医師不足が深刻化する日本の医療現場で、新たな医療提供体制を支える存在として注目されている診療看護師(NP:ナースプラクティショナー)。特定行為研修を修了した看護師とは異なる位置づけであり、そのキャリアパスや将来性も気になるところです。
本記事では、診療看護師を取得するための条件や方法、実際の役割や給料事情まで、詳しく解説します。一般の看護師からステップアップを目指す人、医療現場でより専門性の高い役割を担いたい人にとって、診療看護師への道のりと実際の働き方がわかる完全ガイドです。

資格取得のための教育機関情報や実際の体験談も交えながら、診療看護師を目指す方の疑問にお答えします。
診療看護師(NP)とは


診療看護師(Nurse Practitioner: NP)とは、一般の看護師よりも高度な医学知識と技術を持ち、医師の包括的指示のもとで特定の医療行為を実施できる看護師のことです。医師不足や地域医療の課題に対応するため、より幅広い医療ケアを提供できる専門職として注目されています。診療看護師について、以下の手順で解説します。
- 診療看護師の定義と役割
- 診療看護師と特定行為研修修了者の違い
- 診療看護師と認定看護師・専門看護師の違い
- 日本における診療看護師制度の現状
診療看護師の定義と役割
診療看護師は、一般的な看護業務に加えて、医師の包括的指示の下で診察や検査オーダー、薬の処方、一部の医療処置などを行うことができる専門性の高い看護師です。その主な役割は以下のとおりです。
主な役割 | 具体的な内容 |
---|---|
診療補助 | フィジカルアセスメント、検査オーダー、検査結果の評価など |
医療処置 | 特定行為(気管挿管、中心静脈カテーテル挿入など)の実施 |
薬物療法 | 医師の包括的指示下での薬剤選択、投与量調整など |
患者教育 | 疾病管理、生活指導、服薬指導など |
チーム医療 | 医師と看護師の橋渡し役、多職種連携の推進 |
診療看護師は医師と看護師の中間的な立場として、医師の負担軽減と看護の質向上の両面に貢献します。特に地方や僻地などの医師不足地域において、適切な医療を確保するための重要な役割を担っています。
診療看護師と特定行為研修修了者の違い
診療看護師と特定行為研修修了者は混同されがちですが、厳密には異なります。
特定行為研修修了者とは、2015年10月から始まった厚生労働省が定める「特定行為研修制度」を修了した看護師のことを指します。一方、診療看護師(NP)は大学院等のNP養成課程を修了した看護師を指すことが一般的です。
項目 | 診療看護師(NP) | 特定行為研修修了者 |
---|---|---|
教育課程 | 大学院修士課程(2年間) | 特定行為研修(区分によって期間が異なる) |
法的位置づけ | 公的資格ではない(民間資格) | 厚生労働省が認める公的な研修制度 |
実施できる行為 | 包括的な医療行為(研修内容による) | 38区分21行為の特定行為(取得区分による) |
厚生労働省の特定行為研修制度によれば、特定行為研修は特定の医療行為に焦点を当てた研修であるのに対し、診療看護師の養成課程はより包括的な診療能力の育成を目指しています。



も多くの診療看護師は特定行為研修の内容も学んでいるため、重複する部分も多いのが現状です。
診療看護師と認定看護師・専門看護師の違い
日本の看護師の専門資格には、診療看護師のほかに認定看護師と専門看護師があります。主な違いは、以下のとおりです。
資格 | 目的・焦点 | 教育期間 | 認定機関 |
---|---|---|---|
診療看護師(NP) | 診療補助・特定行為の実施 | 2年(大学院修士課程) | 各教育機関(統一した認定団体なし) |
専門看護師(CNS) | 特定分野における高度な看護実践・相談・調整・倫理調整・教育・研究 | 2年(大学院修士課程) | 日本看護協会 |
認定看護師(CN) | 特定の看護分野における熟練した看護技術・知識を用いた水準の高い看護実践 | 6か月以上(認定看護師教育課程) | 日本看護協会 |
専門看護師が特定分野における高度な看護実践・指導・相談などを行うのに対し、診療看護師は医師の業務の一部を担うのが役割です。認定看護師は特定の看護分野での実践能力に特化しています。診療看護師は「キュア(治療)」の側面が強いのに対し、専門看護師と認定看護師は「ケア」に重点を置いている点が大きな違いです。
日本における診療看護師制度の現状


日本における診療看護師(NP)制度は、まだ発展途上の段階にあります。欧米諸国、特にアメリカではNP制度が確立されていますが、日本では法的な位置づけが明確ではなく、統一された資格制度も存在していません。現在の日本における診療看護師の現状は以下のとおりです。
- 2008年に東京医療保健大学大学院が日本初のNP養成コースを開設
- 2010年頃から複数の大学院でNP養成プログラムが開始
- 2015年に特定行為研修制度が始まり、法的な裏付けのある研修制度として普及
- 2024年9月末時点で特定行為研修修了者は約11,441名(厚生労働省の資料による)
現状の課題
- 法的位置づけが不明確であり、医師法との整合性の問題
- 統一された資格認定制度の不在
- 診療看護師の活用に関する医療機関や医師の理解不足
- 診療報酬上の評価が十分ではない
- 教育機関や養成プログラムの地域格差
医師の働き方改革や地域医療の課題解決のため、診療看護師の役割拡大が期待されている一方で、医療安全や質の担保についての議論も続いている状況です。日本看護系大学協議会や日本NP教育大学院協議会などが中心となり、診療看護師の質の統一と向上に向けた取り組みが進められています。



欧米諸国と比較するとまだ発展途上ですが、今後さらなる制度の整備と普及が期待されています。
診療看護師になるには?資格取得のステップ


診療看護師(NP:ナースプラクティショナー)になるためには、いくつかの段階を経る必要があります。ここでは、看護師から診療看護師へとキャリアアップするための具体的なステップを解説します。
- 診療看護師になるための必須条件
- 診療看護師養成課程のある教育機関
- 養成課程での学習内容と期間
- 資格取得までにかかる費用
診療看護師になるための必須条件
診療看護師を目指すには、まず基本的な条件を満たす必要があります。日本NP教育大学院協議会(JNCPN)の認定を受けるには、以下の条件をクリアしなければなりません。
1.必要な実務経験年数
診療看護師になるためには、通常5年以上の臨床経験が必要です。基本的な看護技術と知識を身につけ、さまざまな臨床状況に対応できる能力を養うために設定されています。実務経験の内訳としては、以下のような臨床経験が評価されます。
- 急性期医療現場での勤務経験
- クリティカルケア部門での経験
- 外来診療における経験
- 地域医療・在宅医療での経験
特に救急医療や集中治療室などの高度医療現場での経験は、診療看護師として活動する上で貴重な基盤です。多くの養成機関では、幅広い臨床経験を持つ看護師を優先的に選考する傾向があります。
2.基礎的な看護資格要件
診療看護師を目指すための基本的な資格要件は以下の通りです。
- 看護師免許の保有(必須条件)
- 学士(看護学)の学位取得(多くの大学院進学に必要)
- 特定の専門分野における認定・専門看護師資格(あれば優遇される場合が多い)
最近では、より高度な医療判断と実践能力を証明するために、特定行為研修を修了していることが望ましいとされています。この研修は厚生労働省が認定したプログラムであり、特定の医療行為を実施できる看護師の育成を目的としています。
診療看護師養成課程のある教育機関


日本では、診療看護師を養成する教育機関は限られています。現在、以下の大学院が主な養成機関として知られています。
教育機関名 | プログラム名 | 修学期間 | 特徴 |
---|---|---|---|
東京医療保健大学大学院 | 看護学研究科 NP養成コース | 2年間 | 日本初のNP養成コース |
国際医療福祉大学大学院 | 医療・生命薬科学研究科 NP養成分野 | 2年間 | 特定行為研修も同時修了可能 |
北海道医療大学大学院 | 看護福祉学研究科 NP養成コース | 2年間 | 地域医療に強い人材育成 |
聖路加国際大学大学院 | 看護学研究科 プライマリケアNPコース | 2年間 | プライマリケアに特化 |
これらの教育機関では、すべて修士課程(大学院)レベルでの教育が提供されており、修了後は修士号が授与されます。各養成機関によって入学試験の内容や教育内容に特色があるため、自分の目指す方向性に合った教育機関を選ぶことが重要です。
入学選考では、臨床経験や志望動機、将来のビジョンなどが重視されます。事前にオープンキャンパスや説明会に参加して、情報収集することをおすすめします。日本NP教育大学院協議会のウェブサイトでは、認定プログラムの最新情報を確認することができます。
養成課程での学習内容と期間
診療看護師養成課程では、高度な医学知識と臨床判断能力を身につけるための専門的なカリキュラムが組まれています。修学期間は基本的に2年間で、以下のような内容を学びます。
- フィジカルアセスメント(身体診察)
- 病態生理学・薬理学
- 臨床推論と診断学
- 特定行為に関連する知識と技術
- 医療倫理と法的側面
- 医療安全管理
- 臨床実習(外来・病棟・救急など)
カリキュラムは理論学習(講義)と実践学習(実習)がバランスよく組み合わされており、通常1年次で基礎的な理論を学び、2年次で実践的な臨床実習を行います。臨床実習では、医師の指導のもとで実際の医療現場での診療補助を経験します。



多くの養成課程では、厚生労働省の特定行為研修の内容も含まれており、特定行為研修修了者としての認定も受けられるようになっています。
最終学年では、修士論文や臨床研究プロジェクトへの取り組みを求められることが多く、エビデンスに基づいた実践(EBP)の能力も養成されます。
学年 | 主な学習内容 | 時間数(目安) |
---|---|---|
1年次 | 基礎医学(解剖学・生理学・薬理学)、臨床診断学、フィジカルアセスメント、病態生理学、研究方法論 | 約800時間 |
2年次 | 臨床実習(内科、外科、救急など)、特定行為実習、修士論文・研究 | 約1000時間(うち臨床実習600時間以上) |
資格取得までにかかる費用


診療看護師になるためには、大学院での教育費用のほか、さまざまな経費がかかります。以下に主な費用項目を示します。
費用項目 | 金額(目安) | 備考 |
---|---|---|
入学金 | 20万円〜30万円 | 大学院により異なる |
授業料 | 年間80万円〜150万円 | 私立大学の場合は高額になる傾向 |
教材費・実習費 | 年間10万円〜20万円 | シミュレーター使用料、実習器材費を含む |
NP資格認定試験料 | 約3万円 | 日本NP教育大学院協議会の認定試験 |
特定行為研修関連費用 | 0円〜30万円 | カリキュラムに含まれる場合と別途必要な場合がある |
2年間の修学にかかる総費用は、おおよそ200万円〜400万円程度と考えておく必要があります。ただし、勤務先の病院が学費を援助するケースや、日本学生支援機構の奨学金制度を利用できる場合もあります。
社会人学生向けの夜間・週末コースや長期履修制度を設けている大学院もあります。働きながら学ぶことで、経済的負担の軽減も可能です。文部科学省の専門実践教育訓練給付金の対象となるプログラムもあり、条件を満たせば最大で学費の70%が支給される制度も活用できます。



資格取得後のキャリアアップによる収入増加を考えると、教育投資としての価値は十分にあるといえるでしょう。
診療看護師の具体的な業務内容


診療看護師(NP: Nurse Practitioner)は、一般の看護師よりも高度な医療行為を担うことができる医療専門職です。診療看護師が実際にどのような業務を行うのか詳しく解説します。
- 医師の指示のもとで行える医療行為
- 特定行為38区分とは
- 一般看護師との業務範囲の違い
- 具体的な活躍の場
医師の指示のもとで行える医療行為
診療看護師は、医師の包括的指示のもと、さまざまな医療行為を実施できます。包括的指示とは、医師があらかじめ示す一般的な指示のことで、その範囲内であれば個別の指示を待たずに診療看護師が判断して医療行為を行えるものです。これにより迅速な医療提供が可能になります。
診療看護師が行える医療行為には、以下があります。
- 身体診察(フィジカルアセスメント)
- 検査オーダーの判断と実施
- 検査結果の評価
- 診断の補助
- 治療計画の立案と実施
- 特定行為(38区分21行為)の実施
- 処方の提案(処方権はない)
- 患者教育と疾病管理
ただし、診療看護師であっても最終的な診断確定や手術などの侵襲性の高い処置は行えません。また、厚生労働省が定める特定行為に関しては、特定行為研修を修了していることが必要です。
特定行為38区分とは
特定行為とは、2014年に成立した「保健師助産師看護師法」の改正により定められた、診療の補助です。看護師が行う場合には実践的な理解力、思考力、判断力等が特に必要とされます。
特定行為は現在、21行為38区分に分類されています。診療看護師はこれらの特定行為を行うための研修を受けていることが多いですが、すべての診療看護師が全区分の研修を修了しているわけではありません。
区分 | 主な特定行為例 |
---|---|
呼吸器関連 | 気管カニューレの交換、人工呼吸器の設定変更 |
循環動態関連 | 一時的ペースメーカーの操作・管理、中心静脈カテーテルの抜去 |
栄養及び水分管理関連 | 中心静脈カテーテルによる栄養管理、経腸栄養の投与管理 |
創傷管理関連 | 褥瘡・慢性創傷の壊死組織の除去、陰圧閉鎖療法の実施 |
感染管理関連 | 感染徴候がある創傷の治療 |
薬剤投与関連 | 持続点滴中の薬剤の調整、臨時薬の投与 |
血糖管理関連 | インスリン投与量の調整 |
その他 | 動脈血ガス分析、腹腔ドレーン管理など |



これらの特定行為を修得することで、在宅・急性期・外来など様々な場面での対応力が強化されます。
一般看護師との業務範囲の違い


診療看護師と一般看護師の間には、業務範囲に明確な違いがあります。診療看護師は医師の包括的指示のもと、一定の診療の補助行為を一般看護師よりも広い範囲で実施できることが最大の違いです。病態の評価や治療方針の提案など、医師との協働において積極的な役割を担います。以下に主な違いを整理します。
項目 | 一般看護師 | 診療看護師 |
---|---|---|
フィジカルアセスメント | 基本的な身体評価 | 高度な身体診察と所見の解釈 |
検査オーダー | 医師の具体的指示に基づく実施 | 必要な検査の判断と提案 |
治療計画 | 医師の指示に基づくケア計画立案 | 疾患の病態評価と治療計画の提案 |
処置・特定行為 | 基本的処置と特定行為研修修了者は修了した範囲内で実施 | 幅広い特定行為の実施と変化に応じた調整 |
薬剤投与 | 医師の具体的指示による投与 | 症状に応じた薬剤の選択・提案と投与量調整 |
患者教育 | 基本的な生活指導と服薬指導 | 疾患メカニズムに基づく高度な患者教育と自己管理支援 |
厚生労働省によると、特定行為研修を修了した看護師は2024年時点で11,441人とされ、その中でも診療看護師(NP)教育を受けた看護師はさらに少ない現状があります。



厚生労働省の特定行為に関する情報でも詳しく解説されています。
具体的な活躍の場
診療看護師はさまざまな医療現場で活躍しています。その役割は配置される場所によって異なりますが、いずれも高度な知識と技術を活かした業務が期待されています。
1.病院での活躍
大学病院や総合病院では、診療看護師は以下のような場で活躍しています。
- 救急外来:初期トリアージや緊急度評価、検査オーダーの提案など
- 集中治療室:人工呼吸器管理、循環動態の評価と治療提案
- 一般病棟:特定行為を含む高度な医療処置の実施、病棟管理
- 外来部門:慢性疾患患者の継続的評価と治療管理
- 手術室:周術期管理、術前評価の実施
特に医師不足が問題となっている救急医療や集中治療の現場では、診療看護師が医師と連携することで、医療の質を維持しながら医師の負担軽減に貢献しています。
2.クリニックでの活躍
診療所やクリニックでは、以下のような役割を担っています。
- 初期評価:来院患者の初期評価と検査計画の立案
- 慢性疾患管理:糖尿病や高血圧などの生活習慣病患者の継続的管理
- 処置室業務:創傷管理や簡単な外科的処置の実施
- 患者教育:疾患管理や生活指導
医師の一人体制のクリニックでは、診療看護師の存在が医師の負担軽減と診療の効率化に大きく貢献しています。
3.在宅医療での活躍
在宅医療の現場では、医師の訪問頻度が限られるなかで、診療看護師が以下のような役割を担います。
- 定期的な訪問診療の補助:状態評価と報告
- 緊急時の対応:症状変化時の評価と初期対応
- 特定行為の実施:褥瘡処置、気管カニューレ交換など
- 終末期ケア:症状緩和のための投薬調整提案
- 多職種連携:ケアマネージャーや訪問看護師との連携調整



在宅医療の需要増加に伴い、診療看護師の役割がますます重要になってきています。
4.その他の活躍の場
上記以外にも、診療看護師は以下のような場で活躍しています。
- 企業の健康管理部門:従業員の健康管理と一次予防
- へき地医療:医師不足地域での医療提供
- 災害医療:災害現場での初期評価と処置
- 教育機関:次世代の看護師や診療看護師の育成
診療看護師は、様々な医療現場で高度な知識と技術を駆使して活躍しています。医療制度の変化や地域医療の課題に対応するため、今後もその役割はさらに拡大していくことが期待されています。
診療看護師になるメリットと魅力


診療看護師(NP)になることは、看護師としてのキャリアに大きなメリットがあります。ここでは、診療看護師になることで得られる具体的なメリットと魅力について詳しく解説します。
- 専門性の高いキャリア形成
- 患者ケアにおける裁量権の拡大
- 医療チームでの存在価値の向上
- 地域医療への貢献可能性
専門性の高いキャリア形成
診療看護師は、一般の看護師よりも高度な医学的知識と技術を持ち、専門性の高いキャリアを形成することができます。診療看護師になることで、医学的診断プロセスや治療計画の立案に関わる知識・技術を習得できるため、より専門的な医療人材としての成長が可能です。具体的なメリットには以下があります。
- 医学知識の体系的な習得
- 高度な医療技術の獲得
- クリニカルリーズニング(臨床推論)能力の向上
- 他の医療職からの専門的認知の獲得
- 自己実現とやりがいの向上
日本NP教育大学院協議会によると、診療看護師の養成課程では、一般的な看護教育では深く学ばない内容まで踏み込んで学ぶことができます。



診療看護師になれば、より専門性の高いキャリアパスを形成することが可能です。
患者ケアにおける裁量権の拡大


診療看護師になることで、一般看護師と比較して患者ケアにおける裁量権が大幅に拡大します。これにより、患者さんのニーズに迅速かつ効果的に対応できるようになります。
特定行為研修を修了した診療看護師は、医師の包括的指示のもとで特定行為を実施できるため、患者が必要とするケアをタイムリーに提供することが可能になります。これは患者アウトカムの改善にも貢献します。
具体的な裁量権の例としては、以下が挙げられます。
項目 | 一般看護師 | 診療看護師 |
---|---|---|
点滴ルートの確保 | 医師の直接指示が必要 | 包括的指示で実施可能 |
投薬量の調整 | 医師が決定 | プロトコルに基づき調整可能 |
検査オーダー | 医師が決定 | 状況に応じて提案・実施可能 |
処置の実施判断 | 限定的 | 幅広い判断が可能 |
厚生労働省の特定行為に係る看護師の研修制度によると、この制度によって診療看護師の裁量権が法的に認められることで、より質の高い医療サービスを提供することが可能になっています。
医療チームでの存在価値の向上
診療看護師は、医師と看護師の橋渡し的な役割を担うことで、医療チーム内での存在価値が大きく向上します。
多職種連携において、医学的知識と看護ケアの両方に精通した専門職として、チーム医療のキーパーソンとなることができます。医師の視点と看護の視点の両方を理解できるため、より効果的なチーム医療の推進役となれるのです。
医療チーム内での診療看護師の価値は、以下の点に表れます。
- 医師と看護師の間のコミュニケーションギャップの解消
- 医学的判断と看護ケアの統合的提供
- チーム医療における調整役としての機能
- 若手看護師の臨床教育・指導的役割
- 他職種への医学的説明や教育的役割
地域医療への貢献可能性
診療看護師は、特に医師不足が課題となっている地域医療において大きな貢献が期待されています。医師の少ない地域や施設において、診療看護師は医師の診療を補完し、多くの患者の医療アクセス向上に貢献できます。特に過疎地域や在宅医療の現場では、その専門性を最大限に活かすことができるでしょう。
地域医療における診療看護師の貢献例
- へき地診療所での初期対応と判断
- 訪問診療・訪問看護における医療ケアの質向上
- 高齢者施設での医療的ケアの充実
- プライマリケアにおける慢性疾患管理
- 救急搬送の適正化への貢献
地域医療における診療看護師の役割は、単に医師の代わりではありません。医師と連携しながら、地域住民の健康を守るための重要な存在です。



高齢化が進む日本において、診療看護師の必要性はますます高まっています。
医療過疎地域での活躍


医師の不足している地域では、診療看護師の存在がより重要性を増します。
医療過疎地域では、診療看護師が医師との連携のもと、初期診断や慢性疾患の経過観察などを担当することで、限られた医療リソースを効率的に活用することができます。これにより、地域住民は必要な医療を適切なタイミングで受けることが可能になります。
特に離島や山間部などの医療過疎地域では、診療看護師の活躍の場が広がっています。
在宅医療現場での重要性
高齢化社会において重要性を増す在宅医療の分野でも、診療看護師の専門性は大きな価値を持ちます。在宅医療の現場では、医師が常駐できない状況が多いです。診療看護師が医師と連携しながら高度な医療判断と看護ケアを提供することで、患者さんは安心して在宅療養を続けることができます。
具体的には、病状の変化に応じた投薬調整や、創傷ケア、医療機器の管理などが挙げられます。



医学的知識を要する処置を、医師の包括的指示のもとで実施することが可能です。
診療看護師の給料事情


医療現場での高度な専門性と責任を持つ診療看護師(NP)は、一般看護師と比較して給与面でも違いがあります。ここでは診療看護師の収入事情について詳しく解説します。
- 診療看護師の平均年収
- 一般看護師との給与差
- 勤務先や経験年数による収入の違い
- 給与アップを実現するためのポイント
診療看護師の平均年収
診療看護師の平均年収は、一般的な看護師よりも高い傾向にあります。日本での診療看護師(NP)や特定行為研修修了者の平均年収は、およそ500万円〜700万円程度と言われています。ただし、勤務する医療機関の規模や地域、経験年数によって大きく差があります。
特定行為研修修了者として認定を受けた看護師は、その専門性に対する評価として手当が支給されるケースが増えています。手当は月額1万円〜3万円程度のことが多く、年収にすると12万円〜36万円の上乗せとなります。



厚生労働省の調査によると、看護師全体の平均年収が約508万円です。このことから、診療看護師の専門性が給与面でも評価されていることがわかります。
一般看護師との給与差
診療看護師と一般看護師の給与差は、主に以下の要素から生じています。
項目 | 一般看護師 | 診療看護師(NP) |
---|---|---|
基本給 | 標準的 | やや高め |
資格手当 | なし〜少額 | 月1万円〜3万円程度 |
役職手当 | 役職による | 役職+専門性による |
残業手当 | あり | あり(場合によっては多い) |
夜勤手当 | あり | あり(夜勤が少ないケースも) |
一般的に、診療看護師は特定行為研修修了などの専門性を評価され、基本給や手当において一般看護師よりも優遇されるケースが多くなっています。特に大学病院や高度医療を提供する病院では、診療看護師としての技能に対する評価が給与に反映されやすい傾向があります。



日本NP教育大学院協議会の調査によると、診療看護師の60%以上が基本給にプラスで資格手当が支給されます。
勤務先や経験年数による収入の違い


診療看護師の収入は、勤務先の種類や規模、地域、そして経験年数によって大きく異なります。
勤務先による収入差
勤務先 | 年収目安 | 特徴 |
---|---|---|
大学病院・特定機能病院 | 550万円〜750万円 | 専門性が高く評価され、手当が充実 |
一般総合病院 | 500万円〜650万円 | 病院規模により差がある |
クリニック | 450万円〜600万円 | 医師の右腕として重宝される場合は高給のケースも |
訪問看護ステーション | 500万円〜700万円 | 在宅医療での高度な判断が求められ評価される |
企業(産業保健師など) | 550万円〜800万円 | 大企業では高待遇のケースが多い |
経験年数による収入差
診療看護師としての経験が長くなるほど、収入も上昇する傾向があります。
- 資格取得直後(1〜2年目):480万円〜550万円程度
- 中堅(3〜5年目):550万円〜650万円程度
- ベテラン(6年目以上):650万円〜800万円程度
医師との信頼関係が構築され、チーム医療の中核として活躍するベテラン診療看護師は、年収800万円を超えるケースも珍しくありません。管理職としての役割も担う場合は、さらに収入が増加します。



厚生労働省の特定行為に係る看護師の研修制度の推進により、今後さらに処遇改善が進むことが期待されています。
給与アップを実現するためのポイント
診療看護師としてより高い収入を得るためには、以下のポイントが重要です。
専門性のさらなる向上
特定行為研修修了後も、継続的に専門分野の知識と技術を高めることが重要です。特に、以下の分野での専門性は高く評価されます。
- 救急医療
- 集中治療
- 在宅医療
- 慢性期疾患管理
- 周術期管理



これらの分野における実績と経験は、給与アップ交渉の際の重要な材料となります。
複数の特定行為区分の取得
特定行為区分を複数取得することで、医療現場での活躍の幅が広がります。それに比例して給与面での評価も高まるでしょう。特に需要の高い特定行為区分(例:栄養および水分管理に係る薬剤投与関連、感染に係る薬剤投与関連など)の修了は収入アップに直結しやすいでしょう。
キャリアパスの戦略的な選択
給与面で優遇されやすい勤務先や職位を目指すことも重要です。
- 特定機能病院やセンター病院での専門看護師としての勤務
- 診療看護師チームのリーダーや管理職ポジションへの昇進
- 訪問看護ステーションの管理者としての役割
- 大学や研修施設での教育者としての兼任



教育機関との兼任や非常勤講師などの役割を担うことで、副収入を得ることも可能です。
働き方の工夫
診療看護師の中には、複数の医療機関で働く「複業」スタイルを取り入れている人もいます。例えば、以下の例が挙げられます。
- 平日は総合病院、週末は訪問看護
- 常勤先に加えて非常勤でクリニック勤務
- 医療機関勤務と教育機関での講師の兼業
柔軟な働き方により、年収800万円以上を実現している診療看護師も存在します。ただし、過労には注意し、ワークライフバランスを維持することが重要です。



資格取得のための労力と時間、継続的な学習と技術向上を考慮すると、その専門性に見合った報酬かどうかは一概には言えませんね。
診療看護師の就職先と需要


診療看護師(NP)の需要は医師不足や高齢化社会の進展に伴い、徐々に高まってきています。ここでは、診療看護師の具体的な就職先や需要状況について詳しく解説します。
- 診療看護師の主な就職先
- 地域別の需要状況
- 診療看護師を求める医療機関の特徴
診療看護師の主な就職先
診療看護師の活躍の場は多岐にわたります。主な就職先として、以下の医療機関や施設があります。
就職先 | 特徴 | 求められる役割 |
---|---|---|
大学病院・総合病院 | 高度医療を提供する大規模医療機関 | 専門チームの一員として特定の診療科で活躍 |
地域医療支援病院 | 地域の医療体制を支える中核病院 | 医師の負担軽減、一次救急対応など |
クリニック・診療所 | 医師数が限られる小規模医療機関 | 医師の診療補助、特定行為の実施 |
訪問看護ステーション | 在宅医療を支える拠点 | 高度な判断を要する在宅患者のケア |
介護施設 | 高齢者向け施設、特別養護老人ホームなど | 医療依存度の高い入所者への対応 |
企業の健康管理部門 | 従業員の健康管理を行う部署 | 健康診断の実施・評価、保健指導 |
教育機関 | 看護大学・看護専門学校など | 次世代の看護師・診療看護師の育成 |
特に注目すべきは、医師が不足している地方の中小病院や過疎地域での需要が高まっている点です。診療看護師は医師の負担軽減に貢献できることから、医師不足に悩む医療機関からの求人が増加傾向にあります。
日本NP教育大学院協議会の調査によると、診療看護師の約80%以上が病院に勤務しており、そのほか診療所や教育機関、訪問看護ステーションで勤務しています。少数ですが、高齢者施設での勤務や個人事業主として活躍している人もいます。
地域別の需要状況
診療看護師の需要は地域によって大きく異なります。特に医師不足が深刻な地方や過疎地域では、診療看護師の役割が重要視されています。
地域区分 | 需要状況 | 特徴 |
---|---|---|
大都市圏 | 中~高 | 専門性を活かした高度医療機関での需要 |
地方都市 | 高 | 医師不足を補う役割としての需要 |
過疎地域 | 非常に高 | 医療過疎地域での医療提供体制維持のための需要 |
離島・へき地 | 最高 | 医師常駐が難しい地域での医療提供者としての需要 |
北海道、東北、四国、九州の一部地域では、特に診療看護師の需要が高い傾向にあります。
東京や大阪などの大都市圏では、大学病院や先進医療を行う病院において、専門性の高い診療科(救急、集中治療、外科系など)での需要が高まっています。一方、地方では総合診療の補助や在宅医療の担い手としての役割が求められています。



地域ごとの事情によって、診療看護師に求める役割が違います。
診療看護師を求める医療機関の特徴


診療看護師を積極的に採用している医療機関には、いくつかの共通する特徴があります。
1.医師の働き方改革に対応する医療機関
医師の時間外労働の規制に対応するため、医師の業務負担軽減を図る施策として、診療看護師を採用する医療機関が増加しています。特に夜間や休日の当直業務において、一部の対応を診療看護師が担うことで医師の負担軽減を実現しています。
2.先進的な医療提供体制を構築する施設
先進的な医療提供体制を目指す医療機関では、医師と看護師の中間的な役割を担う診療看護師を、重要な戦力と位置づけています。例えば、以下のような役割を担います。
- 急性期病院の救急外来や集中治療室
- 専門クリニック(糖尿病、腎臓、呼吸器など)
- 地域包括ケアシステムの中核を担う医療機関
- 在宅医療を積極的に展開する診療所や訪問看護ステーション
これらの施設では、診療看護師が医師の指示の下で特定行為を実施することで、医療の質を維持しながら効率的な医療提供を実現しています。
3.教育体制の整った医療機関
診療看護師を雇用する医療機関のなかには、継続的な教育や研修体制が整備されている施設が多い特徴があります。診療看護師は、常に最新の医学知識や技術を習得し続ける必要があるため、教育に熱心な医療機関が求人を出す傾向にあります。
4.給与・待遇面での配慮
診療看護師は高度な技術と知識を持つ専門職であることから、多くの医療機関では一般の看護師よりも優遇された給与体系を設けています。
待遇面での特徴 | 内容 |
---|---|
基本給の加算 | 一般看護師より月額2〜5万円程度高い設定 |
資格手当 | 診療看護師資格に対する月額手当(1〜3万円程度) |
役職付与 | 専門職としての役職(診療看護師長など)の設置 |
研修費補助 | 継続教育のための研修費用補助制度 |
勤務形態の配慮 | 専門業務に集中できる勤務シフトの配慮 |
医師不足が深刻な地方の医療機関では、診療看護師確保のために住宅手当や赴任手当などの特別待遇を設ける場合もあります。



就職を考える際は、自身の専門性を最大限に活かせる環境を選ぶことが重要です。
診療看護師資格取得者の体験談


診療看護師を目指す方にとって、実際に資格を取得した先輩たちの生の声は貴重な情報源です。ここでは、様々な背景を持つ診療看護師の方々の体験談をご紹介します。



実際に、クラウドソーシングサービスで診療看護師の方の体験談を募集しました。リアルな声を聞くことで、よりイメージしやすくなるでしょう。
資格取得のきっかけ
診療看護師を目指すきっかけは人それぞれですが、多くの方が共通して「より患者さんのために貢献したい」という思いを持っています。
- 東京都内の大学病院で勤務するAさん(40代・女性)
- 「救急外来で働いていた時、医師が不在の場面で自分にもっと医学的知識と技術があれば患者さんの苦痛をすぐに軽減できるのにと感じたことが転機でした」
- 地方の中核病院に勤務するBさん(30代・男性)
- 「医師不足が深刻な地域で働く中で、もっと医師の負担を減らせる看護師になりたいと思ったのが始まりでした」
診療看護師を目指すきっかけとして多く挙げられる理由は、以下のとおりです。
きっかけ | 具体的な声 |
---|---|
医療過疎地域での経験 | 「医師が少ない地域で、もっと迅速に対応できる看護師になりたいと思った」 |
キャリアアップへの意欲 | 「10年以上看護師として働く中で、次のステップに進みたいと考えた」 |
在宅医療の現場での気づき | 「訪問看護で、医師不在時にもっと対応できる範囲を広げたいと思った」 |
海外のNP制度への憧れ | 「海外研修でNPの活躍を目の当たりにし、日本でも同様の役割を担いたいと思った」 |
資格取得の苦労と乗り越え方
診療看護師の資格取得過程は決して平坦ではありません。多くの取得者が、仕事と学業の両立、高度な医学知識の習得、臨床実習の厳しさなどを挙げています。
- 大阪の総合病院で活躍するCさん(35歳・女性)
- 「仕事を続けながらの学習は本当に大変でした。平日は病院勤務、週末は授業や実習という生活が2年間続き、家族の協力なしでは乗り越えられませんでした」
- 中規模病院で働くDさん(55歳・男性)
- 「50代で資格取得を決意した時は周囲から『今さら』と言われましたが、同じ志を持つ仲間との出会いが支えになりました。年齢は関係なく、向上心を持ち続けることが大切だと実感しています」
これまでの看護師としての経験を活かしつつも、新たな視点での医療判断を学ぶ必要があったと多くの診療看護師が語っています。
資格取得の苦労と、それを乗り越えるために役立った方法をまとめると、以下のようになります。
苦労した点 | 効果的だった乗り越え方 |
---|---|
仕事と学業の両立 | 勤務先との事前相談・調整、時短勤務制度の活用、学習スケジュールの徹底管理 |
高度な医学知識の習得 | 同期との勉強会の開催、オンライン学習ツールの活用、医師への積極的な質問 |
臨床実習での緊張感 | 指導医とのこまめなコミュニケーション、失敗を恐れない姿勢、実習記録の丁寧な振り返り |
経済的負担 | 奨学金制度の活用、病院の助成制度、教育ローンの利用 |
診療看護師になって感じる変化
資格取得後、多くの診療看護師が自身の業務や周囲との関係性、そして医療に対する視点に大きな変化を感じています。
- 神奈川県の救急医療センターで働くEさん(38歳・女性)
- 「以前は医師の指示を待つことが多かったですが、今は自ら判断して提案できるようになりました。患者さんの待機時間が減り、『すぐに対応してもらえて助かる』という声をいただくことがやりがいです」
- 福岡県の大学病院で勤務するFさん(42歳・女性)
- 「看護師と医師の橋渡し役として、両方の視点を理解できることが大きな強みになっています。看護チームからの相談も増え、教育的な役割も担うようになりました」
- 地域医療支援病院で働くGさん(36歳・男性)
- 「資格取得後、地域の訪問看護との連携役を任されるようになりました。病院と在宅をつなぐ役割を担えることで、地域全体の医療の質向上に貢献できていると実感しています」
診療看護師になることで、より広い視野と深い医学的知識をもとに患者を全人的に見ることができるようになったという声が多く聞かれます。医師からの信頼も厚くなり、チーム医療の中での発言力も増したと感じる方が多いようです。
診療看護師になって感じる主な変化としては、以下の点が挙げられます。
変化の側面 | 具体的な声 |
---|---|
臨床判断力の向上 | 「患者の微妙な変化に気づき、先を見据えた対応ができるようになった」 |
医療チームでの立ち位置 | 「医師との対等なディスカッションができるようになり、看護視点を治療に反映できる」 |
患者からの反応 | 「すぐに対応してもらえると患者さんからの感謝の声が増えた」 |
キャリアの広がり | 「講師として招かれることが増え、後進の育成にも関われるようになった」 |
精神的な成長 | 「より大きな責任を持つことで、専門職としての自覚と誇りが強まった」 |
診療看護師の将来性と課題


診療看護師の将来性について、以下の手順で解説します。
- 医師不足による役割の拡大
- 法制度上の課題と今後の展望
- 海外のNP制度との比較
医師不足による役割の拡大
日本の医療現場では深刻な医師不足が続いており、特に地方やへき地では状況が深刻です。このような背景から、診療看護師(NP)の役割拡大が強く期待されています。
診療看護師は、医師の業務負担軽減という側面だけでなく、質の高い医療を地域全体に提供する存在として注目されています。高齢化が進む地方では、慢性疾患管理や在宅医療のニーズが高まっており、これらの分野で診療看護師の活躍の場が広がっています。
法制度上の課題と今後の展望
診療看護師の将来性は明るい一方で、現行の法制度には多くの課題も存在します。現在の日本では、診療看護師であっても基本的に「医師の指示の下」で特定行為を実施する必要があり、米国などのNPと比較すると裁量権は限定的です。
以下の点が主な法制度上の課題として指摘されています。
課題 | 現状 | 今後の展望 |
---|---|---|
法的位置づけ | 特定行為研修制度はあるが、「診療看護師」の明確な法的定義がない | 保健師助産師看護師法の改正による位置づけ明確化の可能性 |
処方権 | 現状では認められていない | 限定的な処方権付与に関する議論が進行中 |
独立した診療権 | 医師の指示が必要 | 特定の領域における自律的判断の範囲拡大 |
診療報酬上の評価 | 限定的な加算のみ | 特定行為実施に対する直接的な報酬評価の可能性 |
厚生労働省のチーム医療推進会議では、タスク・シフト/シェアの推進が議論されており、今後さらに診療看護師の業務範囲拡大が進む可能性があります。



特に医師の働き方改革が2024年から本格化していることで、診療看護師への期待はさらに高まるでしょう。
海外のNP制度との比較


診療看護師の将来を考える上で、海外、特に先進的なNP制度を持つ国々との比較は非常に参考になります。以下は、主要国のNP制度と日本の比較です。
国 | 資格名称 | 教育要件 | 診療権限 | 処方権 |
---|---|---|---|---|
日本 | 診療看護師(法的定義なし) | 特定行為研修(6ヶ月〜2年) | 医師の指示の下で特定行為を実施 | なし |
アメリカ | Nurse Practitioner (NP) | 修士号以上(DNP推奨) | 州によって異なるが、多くの州で独立診療権あり | 全州で認められている(州によって範囲が異なる) |
イギリス | Advanced Nurse Practitioner (ANP) | 修士レベルの教育 | 一定の診断・治療が可能 | 処方資格取得者は処方可能 |
カナダ | Nurse Practitioner (NP) | 修士号 | 州によって独立診療権あり | 限定的に認められている |
特にアメリカのNP制度は世界的に見ても先進的です。米国ナースプラクティショナー協会によれば、28の州とワシントンD.C.では完全な独立診療権が認められています。



これらの州ではNPが医師の監督がなくても診断、治療、処方を行うことができます。
オーストラリアでは、NP制度が2000年に導入され、国民健康保険の給付対象となる診療行為や処方が認められています。このような先進事例は、日本における診療看護師の将来的な発展モデルとして、参考になるでしょう。
まとめ


診療看護師(NP)は、一般の看護師より高度な医療行為を担える専門職として、日本の医療現場で注目されています。診療看護師になるには看護師資格と実務経験を経て、養成課程で学ぶ必要があります。
特定行為38区分の実施も可能となり、医師の働き方改革や地域医療の充実に貢献できる点が大きな魅力です。給与面では一般看護師より高く設定されることが多く、キャリアアップの選択肢として有効です。今後は地域包括ケアシステムの中核を担う存在として期待されています。
医師不足が深刻化する中、診療看護師の需要は高まり続けるでしょう。ただし、医行為の範囲など法制度上の課題もあります。今後の制度整備が進むことで、さらに活躍の場が広がることが期待されています。
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