようにスムーズに業務をこなせるか、患者とのコミュニケーションを円滑に取れるかなど、実践的なスキルに対する不安も復職への障壁です。医療安全に関する情報は常に更新されているため、ブランクがあると最新の情報を把握できていない可能性があります。



少し長めの休暇を取った後ですら、仕事についていけるか心配になることもありますよね。それが年単位なら、なお不安は大きいでしょう。
子育てとの両立への不安


子育て中の潜在看護師にとって、仕事と育児の両立は大きな課題です。特に、子どもの急な発熱や病気、学校行事などへの対応は、復職をためらう大きな要因となっています。子育てに支障が出ないか、周囲に迷惑をかけないかという不安から、復職を不安視する潜在看護師は多いです。
保育園や学童保育の利用時間との兼ね合いも問題です。勤務時間と保育時間の調整が難しい、預け先が見つからないといった理由で復職を断念するケースも少なくありません。厚生労働省の仕事と子育ての両立支援に関する情報も参考になります。
不安要素 | 詳細 |
---|---|
子どもの急な病気 | 子どもの急な発熱や病気の際に、仕事を休まなければならないことへの不安。 |
学校行事への参加 | 運動会や授業参観などの学校行事に参加できないことへの不安。 |
保育時間の制約 | 保育園や学童保育の利用時間と勤務時間の調整が難しいことへの不安。 |
預け先不足 | 希望する時間帯に預けられる保育園や学童保育が見つからないことへの不安。 |
職場環境への不安
復職を希望する潜在看護師にとって、職場環境は重要な要素です。人間関係が良好であるか、ブランクのある看護師への理解があるか、子育て中の看護師への配慮があるかなど、様々な不安を抱えています。
ブランク期間中に職場環境が変わっていることへの不安も大きいです。以前と同じように働けるかどうかわからないという不安から復職をためらうケースも少なくありません。また、新しい職場に馴染めるか、同僚や上司とうまくやっていけるかといった人間関係への不安も、復職への大きな障壁となっています。



日本看護協会のウェブサイトでは、看護師の労働環境に関する情報が提供されています。
人間関係に加えて夜勤や残業の多さ、休日の取得のしやすさなども、復職を検討する上で重要なポイントです。子育て中の潜在看護師にとっては、残業が少ない職場や柔軟な勤務形態が可能な職場が望ましいとされています。これらの条件が満たされていない場合、復職を断念せざるを得ないケースも少なくありません。
潜在看護師の復職を支援するサポート体制


潜在看護師の復職を後押しする、様々なサポート体制が存在します。ここでは、代表的な支援機関や制度、プログラムについて詳しく解説します。
- ハローワークの支援
- 看護協会の支援
- 病院独自の支援プログラム
- 保育園や学童保育などの保育支援
ハローワークの支援
ハローワークでは、潜在看護師を含む求職者に対し、様々な就職支援サービスを提供しています。看護師の復職支援に特化した相談窓口を設けている場合もあり、経験豊富な職員が個別の相談に応じてくれます。



ハローワークは求人情報の提供だけでなく、履歴書の書き方や面接対策などの指導も受けられます。
再就職支援セミナーや研修なども開催しており、ブランクのある看護師のスキルアップや復職準備をサポートしています。さらに、条件を満たす場合は、職業訓練の受講料などが支給される制度も利用可能です。
看護協会の支援


各都道府県の看護協会も、潜在看護師の復職支援に力を入れています。復職相談窓口では、看護師経験を持つ相談員が、それぞれの状況に合わせたアドバイスや情報提供を行っています。
研修会やセミナーを開催し、最新の医療知識や技術の習得を支援しています。さらに、復職に関する情報誌の発行やウェブサイトでの情報提供も行っており、幅広い情報を提供しています。
※参考:日本看護協会「eナースセンター」
病院独自の支援プログラム
多くの病院では、潜在看護師の復職を促進するため、独自の支援プログラムを設けています。院内研修やプリセプター制度などを通して、ブランクのある看護師のスキルアップをサポートしています。
短時間勤務や夜勤免除などの柔軟な勤務形態を導入し、子育て中の看護師が働きやすい環境づくりにも取り組んでいます。その他、託児施設の完備や子育て支援金制度などを設けている病院も多いです。



院内託児所が設置されている病院は多いです。ブランク明けの看護師に向けた研修プログラムを用意しているケースもあるため、昔と比べて復帰しやすい環境が整っています。
プログラム例 | 内容 |
---|---|
再就職支援研修 | 病院の業務内容や医療機器の使い方などを学ぶ研修 |
プリセプター制度 | 先輩看護師がマンツーマンで指導する制度 |
キャリアカウンセリング | 今後のキャリアプランについて相談できる機会 |
保育園や学童保育などの保育支援
子育て中の潜在看護師にとって、保育施設の確保は復職の大きな課題です。地域によっては認可保育園は入園が難しい場合もあります。自治体が運営する保育ママ制度や、民間企業が運営する認可外保育園などを利用するケースも多いです。
小学校入学後は、学童保育を利用することで、放課後の子どもの預け先を確保できます。これらの保育支援制度を活用することで、子育てと仕事の両立が可能になります。



私の場合も夫婦共働きでした。子供が小学校に上がるまでは、当時勤務していた病院の院内保育施設を利用していました。
さまざまなサポート体制を有効に活用することで、潜在看護師はスムーズに復職への道を歩むことができます。自分にあった支援制度を見つけることが、復職成功への第一歩です。
潜在看護師が復職しやすい職場環境とは


ブランクへの不安や子育てとの両立など、様々な悩みを抱える潜在看護師にとって安心して働ける環境が整備されているかどうかは、復職の大きな決め手となります。ここでは、潜在看護師が復職しやすい職場環境の3つの特徴を解説します。
- ブランクのある看護師への研修制度
- 子育て中の看護師への配慮
- 柔軟な勤務形態
ブランクのある看護師への研修制度
ブランクのある看護師にとって、最新の医療技術や知識を学ぶ機会は不可欠です。復職しやすい職場は、段階的な研修プログラムを用意し、個々のスキルや経験に合わせた学習をサポートしています。eラーニングや院内研修、外部研修への参加補助など、以下のような学習機会を提供することで、スムーズな復職を支援します。
- 新人研修に準じたプログラム
- 専門分野に特化した研修
- 技術演習
- プリセプター制度
- eラーニングシステム



さまざまな研修制度を通して、自信を持って業務に取り組めるようになり、復職後の不安軽減に繋がります。
子育て中の看護師への配慮
子育て中の看護師にとって、仕事と育児の両立は大きな課題です。復職しやすい職場は、子育てを支援する様々な制度を設けています。例えば、院内保育所の設置や保育料補助、病児保育の利用支援など、子育て中の看護師が安心して働ける環境づくりに取り組んでいます。
制度 | 内容 |
---|---|
院内保育所 | 病院内に保育所を設置し、子どもを預けながら働くことができる |
保育料補助 | 保育料の一部または全額を補助 |
病児保育 | 子どもが病気の際に預けられる保育施設の利用を支援 |
時短勤務制度 | 勤務時間を短縮して働くことができる |
フレックスタイム制度 | コアタイム以外の勤務時間を自由に設定できる |
これらの制度に加えて、急な子どもの病気や学校行事への柔軟な対応も、子育て中の看護師にとって重要なポイントです。同僚同士で協力し合える雰囲気や、上司の理解がある職場であれば、安心して仕事と育児を両立できます。



子どもの急な体調不良は、子育て中の人には必ずといって良いほど起こりますよね。職場に同じ子育て中の同僚がいるかどうかもチェックすべきポイントです。
参考:日本看護協会
柔軟な勤務形態


潜在看護師の中には、フルタイム勤務が難しい人もいます。復職しやすい職場は、多様な勤務形態を用意し、個々の事情に合わせた働き方を提供しています。常勤だけでなく、非常勤やパートタイム、夜勤専従など、様々な選択肢を用意することで、より多くの潜在看護師が復職しやすい環境を整えています。主な勤務形態は、以下のとおりです。
- 常勤
- 非常勤
- パートタイム
- 夜勤専従
- 日勤のみ
- 短時間勤務
また、勤務時間や日数の調整にも柔軟に対応することで、家庭の事情やライフスタイルの変化に合わせて働き続けることができます。柔軟な勤務形態は、復職後の継続的な就業を支援する上で重要な役割を果たします。
潜在看護師の復職成功例


潜在看護師の復職には様々な不安が伴いますが、実際に復職を果たした方々の成功例を知ることで、勇気と希望を持つことができます。ここでは、異なる背景を持つ2名の看護師の復職ストーリーをご紹介します。



実際にクラウドソーシングサービスで、ブランク明けで転職した看護師さんから体験談を募集しました。ぜひ参加にしてください!
子育てと両立しながら復職したAさんのケース
Aさんの復職前の状況
Aさんは、3人のお子さんを育てながら、約10年間のブランクを経て復職を目指しました。ブランクの長さから、看護技術や知識の衰えに不安を感じており、子育てとの両立にも大きな不安を抱えていました。
特に、小学校低学年のお子さんの送迎や、急な病気への対応などに大きな不安を抱えていたそうです。収入面での不安もあり、家族の理解と協力が不可欠な状況でした。



旦那さんの仕事が忙しく、しばらくの間は専業主婦として過ごしていたそうです。
Aさんが選んだ病院のサポート体制
Aさんは、子育て中の看護師へのサポートが充実している大規模病院を選びました。院内保育所が完備されているだけでなく、病児保育の利用も可能でした。さらにその病院では、段階的な復職支援プログラムが用意されており、個々のスキルや経験に合わせて研修を受けることができました。
子育て中の看護師同士の交流会も開催されており、情報交換や悩み相談ができる環境も魅力だと話しています。
Aさんの現在の状況
Aさんは現在週4日、日勤のみの勤務で、子育てと両立しながらやりがいを感じて働いています。復職当初は不安もありましたが、同僚のサポートや理解ある職場環境のおかげで、スムーズに職場に馴染むことができたそうです。子育て中の看護師が多い職場なので、急な子供の病気などにも柔軟に対応してもらえるため、安心して働くことができています。



同じ境遇の同僚がいることが、とても心強かったそうです。
ブランクを克服して復職したBさんのケース
Bさんの復職前の状況
Bさんは、結婚を機に看護師を退職し、7年間のブランクがありました。復職を決意したものの、最新の医療技術や知識の習得、ブランクに対する不安が大きく、復職への一歩を踏み出せずにいました。医療機器の進化や電子カルテの導入など、以前とは異なる医療現場への適応に不安を感じていたそうです。
年齢的な不安もあり、新しい環境に馴染めるかどうかも心配でした。



この時点で40代に突入していたBさん。看護師経験も3年ほどだったので、ブランク期間の方が長い状態でした。
Bさんが選んだ病院のサポート体制
Bさんは、ブランクのある看護師向けの研修制度が充実している、都内の大学病院を選びました。その大学病院では、最新の医療技術や知識を学ぶための研修プログラムが用意されており、個々のレベルに合わせた学習が可能だったそうです。
プリセプター制度も導入されており、経験豊富な先輩看護師からマンツーマンで指導を受けることができました。さらに、復職後のキャリアプランについても相談できる体制が整っており、将来のキャリアビジョンを描くことができました。
Bさんの現在の状況
Bさんは現在、希望していた病棟で、日勤のみで勤務しています。復職当初は戸惑うこともありましたが、研修やプリセプターのサポートのおかげで、ブランクを克服し、自信を持って働くことができているそうです。同僚からの温かい歓迎を受け、すぐに職場に馴染むことができました。今では後輩看護師の指導にも携わるなど、キャリアアップも実現しています。
項目 | Aさん | Bさん |
---|---|---|
ブランク期間 | 10年 | 7年 |
復職の動機 | 経済的な理由、社会貢献 | 自己実現、キャリアアップ |
主な不安 | 子育てとの両立、技術・知識の衰え | 技術・知識の衰え、新しい環境への適応 |
選んだ病院 | 大規模病院 | 都内の大学病院 |
病院のサポート体制 | 院内保育所、病児保育、復職支援プログラム、子育て中の看護師の交流会 | ブランクのある看護師向けの研修、プリセプター制度、キャリア相談 |
現在の状況 | 週4日勤務、子育てと両立して勤務 | 希望病棟での勤務、キャリアアップを実現 |
ここで紹介した成功例は、潜在看護師が復職を実現できることを示しています。それぞれの状況に合ったサポート体制を活用することで、ブランクや子育てといった不安を乗り越え、再び看護師として活躍することが可能です。



諦めずに一歩踏み出す勇気を持つことが大切です。
まとめ


この記事では、潜在看護師の復職を支援する様々なサポート体制と、実際に復職に成功した方々の事例を紹介しました。潜在看護師が復職をためらう理由として、ブランクへの不安、子育てとの両立、職場環境への不安などが挙げられます。
ハローワークや看護協会、病院独自のプログラムなど、様々な支援策が存在します。保育園や学童保育などの保育支援も利用可能です。
復職しやすい職場環境としては、ブランクのある看護師への研修制度、子育て中の看護師への配慮、柔軟な勤務形態などが重要です。今回紹介した事例からも分かるように、自分に合ったサポート体制と職場環境を選ぶことが、復職成功の鍵となります。



潜在看護師の方々が安心して復職できるよう、社会全体で支援していくことが重要です。
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