正看護師と准看護師の違い5選!給料や役割、就業先の特徴を徹底比較

「准看護師と正看護師の違いは?」

「准看護師が正看護師を取得するメリットとデメリットは?」

准看護師として働くなかで、将来的に正看護師へのステップアップをするべきか悩む人も多いです。

准看護師と正看護師では業務内容に大きな違いはありませんが、本質的な部分で明確な違いがあります。

本記事では、准看護師と正看護師の違いから正看護師へのキャリアアップ方法まで詳しく解説します。記事を読むことで准看護師のメリットデメリットを理解し、自分に合ったキャリアアップの方法が見つかるでしょう。

目次

准看護師制度の背景と需要

ryanta73

准看護師の誕生は、戦後にさかのぼります。

戦後、結核の蔓延により病院が急増しましたが、看護師の供給が追いつかない状況でした。そこで看護師を補助する目的で昭和26年に発足したのが准看護師制度です。

当時は女性の進学率も低かったため「中学卒業後2年間の准看護師養成学校卒業」に要件を引き下げ看護師の確保に貢献しました。

医療の高度化、疾病構造の変化から准看護師では教育が不十分という考えがあり、正看護師への一本化が提言されています。しかし、看護師不足はいまだに解消されておらず、実現しないまま議論だけが続けられているのが現状です。

正看護師と准看護師の業務内容に大きな違いはない

正看護師と准看護師では業務内容に変わりはありません。どちらも患者さんの日常ケアから採血、バイタルサイン測定などの診療の補助が主な業務です。

明確な違いは正看護師が看護ケアを自らの判断で行えるのに対し、准看護師は医師や正看護師の指示が必要な点です。准看護師は看護計画の立案ができないため、正看護師が立案した看護計画に沿ってケアを行います。

正看護師と准看護師の5つの違い

正看護師と准看護師の主な違いは以下の5つです。

  • 平均年齢・男女比の違い
  • 役割の違い
  • 資格の違い
  • 給料の違い
  • 職場の違い

それぞれ詳しく解説します。

1.平均年齢・男女比の違い

正看護師と准看護師の平均年齢と男女比の違いは以下のとおりです。

正看護師准看護師参考
平均年齢
41.9歳51.2歳令和5年賃金構造基本統合調査看護師年収
男女比
(男性:女性)
2022年(8:92)
2010年(6:94)
2022年(7:93)
2010年(6:94)
令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況

正看護師の平均年齢が41.9歳であるのに対して准看護師は51.2歳と、10歳の差があります。

令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況によると、准看護師を取得する人は年々減少しており、同時に平均年齢が上昇傾向です。

男女比は正看護師も准看護師も圧倒的に女性の方が多いですが、両者とも男性看護師は年々増加しています。

2.役割の違い

正看護師と准看護師では以下のような役割の違いがあります。

資格定義
正看護師 (保健婦助産婦看護婦法第5条)厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者
准看護師 (保健婦助産婦看護婦法第6条)医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、傷病者若しくはじょく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者
ryanta73

あくまで准看護師は医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、療養上の世話や診療の補助を行います。

准看護師が実施できない行為は以下のとおりです。

  • 自己判断による看護ケアや診療の補助
  • 他の看護師への指示出し
  • 看護計画の立案
  • 管理職への昇進
  • オンコール対応

准看護師は看護師の補助的役割であることは念頭に置いておきましょう。

3.資格の違い

正看護師と准看護師の資格の違いは以下のとおりです。

資格名許可資格の種類
正看護師厚生労働大臣国家資格
准看護師都道府県知事公的資格

正看護師は国家資格であるのに対して、准看護師は都道府県知事によって交付されます。教育内容にも違いがあり、免許取得に必要な教育機関も異なります。

4.給料の違い

ryanta73

正看護師と准看護師の平均年収を比較すると100万円以上の差があります。

資格名月給賞与年収
正看護師35.2万円85.7万円508.2万円
准看護師28.7万円63万円407.1万円
参考:令和5年賃金構造基本統合調査看護師年収

正看護師が准看護師よりも月給では7万円以上、賞与は22万円ほど高額です。

正看護師に比べ、准看護師は基本給や資格手当が低く設定されています。リーダーや管理職などへキャリアアップができないことも年収に差が出る理由です。

5.職場の違い

看護師が活躍できる場所であれば、正看護師はどこでも働けるでしょう。一方で、准看護師は働ける職場が限られてしまうことにも注意が必要です。

病院の診療報酬のなかには、看護師の配置基準に准看護師が含まれないものがあります。特に高度な医療を提供している急性期病院や大学病院では、応募条件が正看護師のみであることがほとんどです。

ryanta73

クリニックや診療所では、給料水準が低い准看護師が重宝される傾向にあります。

准看護師におすすめの職場4選

准看護師におすすめの職場は以下の4つです。

  • 介護施設
  • 保育園
  • 訪問看護
  • クリニック

それぞれ詳しく解説します。

介護施設

介護施設は准看護師が多く活躍する職場のひとつです。

介護施設での看護業務は以下のとおりです。

  • バイタルサイン測定
  • 内服薬の管理や外用薬の塗布
  • 体調不良や転倒時の受診の判断
  • 急変時の対応
ryanta73

この他にも入浴介助や排泄の援助、食事介助も介護職員と同様におこなう施設もあります。

日勤と夜勤の両方をこなす施設もありますが、原則として准看護師はオンコール対応が認められていない点に注意しましょう。

保育園

保育園でも准看護師は勤務可能です。1施設あたり1人までは、准看護師も保育士として認められるようになりました。

保育園の業務内容は以下のとおりです。

  • 園児の健康管理
  • 安全対策
  • 怪我や体調不良時の対応
  • 園児の保育

准看護師が保育園で働く場合は、保育士と同様の業務を求められます。

訪問看護

訪問看護では、准看護師が訪問すると診療報酬が通常の90%になるものの、人手不足を補うために准看護師の求人も多く存在します。

ただし、准看護師には以下の行為ができないので注意しましょう。

  • 訪問看護計画書の作成
  • オンコール対応

その他においては、正看護師が作成した訪問看護計画書に基づき業務が可能です。

在宅医療の需要の高まりに伴い、訪問看護ステーションも増加傾向にあるため、准看護師でも求人数が多い職場です。

クリニック

准看護師の中でも、病院の次に多い勤務先がクリニックです。クリニックでは基本的に医師が指示を直接出すため、准看護師でも働きやすい環境です。

ryanta73

むしろクリニックでは、給料水準が低い准看護師が重宝される傾向にあります。

クリニックでの業務は以下のとおりです。

  • バイタルサイン測定
  • 採血
  • 検査の説明や準備、介助
  • 診療器具の洗浄
  • 薬品消耗品の管理、発注
  • 電話対応や受付

クリニックによっては、看護師が受付や電話対応を行うこともあります。

准看護師のメリット・デメリット3選

准看護師のメリットとデメリットをそれぞれ3つずつ紹介します。

准看護師の3つのメリット

准看護師のメリットは以下の3つです。

  • 短期間で取得できる
  • 難易度が低い
  • 働きながら取得できる

メリット1.短期間で取得できる

准看護師養成所の期間は2年間です。3年以上の期間を要する正看護師と比較しても、短期間で取得できます。

准看護師になるルートには2パターンがあります。

  • 中学卒業→高校の衛生看護科(3年)
  • 中学又は高校卒業→准看護師養成所(2年)

早く資格を取って働きたいという人には、准看護師は短期間で取得できる点でおすすめです。

ryanta73

40代、50代で看護師を目指す人もいます。年齢的に1年でも早く働きたい人は准看護師がベストでしょう。

メリット2.難易度が低い

准看護師は正看護師に比べ、専門学校への入学試験や資格試験の難易度が低いです。正看護師の専門学校・看護大学の入試は、高校レベルの知識が必要なのでやや難易度が上がります。

資格名資格試験の合格率
正看護師87.8%
准看護師98.2%

准看護師試験と正看護師国家試験の合格率には10%以上の差があることからも、准看護師の方が資格取得の難易度が低いと言えるでしょう。

メリット3.働きながら取得できる

准看護師養成所は全日制のほかにも半日・夜間制があり、働きながら取得できます。病院で看護補助者として勤務しながら、半日または夜間制の准看護師養成所に通うことも可能です。

ryanta73

私が准看護師を経由して正看護師を目指した理由も、このメリットがあるからです。資格取得前から「病院内で働く」ことの感覚を身に付けられるのもプラスになります。

働きながら資格取得できるので、学費や生活費の心配がないのもメリットと言えるでしょう。

准看護師の3つのデメリット

准看護師のデメリットは以下の3つです。

  • 給料が低い
  • キャリアアップが難しい
  • 働けない場所もある

デメリット1.給料が低い

准看護師は正看護師に比べて給料が低いデメリットがあります。平均年収にすると100万円以上の差があるのが実情です。

准看護師はリーダー業務や後輩指導、昇進が認められないケースが多く、給料アップが難しいことも年収が低い原因と言えるでしょう。

デメリット2.キャリアアップが難しい

資格の特性上、准看護師はほかの看護師に指示を出すことができず、リーダー業務や管理職への昇進はできません。認定看護師や専門看護師などの資格取得もできないため、キャリアアップが正看護師と比べて難しいです。

キャリアアップを狙うならまずは正看護師の取得を目指しましょう。

デメリット3.働けない職場がある

准看護師は急性期病院や大学病院、総合病院などの求人はほとんどありません。診療報酬や配置基準は正看護師を基準に設定されています。准看護師よりも正看護師が採用されやすいのが実情です。

ryanta73

国公立の病院は基本的に准看護師の採用はしていません。

働きたい病院があっても正看護師の方が採用される可能性も高くなるので、正看護師の取得を目指すのが良いでしょう。

准看護師から正看護師になるメリット・デメリット3選

准看護師から正看護師へステップアップを目指す人もいます。年齢や状況によってメリットとデメリットが存在するため、理解しておくべきでしょう。

3つのメリット

准看護師が正看護師になるメリットは以下の3つです。

  • 仕事の幅が広がる
  • 働きながら取得できる
  • キャリアアップや給料アップにつながる

メリット1.仕事の幅が広がる

准看護師は働く場所や業務内容に制限がありますが、正看護師になることで仕事の幅が広がります。リーダー業務や訪問看護でのオンコール対応など、准看護師では行えない業務も正看護師になると実施可能です。

ryanta73

病院によっては、医療処置やICUでの業務は准看護師には任せないところもあります。

正看護師になることで急性期病院や大学病院などへの転職もできます。より高度な医療現場で働きたいと思うのであれば、正看護師の取得は必須です。

メリット2.働きながら取得できる

准看護師から正看護師になるための看護師養成所には以下の3つがあります。

  • 全日制(2年課程コース)
  • 定時制(3年課程コース)
  • 通信制コース

定時制や通信制では、働きながら正看護師の看護師国家試験の受験資格を得ることができます。

ryanta73

私は夜間の定時制の養成所で正看護師を取得しました。朝から夕方まで働き、3時間ほど学校へ行って勉強する生活を3年間続けました。正社員として働きながら取得できたので、生活費に困らなかったです。

通信制の場合は、准看護師として7年間の実務経験が必要です。

メリット3.キャリアアップや給料アップにつながる

准看護師が正看護師になれば基本的に給料が上がります。ほとんどの施設では、正看護師の方が基本給や職務給が高く設定されているためです。

准看護師は昇進して管理職になることや、認定看護師などの資格取得ができません。正看護師になること自体がキャリアアップにつながりますが、正看護師になればさらに上を目指すことも可能です。

大学病院や急性期病院でも勤務可能になるので、確実に給料アップが狙えます。

3つのデメリット

准看護師が正看護師を目指すデメリットは以下の3つです。

  • お金と労力がかかる
  • 給料が下がるケースもある
  • 年齢によっては費用対効果が得られない

デメリット1.お金と労力がかかる

准看護師から正看護師になるためには、それなりの費用と労力が必要です。費用は養成所によって異なりますが、150〜200万円前後は必要です。

看護協会や厚生労働省などの奨学金制度もあるので、費用が気になる人は確認してみるのも良いでしょう。

ryanta73

奨学金はほかにも、日本政策金融公庫や都道府県で実施しているものもあります。まずは住んでいる自治体のホームページを確認してみましょう。

正看護師養成所では実習や座学など、真剣に取り組まないと単位取得は難しいです。看護師国家試験は合格率が87.8%なので、労力がかかることは覚悟しておきましょう。

デメリット2.給料が下がるケースもある

長年准看護師として勤務していた人が正看護師になる場合に、給料が下がるケースがあります。

准看護師としての経験年数が20年あったとしても、正看護師としては新卒とみなされることがあります。准看護師として積み上げた昇給も、正看護師を取得することでリセットされることがほとんどです。正看護師になって転職する場合は、准看護師の経験年数は考慮されないので、注意しましょう。

デメリット3.年齢によっては費用対効果が得られない

准看護師から正看護師を目指す年齢によっては、費用や労力の割に給料が見合わないことがあります。

准看護師が正看護師になるために必要な学費が100万円前後かかる上に、正看護師になってすぐは年収が逆に下がるケースもあります。

ryanta73

私の周りにも、「今から正看護師を取って定年まで働いたとしても、学費分の回収ができない」という理由で諦める人もいました。

年齢によっては、そのまま准看護師として働く方が良いケースもあるので、総合的に判断しましょう。

准看護師が正看護師を目指す方法2選

准看護師が正看護師を目指す際は、以下の2パターンの方法があります。

  • 専門学校
  • 通信制の養成所

専門学校

准看護師の養成学校を卒業してすぐに正看護師を目指す場合、専門学校に行くのが一般的です。准看護師が正看護師になるための専門学校には以下のコースがあります。

  • 全日制(2年課程コース)
  • 定時制(3年課程コース)

いずれの方法も、最終学歴が中学卒業の場合は准看護師としての経験年数が3年以上必要です。

専門学校によって異なりますが、学費は150〜200万円前後が目安です。各学校のホームページを確認しましょう。

全日制は2年間で正看護師免許取が取れますが、平日の朝〜夕方まで学校へ行かなければなりません。定時制は3年の期間が必要ですが、「18時〜21時」のように短時間の通学なので、働きながらでも取りやすいのがメリットです。

ryanta73

私はすでに妻と子供がいたので、働きながら夜間定時制の専門学校へ通っていました。宿題や課題があると、眠りにつくのが夜中の12時を過ぎることはしょっちゅうでした。

通信制の養成所

准看護師としての経験が7年以上ある人は、通信制の養成所でも正看護師の免許取得が可能です。通信制の場合は主に通信教材を用います。2年間で50日以上は登校し、病院見学実習や事例演習、対面授業などを受講する必要があります。

費用は養成所によって異なりますが、100万円前後が一般的です。通信制は自己学習が中心になる反面、資格取得までの労力が最も少ない方法です。

ryanta73

自己学習というデメリットは皆さんが思っているよりも大きいです。厚生労働省の調査によると、既卒者の国家試験合格率は50%を下回ることもあります。これは自己学習の厳しさを表していますね。

まとめ

准看護師の特徴は以下のとおりです。

  • 准看護師は自己判断での看護ケアや診療の補助、看護計画の立案、他の看護師への指示、オンコール対応、管理職への昇進ができない
  • 准看護師は医師や看護師の指示を受ければ、正看護師と同じ業務が可能
  • 准看護師は働きながら短期間で免許を取得できる
  • 准看護師取得後に正看護師になる場合は、最短2年で取得可能
  • 准看護師が正看護師を目指す場合は全日制や定時制、通信制の学校がある

准看護師は医師や看護師の指示のもとで日常ケアや診療の補助を行う役割を担っています。准看護師がキャリアアップをするためには、正看護師の取得をするのがおすすめです。

准看護師から正看護師を目指す方はぜひ本記事を参考にしていただき、キャリアアップに役立ててください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

☀︎看護師✕WEBライターとして活動中
☀︎2児のパパでもある男性看護師
☀︎本業は介護施設で主任看護師として活躍中
☀︎子育てをしながらスキマ時間で毎月5万円稼ぐ
☀︎ライターとしての最高月収は20万円

【経験した副業】
病棟・施設の夜勤専従バイト、訪問看護、マラソンイベントの救護バイト

これまで数回の転職を経て年収150万円アップも達成しました。
本ブログでは「転職と副業で月5万円以上の収入アップ」をモットーに、看護師資格を活かした副業や転職について有益な情報提供をしています。

コメント

コメントする

目次